「ザ・コンランショップ」の日本上陸30周年を記念し、東京ステーションギャラリーで2025年1月5日まで開催中の「テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする」。日本のライフスタイルに決定的な影響を与えたサー・テレンス・コンランの日本初回顧展へ、駆け込んで!

BY NAOKO ANDO

画像: コンランと彼がデザインした「コーン・チェア」 1952年撮影 、レイモンド・ウィリアムズ・エステート蔵 Photo © Estate of Raymond Williams / Courtesy of the Conran family, Conran Foundation and Conran IP LTD.

コンランと彼がデザインした「コーン・チェア」
1952年撮影 、レイモンド・ウィリアムズ・エステート蔵
Photo © Estate of Raymond Williams / Courtesy of the Conran family, Conran Foundation and Conran IP LTD.

 2024年10月12日からスタートした「テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする」。展覧会最終盤のこの時期にこそ訪れることをおすすめしたい。なぜなら、東京ステーションギャラリーで本展覧会を鑑賞→「ザ・コンランショップ丸の内」でギフト選び→「丸の内イルミネーション」を散策というコースが楽しめるから。展覧会と、一年でいちばん美しく華やかになる丸の内の街を同時に堪能できる。「ザ・コンランショップ丸の内」で展覧会の半券を提示すれば500円のディスカウントを受けられるというおまけつきだ。

画像: 1911年に開館した「ミシュラン・ハウス」を気に入っていたコンラン卿が1985年に購入。当時は荒廃していた建物を2年かけて改装した 改修されたミシュランビル(レストラン「ビバンダム」とザ・コンランショップ、1987年改修) Courtesy of the Conran family, Conran Foundation and Conran IP LTD.

1911年に開館した「ミシュラン・ハウス」を気に入っていたコンラン卿が1985年に購入。当時は荒廃していた建物を2年かけて改装した
改修されたミシュランビル(レストラン「ビバンダム」とザ・コンランショップ、1987年改修)
Courtesy of the Conran family, Conran Foundation and Conran IP LTD.

 サー・テレンス・コンラン(1931年-2020年)は、ロンドンのセントラル・セント・マーチンズでテキスタイルを学んだのち、デザイナーに。1956年にコンラン・デザイン・グループを設立、マリー・クヮントの1号店のデザインを手がけた。同時期にレストラン事業をスタートさせ、モダン・ブリティッシュと呼ばれる新たな料理スタイルをイギリスの食文化に根付かせた。
 1964年、ロンドンにホームスタイリングショップ「ハビタ」の1号店をオープン。シンプルな生活道具や調理道具、食器を倉庫のように積み上げた斬新なスタイルは、世界中から注目を集めた。1973年、高級志向のライフスタイル・セレクトショップ「ザ・コンランショップ」を開店し、1987年、ミシュランの本部があったサウスケンジントンのミシュラン・ハウスに移転。ミシュランのキャラクター、ビバンダムのステンドグラスや装飾的なタイルはそのままに2年かけて改装し、「ザ・コンラン・ショップ」に加えて「ビバンダム」というレストランをオープンした。
 本展前半では、ここまでの間にコンラン卿が生み出したさまざまなデザインや空間が、実物や貴重な資料によって紹介される

画像: ザ・コンランショップの紙袋、1980年代、デザイン・ミュージアム/テレンス・コンラン・アーカイヴ蔵 Courtesy of the Design Museum / Courtesy of the Conran family,Conran Foundation and Conran IP LTD.

ザ・コンランショップの紙袋、1980年代、デザイン・ミュージアム/テレンス・コンラン・アーカイヴ蔵
Courtesy of the Design Museum / Courtesy of the Conran family,Conran Foundation and Conran IP LTD.

 日本においては、1982年に西武百貨店と提携した「ハビタ館」が池袋にオープンした。現在50代以降の世代は、ここで始めて北欧の食器やインテリアと出合ったという人も多い。また、ロンドンの「ザ・コンラン・ショップ」の噂は瞬く間に日本にも届き、訪れる機会を得て、帰国後に自慢する人が続出。ファッション業界の人々の間でも家具や調理器具、食器などのブランド名が盛んに話題にされるようになっていった。バブル期に欧米のファッションブランドやフランスワイン、本格的なイタリアン料理などに次々と慣れていった日本人の関心が、ついに衣・食・住の最後、住に向けられたのだ。「ザ・コンラン・ショップ」に寄せる期待がはち切れそうになった1994年、新宿パークタワー内に第1号となる新宿店がオープンした。

画像: コンランがデザインした家具の模型 ザ・コンランショップ(UK)蔵 Courtesy of the Conran family, Conran Foundation and Conran IP LTD.

コンランがデザインした家具の模型
ザ・コンランショップ(UK)蔵 
Courtesy of the Conran family, Conran Foundation and Conran IP LTD.

 当時のいきさつや時代の熱量は、本展の後半、日本国内のさまざまなプロジェクトの関係者へのインタビュー映像からも感じられる。とくに「ザ・コンラン・ショップ」導入の際、日本側の責任者を務めたデザイン・プロデューサー後藤陽次郎氏によるコンラン卿とのやり取りを含めた証言は、時代を動かすエネルギーが感じられる貴重なもの。フードエッセイスト平野紗希子が同インタビューで「日本のインテリア・デザインは、コンラン前とコンラン後に分けられるのではないか」と語ったように、“コンラン前”を知らない世代にとっても、現在にいたる土台に何があるのかを知ることで、今後をいっそう輝かせることができるだろう。約80冊にのぼる書籍がずらりと並ぶ展示も圧巻で、手前に置かれたものは手に取って読むこともできる。

画像: バートン・コートのオフィスの様子を、愛蔵品の実物を使って再現した展示 PHOTOGRAPH BY NAOKO ANDO

バートン・コートのオフィスの様子を、愛蔵品の実物を使って再現した展示
PHOTOGRAPH BY NAOKO ANDO

 ほかにも、世界に先駆けて1989年に実現させたデザイン・ミュージアムについて、バークシャー州の自邸「バートン・コート」についてなど、コンラン卿の70年近くにおよぶキャリアの全貌を、その活動ごとに約300点以上もの作品と資料で浮かび上がらせる本展。「ザ・コンラン・ショップ」日本上陸30周年を祝福し、未来につなげる充実した展覧会だ。2025年4月19日〜6月8日の予定で福岡市美術館に巡回する予定。東京で見逃してしまいそうな方は、来年春に福岡へ!

テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする
会期:開催中〜2025年1月5日(日)
会場:東京ステーションギャラリー
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1
公式サイトはこちら

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