「ソーホーにある自宅のロフトにて。階段の下にあるのは、

写真家マーク・リブーによるジョン・レノンのポートレイト。

リブーの作品を集めているんです」



「札幌で過ごしたティーンエイジャーの頃にとにかく好きだったのは、アイビースタイルのセーター、タータンチェック柄のキルトスカート、映画『グリース』(’78)でオリヴィア・ニュートン=ジョンが着ていたような丸い襟」と語る矢作まきえ。彼女は、マンハッタンでもっとも愛されるブティックのひとつ「MAKIÉ」を、18年にわたって主宰している。


ソーホーにあるこぢんまりとした彼女のショップは、スタイリッシュな母親のあいだでこっそりと口コミで広がった、知る人ぞ知る存在だ。茶色い紙箱にカラフルなリボンとネオンカラーの羽を巻きつけた、ショップの代名詞ともいえるラッピングは、彼女がデザインするエレガントでミニマル、かつ着心地のいいキッズウェアと同様によく知られている。矢作まきえのキッズウェアは、ロンパースからカシミアセーター、よだれかけにいたるまで、濃灰色やねずみ色、ストーンホワイトといった、大人顔負けの洗練されたカラーリングだ。


 1991年、23歳のときに、矢作は日本からNYへ移り、ユニオン・スクエアの近くで前夫とともにカフェ・ベーカリーを始めた。だが、『VOGUE bambini』の古い号を見たときにインスピレーションを得て、新しい道へ向かうことに。「そこに載っていたコム デ ギャルソンの服を着た子どもたちの写真は、タイムレスな魅力に満ちていました。その服はすごく素敵な学校制服のようにも、お父さんの服のようにも見えたのです」と彼女は回想する。そして8年後、彼女はブティックを始めた。


そこでは彼女のデザインした服のあいだに、紙のように薄い日本製タオルや、ストライプ模様の陶器のボウルなどの厳選されたハウスウェアも、小さな宝石のようにひっそりと並んでいる。そうしたアイテムの数々は、パリや、「MAKIÉ」の支店「MAKIÉ HOME」のある東京への毎月の出張の際に見つけるのだという。現在53歳の矢作は、旅行をしていないときには自宅のあるトンプソン・ストリート周辺を散策しているという。そんなとき彼女が着ているのは、トレードマークでもある紺色のほつれたツイル地のブレザーに、自身のデザインしたクロップト丈のパンツ。ゴールドとオパールのリングをいくつも重ねづけしている。今はもう、タータンチェック柄のキルトスカートは必要ないようだ。