BY NANCY HASS PHOTOGRAPH BY ESTHER CHOI, SET DESIGN BY LEILIN LOPEZ-TOLEDO, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI
ヨーロッパにおけるハイジュエリーの物語が始まったのは、100年以上前のこと。パリのヴァンドーム広場に家族経営のアトリエがオープンし始めたのが発端だとされている。だが、ロンドンを拠点とするグラフの創業者で現会長のローレンス・グラフは、それとは異なる物語を享受してきた。
1950年代半ば、負けん気の強いティーンエイジャーだった彼は、ロンドンの下町イーストエンドでキャリアをスタート。84歳になる今もそれを誇りに思っている。当時の彼は、ヴィクトリア時代の宝飾品を修理する仕事をしつつ、ダイヤモンドで事業を興そうと考えていた。原石の入手から研磨とデザイン、完成品の販売までを手がけるグローバルな企業だ。
事業を拡大するとともに、彼は世界的に知られたダイヤモンドの原石をいくつも入手した。黄金色に輝くイエローダイヤモンド「ザ ゴールデン エンプレス」を生んだ299カラットの原石や、1,109カラットの「ザレセディ ラ ロナ」(当時、百年の間に発見された中で最大の原石だった)も含まれる。彼はこれらの原石にカット&ポリッシュを施し、素晴らしい宝石を生み出した。目を奪われるような宝石こそが、大胆なスタイルで知られるグラフのジュエリーの、永遠のインスピレーション源なのだ。
この新作イヤリングはまさにそのことを象徴するものだ。巨大なコロンビア産エメラルド(トータル26カラット)が、約7.6㎝もの長さで縦に連なり、仕上げに3 つのきらびやかなペアシェイプダヤモンドがあしらわれている。このダイヤモンドには、どんなにかすかな夜の灯りをも受け止めて輝くようにカッティングが施されている。
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