俳優・森田望智が目指す
未知なる景色

　役柄によって姿かたちをがらりと変え、カメレオン俳優とも呼ばれる森田望智。「自分とかけ離れた役をいただくことが多いので、毎回頭を抱えています」と楽しそうに笑う。昨年放送のNHK連続テレビ小説『虎に翼』で演じたのは主人公の親友で、献身的に家族を支える主婦の花江。柔らかい中にもしなやかな強さを宿した女性で、森田は体いっぱいでそれを表現した。
　一方、Netflixドラマ『全裸監督』で演じたのは伝説のAV女優・黒木香。「役者としての覚悟や成長につながった」と語るこの作品では、腋毛をトレードマークに性の解放を饒舌に訴える奔放な女性を驚くべき完成度とドライブ感で演じきった。
「最初は黒木さんのイメージがつかめず、監督にも『全然違う』と言われ続けていたんです。でも、私にできることは黒木香という人物について深く知ることだけ。それでスタッフの方に話をたくさん聞いたり、資料や本を何冊も読んだりしました」
　しゃべるシーンではセリフが多く、アドリブもあったが、「事前にいろいろ読ませていただいていたので、不思議と言葉が勝手に湧いてきたんです」というからそれだけ＂憑依＂していたのだろう。

　ただその素顔は冷静だ。「私は不器用で周囲の人に合わせてもらってばかり。現場では目の前のことしか見えなくなる」と反省しきり。だがその作為的でない集中力が観る者を物語へと引き込んでいく。現在出演中のNHKドラマ『いつか、無重力の宙（そら）で』では、そんな森田の新しい顔に出会うことができる。「私が演じる日比野ひかりは明るくて太陽みたいな女性ですが、実は不治の病を抱えていて、だからこそ、人の痛みがわかるし、困難を乗り越える強さももっている。大人になると自分で自分の可能性を狭めてしまいがちですけれど、それをひかりが突破して、夢を追うことの幸せを思い出させてくれるんです」

　高校時代に天文部だったひかりに近づくため、今回もまた、プラネタリウムやJAXAに行って人物像を深めた。
「役作りのためでもあるけれど、自分の知らない世界を知れることが楽しくて。役に新しい景色を見せてもらっている感じですね。目標を立てて着実に進むというより、私は自分の知らない境地にたどり着きたい。そのためにも今この瞬間を生きることに集中したいと強く思っています」

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