ホテルジャーナリスト、せきね きょうこが独自の視点でおすすめの東京ホテルを案内。連載第59回目は、新たな時代に向け再生を遂げた老舗「The Okura Tokyo」

BY KYOKO SEKINE

 日本中のホテルファンが再オープンを待ち望んでいた老舗ホテルは、新築の高層ビル2棟からなる「The Okura Tokyo」と名も姿も一新し、2019年9月12日に華々しい門出を祝った。「ロビーは無くさないで!」という顧客やホテルファンの願いも叶い、建築学的にも優れた伝統美から多くの人に愛された本館ロビーは見事に再現され、以前との違いを見つけるのが困難なほど完璧に生まれ変わっている。

画像: 迎賓館の役目を担う「オークラ ヘリテージウイング」(右)と国際都市東京のニーズにこたえる「オークラ プレステージタワー」の2棟が並ぶ全景

迎賓館の役目を担う「オークラ ヘリテージウイング」(右)と国際都市東京のニーズにこたえる「オークラ プレステージタワー」の2棟が並ぶ全景

 建築家の谷口吉生氏により再現されたその本館ロビーは、一瞥ではなかなかわかりにくい細やかな変化が随所に施された。以前に比べ、確かに明るさが増したことくらいは、私にもわかる。しかし、実は、表には見えない最新鋭設備を駆使したディテールが配されている。

 たとえば、切子玉形をつなげた照明器具「オークラ・ランターン」は、表面の金糸細工が光の加減で昼と夜の趣を変える。釘や接着剤を使わない麻の葉文様の組子は、見上げる角度で違った立体感が浮き出る巧みな職人技が駆使されている。さらに、ロビー奥の障子に映り込む影絵のような竹林のシルエットは、感性豊かな日本の美意識を感じさせるなど、日本らしい細やかな技術、アート、工芸品がまるで美術館のように多様に揃う。未来に残すホテルとして、重要なコンセプトに挙げたのが「伝統と革新」であることに、大いに納得がいくのだ。

画像: 話題のロビー空間。余りに有名なオークラ・ランターンはもとより、梅の花を模した漆塗りのテーブルと椅子も以前と同様。テーブルと椅子は角度まで研究され、俯瞰すると満開の梅の花に見える

話題のロビー空間。余りに有名なオークラ・ランターンはもとより、梅の花を模した漆塗りのテーブルと椅子も以前と同様。テーブルと椅子は角度まで研究され、俯瞰すると満開の梅の花に見える

 かつて東京を代表する高級ホテルとして、さらに言えば、日本をも代表する最高クオリティのホテルとして、1962年に「ホテルオークラ東京」本館が開業した。初の東京オリンピック開催(1964年)に向けて、高度成長期真っただ中の日本は、一気に国際化へと進む未来への期待に溢れた時代でもあった。そしてまさに今、2020年初夏、東京に布かれた緊急事態宣言が解除され、東京の街は再び開かれつつある。世界に蔓延する新型コロナウィルスとの戦いは続き、すべてのビジネスが元通りになるには今少し時間を要するだろうが、それでも、The Okura Tokyoは、ゲストとの距離感に温かな手ごたえを感じているという。

画像: バーラウンジ「スターライト」 都心を望む最上階に造られた3つの異なる空間、スタイリッシュな「The Bar」、くつろぎの「The Lounge」、贅沢な「Chef’s Table」。食事はお酒とともに楽しめるアラカルトから本格的な肉料理、季節を感じるスイーツまでを堪能できる

バーラウンジ「スターライト」
都心を望む最上階に造られた3つの異なる空間、スタイリッシュな「The Bar」、くつろぎの「The Lounge」、贅沢な「Chef’s Table」。食事はお酒とともに楽しめるアラカルトから本格的な肉料理、季節を感じるスイーツまでを堪能できる

 ホテルは41階建て(8~25階はオフィスフロア)で、国際都市東京らしさに溢れた「オークラ プレステージタワー」(368室)と、17階建ての「オークラ ヘリテージウイング」(140室)の2棟で構成され、互いに隣接して建っている。「オークラ ヘリテージウイング」は、伝統、格式を感じさせるオークラグループ最高峰ブランドとして、これまで通り“日本の迎賓館”的役割を果たしていく。一方、趣の異なる「オークラ プレステージタワー」は、コンテンポラリーなラグジュアリーブランドとして、こちらも上質さに磨きのかかったマテリアルに和の要素を湛えた設えとなっている。

画像: アンバサダースイート<137㎡> オークラ ヘリテージウイングの客室。写真はリビング・ダイニングエリア。日本の美と品格を追求

アンバサダースイート<137㎡>
オークラ ヘリテージウイングの客室。写真はリビング・ダイニングエリア。日本の美と品格を追求

画像: ヘリテージルーム(バルコニー付)<60㎡> おなじくオークラ ヘリテージウイングの客室。3メートルの天井高にオークラ庭園に面した広い窓、バルコニー付

ヘリテージルーム(バルコニー付)<60㎡>
おなじくオークラ ヘリテージウイングの客室。3メートルの天井高にオークラ庭園に面した広い窓、バルコニー付

 ホテル総支配人、梅原真次氏は、以前のインタビューにこう応えてくれた。「老舗ホテルの改装や新築に於いて、長い時を経たホテルだけに、変えてはいけないもの、変えるべきものを決断する難しさが常に付きまとう」。今回の建替えでは、重要な哲学として、「“Simplicity&Elegance”(清楚にして優雅)をデザインコンセプトとして引き継ぎ、“伝統と革新”をメインのコンセプトに掲げた」と。伝統と革新という哲学は、静かな庭園を見下ろすヘリテージ ウイング、都会的なスタイルのプレステージ タワーという2棟のそれぞれの客室にも明確に表現されている。

 感動は食の充実にもある。“ヘルシー&ガストロノミー”を追求するフランス料理「ヌーヴェル・エポック」、高級食材をダイナミックに使い“鉄板焼を超えた鉄板焼”を提供する「さざんか」、開業以来、高い人気を誇る中国料理「桃花林」など、一流の7店舗が人気実力を競い合っている。たとえば「桃花林」の料理長、陳龍誠氏は、中国の伝統と日本の四季を融合した絶品の広東料理を提供している。料理数、全400種以上。厳選食材、原点回帰という基本を貫き、新しさに挑戦する。その美食とパフォーマンスを顧客が絶賛、新たな客も足を何度も運ぶ。

画像: 夜景の素晴らしさを堪能しながら、上質の食材に舌鼓。料理人との会話も楽しめる、鉄板焼「さざんか」のカウンター席

夜景の素晴らしさを堪能しながら、上質の食材に舌鼓。料理人との会話も楽しめる、鉄板焼「さざんか」のカウンター席

画像: ホテル直営の広東料理レストランとして日本初という歴史を持つ人気店「桃花林」。おすすめの特別料理「醉貝醤龍蝦」は“酔っ払い伊勢海老”。海老ではなく伊勢海老を紹興酒で酔わせた贅沢な料理。活き伊勢海老を酔わせるところからのパフォーマンスも PHOTOGRAPHS:COURTESY OF THE OKURA TOKYO

ホテル直営の広東料理レストランとして日本初という歴史を持つ人気店「桃花林」。おすすめの特別料理「醉貝醤龍蝦」は“酔っ払い伊勢海老”。海老ではなく伊勢海老を紹興酒で酔わせた贅沢な料理。活き伊勢海老を酔わせるところからのパフォーマンスも
PHOTOGRAPHS:COURTESY OF THE OKURA TOKYO

 他のレストランも同様に評価は高く、近隣の食通も通い詰めるという。これらの多彩なレストランは、今後も高級ホテルの要であり続けるだろう。レストランに限らず、ゲストとの信頼感や距離感、徹底した訓練による細やかなサービス、痒い所に手が届く”気づき”によるもてなしこそ、高級ホテルならではの魅力である。

THE OKURA TOKYO
住所:東京都港区虎ノ門2-10-4
電話:03(3582)0111
客室数:全508室(オークラ ヘリテージウイング:140室、オークラ プレステージタワー:368室)
料金:¥70,000~(1泊1室2名の室料。消費税・サービス料別)
公式サイト

せきね きょうこ(KYOKO SEKINE)
ホテルジャーナリスト。フランスで19世紀教会建築美術史を専攻した後、スイスの山岳リゾート地で観光案内所に勤務。在職中に住居として4ツ星ホテル生活を経験。以来、ホテルの表裏一体の面白さに魅了され、フリー仏語通訳を経て、94年からジャーナリズムの世界へ。「ホテルマン、環境問題、スパ」の3テーマを中心に、世界各国でホテル、リゾート、旅館、および関係者へのインタビューや取材にあたり、ホテル、スパなどの世界会議にも数多く招かれている。雑誌や新聞などで多数連載を持つかたわら、近年はビジネスホテルのプロデュースや旅館のアドバイザー、ホテルのコンサルタントなどにも活動の場を広げている
www.kyokosekine.com

 

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