TEXT & PHOTOGRAPHS BY JUNKO AMANO
鴨川五条「池半分室」

日本茶、中国茶、台湾茶から選べる
木屋町五条を高瀬川に沿って南へ歩き、老木の榎の脇から鴨川べりの小道へ。「こんなところに道があったなんて」と思いつつ鴨川べりを進むと、4階まで一面ガラス張りの鉄筋コンクリート造りのビルにたどり着く。「池半分室」はその1階にあり、コンクリート打ちっぱなしのミニマルな店内には日本をはじめ世界各地の古い家具がゆったり配され、窓の外には自然が広がる、現代における侘びを感じる空間になっている。

広い店内にテーブル3卓をレイアウト。わずか9席の贅沢な空間
店主・小嶋万太郎さんは、2015年から鴨川べりに一棟貸しの町家宿「鴨半」を営み、2020年には宿泊客をお茶でもてなすために離れの茶室「茶室/茶藝室 池半 」をオープンした。「茶室/茶藝室 池半 」では、宿泊客以外も一日一組限定の一棟貸し切りスタイルで特別なお茶時間を過ごすことができるが、2024年10月、隣に開いた「池半分室」は、予約なしでより気軽にお茶が楽しめる。

窓の外には東山や鴨川が広がる。ちなみに、上階は鴨川を独り占めできる宿「鴨半OMOYA」。2階には茶室を備えた特別室もあり
小嶋さんは、江戸中期から昭和まで続いた瀬戸の窯元「池林半七」に生まれ、幼い頃から先祖が作った茶道具に触れ、茶室を遊び場にするなど、茶が身近な存在に。茶の湯と文人煎茶を学び、茶を媒介としたコミュニケーションに興味を持つようになったという。そして、妻・慧さんは家族の転勤で長く台湾で暮らし、茶藝館に勤めていたことも。そのため店で供する茶は、おのずと国を問わないスタイルに。有機栽培や自然農法で栽培された日本茶、中国茶、台湾茶が常時20種類以上そろっている。

急須や蓋碗を使い、一煎目は、スタッフが台湾茶を淹れてくれる
一煎目でスタッフに淹れ方を教えてもらった後はセルフで。二煎、三煎と、気の向くままにお茶を楽しむことができる。

どの茶葉を選んでも茶セット¥2,200。この日は「野放老樹白茶」をチョイス
茶葉によっては10煎まで味わえるものもあり、台湾の「野放老樹白茶」は一煎目は淡く甘く、杯を重ねるごとに茶葉が開き、濃厚な紅茶のような味わいに変化する。
ガラス窓はあるものの自然とシームレスにつながり、店内は鴨川の河原で過ごしているようなのんびりムードいっぱいに。野点気分で心がほぐれていく。

ドライマンゴー、くるみ入りのなつめヌガー、ピーナッツクッキーを盛ったお茶請け¥550
「池半分室」
住所:京都市下京区都市町143-10
営業時間:11:00〜17:00(LO 16:00)
定休日:水曜
TEL. なし
公式インスタグラムはこちら

天野準子
生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント
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