ジョナサン・アンダーソンが発案した「ロエベ インターナショナル クラフトプライズ」。現代のクラフトの担い手をサポートする意欲的な取り組みだ。現在、本年度の大賞を含む、ファイナリスト29名の作品が一堂に会したエキシビションが開かれている

BY MASANOBU MATSUMOTO

 ジョナサン・アンダーソンは、「クラフト」と「ファッション」の領域の架け橋的存在だ。ロエベのクリエイティブ ディレクターに就任して以降、彼は、世界中の工房を回り、またクラフトの歴史を読み解きながら、伝統的な “手仕事の技”にフォーカスしたコレクションを発表してきた。この春に開かれたデザインの国際見本市「ミラノ・サローネ」でも、アンダーソンは日本の竹細工作家とコラボレートした作品を披露。竹の編み細工をロエベのアイコンであるレザーでアレンジするというテーマで、そのアイデアは職人たちやその技に、新たな光を当てる契機となった。

 彼は、クラフトを心底愛するコレクターでもある。過去、アンダーソンは「T Magazine」のために自身のオブジェ・コレクションを披露してくれたことがあった。そこで並んだのは、20世紀を代表する陶芸家ルーシー・リーの器やカップ&ソーサー、アノニマスな花瓶、モー・ジャップのミニチュア彫刻、そしてイッセイミヤケの提灯型のドレスなど…… こうしたジャンルや時代にとらわれない蒐集品は、どこかアンダーソンのクラフトに対する進歩的な哲学を体現しているように思える。

 アンダーソンは言う。「器を作ることも、洋服を作ることも、料理をすることだって、(手でモノを創造する)クラフト的な行為だとも言える。クラフトは、自己表現のいちばん基本的なもの」。また、「僕の理想は、クラフト、ファッション、アートの境界線をなくし、それぞれが相互に影響し合うような関係をつくること。そのためには、まずクラフトについて対話するプラットフォームが必要だと思った。僕がアワードを立ち上げたのはそういった理由でもあるんだ」とも。

画像: 東京・赤坂の草月会館での展示風景。イサム・ノグチによる石庭『天国』に、29の作品が並べられている

東京・赤坂の草月会館での展示風景。イサム・ノグチによる石庭『天国』に、29の作品が並べられている

 彼が言う“アワード”とは、アンダーソンが発起人となり2016年より開催されている「ロエベ インターナショナル クラフトプライズ」のことだ。新人発掘ではない。すでにプロフェッショナルの技をもつアルチザン(職人)を対象にしたコンペティションで、彼らを広く評価し、サポートすることが目的だ。

 三度目を迎えた今年は、陶磁器から宝飾、テキスタイル、ガラス細工など、世界100カ国以上から2,500作品を超える応募があったという。そのなかから、日本の漆作家である石塚源太が大賞を受賞。特別賞には英国のハリー・モーガンと、おなじく英国を拠点にする高樋一人(たかどい かずひと)の二作品が輝いた。彼らを含む29名のファイナリストの作品は、現在、東京・赤坂の草月会館で開かれているエキシビションで観ることができる。

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