韓流エンタメの第一人者、田代親世さんが、韓国ドラマの魅力を様々な独自の切り口でご紹介。今回は、大人にトキメキを与えてくれる、オフィスラブドラマ3本をセレクト。

TEXT BY CHIKAYO TASHIRO

穏やかな“大人の男性”ぶりに癒される!
『残念ながら明日も出勤です!』

 家電メーカーで仕事に情熱を注ぐ男女の恋を描いた爽やかな物語です。このドラマの魅力は、主人公たちがちゃんと「仕事をする人」として描かれていること。単に同じ会社にいる男女が恋に落ちるのではなく、仕事への姿勢や能力、そこで垣間見える人間性を知ることで、お互いへの思いが育っていきます。「ホームAI」という近未来の暮らしにつながるテーマも興味深く、お仕事ドラマとしても見応え十分。一方で、大企業ならではの出世競争や嫉妬、足の引っ張り合い、パワハラ、さらには「そこまで問題になるの?」と思うほど厳しい社内恋愛事情も描かれ、会社員として働くことの難しさも浮かび上がります。

画像: 主演のソ・イングク ©Prime Video

主演のソ・イングク ©Prime Video

 そして、やっぱりソ・イングクがいいのです! 彼が演じるのは、仕事一筋で人間味に欠けることから「3NOマン」(笑わない、人を寄せ付けない、簡単には謝らない)と呼ばれ、周囲から恐れられているエリート社員。家庭の情にあまり恵まれず、どこか孤独を漂わせていた彼が、ヒロインと出会って少しずつ笑うようになっていく。その変化がとても自然です。何より素敵なのが、恋をしても公私混同しないこと。ヒロインの仕事への情熱と能力をきちんと認め、一人の仕事人として尊重しています。強引に守るのではなく、相手の意思を大切にする。穏やかで思いやりのある“大人の男性”ぶりに癒されます。

画像: ヒロイン役のパク・ジヒョン © Prime Video

ヒロイン役のパク・ジヒョン © Prime Video

 ヒロインもまた、かわいらしいだけではありません。A案がダメならB案、それでもダメなら次へと食らいつき、「不可能を可能にする女」と呼ばれるほどタフ。2人が仕事を通じて互いを認め合っていくからこそ、恋にも説得力があります。元恋人たちが登場しても必要以上にドロドロせず、過剰な執着やすれ違いを長々と引っ張らないのも好印象。そして、いざ付き合い始めれば、2人はかなり甘々(笑)。仕事中のきりっとした姿とのギャップも含め、思わずニヤニヤしてしまいます。仕事はしっかり、恋愛は爽やか、登場人物たちの成長もある。見終わったあとに嫌なものが残らない、とても“健全”なラブストーリー。気持ちよくときめきたい時にぴったりの作品です。

■Prime Videoにて独占配信中

年下の後輩に愛される幸せを疑似体験できる⁉
『先輩、その口紅塗らないで』

 化粧品メーカーを舞台に、職場の先輩女性と年下の後輩男性が繰り広げる恋愛ドラマです。とにかくロウンの魅力が詰まった作品でした。ロウン演じる後輩君は、屈託のない青年で、人の懐にスルッと入っていくのに嫌味がなく、愛嬌があり、リアクションもいちいちチャーミング。人好きがして、若々しくエネルギッシュ。そんな彼が、二股をかけていた上司からヒロインを守るナイトになっていくのが、もうたまらないんです。そして何より、好きな人への気持ちをまっすぐに表現するところがいい。「僕のところに来てくれたら、幸せにできるのに」といったことをさらりと言えてしまう。ヒロインの選択を尊重しようと我慢しながらも、彼女が離れていかないとわかった瞬間には子犬のように喜ぶ。こんなふうに全身で愛されたら、こちらもこの人を喜ばせてあげたくなるだろうな、と思わせる男性です。

画像: 主演のロウン(左)とウォン・ジナ(右) © JTBC Studios Co., Ltd. all rights reserved.

主演のロウン(左)とウォン・ジナ(右) © JTBC Studios Co., Ltd. all rights reserved.

 社長と契約社員のような大きな格差もなく、「実際の職場でもこんな恋愛があるかもしれない」と思える距離感なのも、この作品の魅力。ファンタジーではあるけれど、手を伸ばせば届きそうなリアルさがあるからこそ、余計にときめきます。さらに、ロウンの長身を生かした演出も満載。ヒロインの後ろからすっぽり包み込むようにドアを押さえたり、高いところの物を取ってあげたり、抱きしめればヒロインの頭がちょうど胸元に収まったり。ちょっとした仕草の一つ一つが絵になります。

画像: ロウン © JTBC Studios Co., Ltd. all rights reserved.

ロウン © JTBC Studios Co., Ltd. all rights reserved.

 従来の韓国ドラマの男性主人公にありがちな重い過去を背負っているわけでも、ツンデレでもない。それでも十分すぎるほど魅力的。明るく素直で、しっかり愛されて育った“年下男子”という新鮮さがありました。何か大事件が起きる作品ではありませんが、年下の後輩に愛される幸せを疑似体験しながら、心をときめかせるにはぴったり。久しぶりに「こんな人に愛されたら幸せだろうな」と思わせてくれる、爽やかな恋愛ドラマです。

■U-NEXTにて配信中

上司、弟分、恋する男…3つの表情に魅了される
『ロマンスは別冊付録』

 出版社で働く人々の奮闘を軸にした、大人のハートウォーミングストーリーです。離婚後、出版社の雑用係として再出発するヒロインが、もう一度自分の力で仕事と居場所を取り戻していこうと奮闘します。そんな彼女を見守るのが、5歳年下の幼なじみの男性。人気作家で出版社の編集長、仕事もできる超ハイスペック男子ですが、ヒロインにとっては昔からかわいがってきた弟分。ところが、この年下男子のほうは、実は長い間ずっと彼女を思い続けていた──というところから恋が動き始めます。

画像: 主演のイ・ジョンソク Netflixシリーズ「ロマンスは別冊付録」独占配信中

主演のイ・ジョンソク Netflixシリーズ「ロマンスは別冊付録」独占配信中

 このイ・ジョンソク演じる「大人の年下男子」が実に魅力的。社会的にも経済的にも自立し、余裕がありながら、ヒロインの前では弟分の顔も見せる。職場では上司としてあえて助け舟を出さず彼女の成長を見守り、同居する家ではそっと支え、恋愛になると一人の男性の顔を見せる。その3つの表情を行き来するイ・ジョンソクがとても上手いです。ヒロインがほかの男性と親しくなるとかわいく嫉妬する姿も、たまらない萌えポイントです。恋愛感情の機微の描き方も自然。主人公ふたりを取り巻く編集者やデザイナーも含め、極端な悪人がほとんど登場せず、ドラマ全体に優しい空気が流れています。

画像: 主演のイ・ジョンソク(左)とイ・ナヨン(右) Netflixシリーズ「ロマンスは別冊付録」独占配信中

主演のイ・ジョンソク(左)とイ・ナヨン(右) Netflixシリーズ「ロマンスは別冊付録」独占配信中

 そして、恋愛と同じくらい心に残るのが、「本を作る仕事」の描写です。企画し、編集し、デザインし、校正して、1冊の本を大切に世に送り出す。そこには本を愛する人たちのプライドや矜持があり、出版という仕事への敬意が感じられました。本を題材にしているだけに、セリフも洒落ています。「何度も読み慣れた本なのに、最近は知らない本のように感じる」と恋心を本になぞらえたり、「I LOVE YOU」を夏目漱石の逸話になぞらえて「月がきれいですね」と表現したり。文学的な言葉が作品の柔らかな世界観を作っています。最後に語られる「本が存在する意味」も印象的でした。本はなくても生きていける。でも、誰かの心を慰め、人生を少し豊かにすることができる。それはきっとドラマも同じ。恋愛、仕事、本への愛、そして人生の再出発を優しく描いた、見終えたあとに心が少し豊かになる作品です。

■Netflixシリーズ「ロマンスは別冊付録」独占配信中

田代親世 韓流ナビゲーター 
韓流解説、韓流イベント司会の第一人者。公式サイト「田代親世の韓国エンタメナビゲート」やYoutube「ちかちゃんねる☆韓流本舗」「韓ドラ・マスター親世と尚子の感想語り」などで韓流情報を発信しているほか、会員制のコミュニティ【韓流ライフナビ】を主宰。ツアーやイベントを企画・開催している。


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