BY MICHIKO OTANI, PHOTOGRAPHS BY YUSUKE ABE
「冬の東北の空の色、でしょうか。カラッと晴れた青空というよりは、少し曇った、すごくきれいなグレーの色調の」
坂本龍一は、若いオーケストラが奏でる音をそう表現した。
彼が音楽監督を務める「東北ユースオーケストラ」は、東日本大震災で被災した福島県、岩手県、宮城県の東北3県の子どもたちで結成された交響楽団である。もともとは2011年、坂本が立ち上げた震災で傷ついた学校の楽器を点検、修復するプロジェクト「こどもの音楽再生基金」をきっかけに企画、編成され、現在は小学4年生から大学生まで107名の若き演奏家たちが在籍し、月に一度、合同練習を行っている。
「結成した当初から、小学生と大学生が対等に会話し、一緒にご飯を食べている。僕はそういうものだと思っていたんですが、こんな和気藹々とした練習風景は、実はとても珍しいのだそうです。何より、自由闊達に演奏を楽しんでいるのはとてもいいことだと思う」
恒例行事となっているのが、毎年春に開催される定期演奏会。今年3月に開催される通算5回目の「東北ユースオーケストラ演奏会2020」では、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震、2017年の九州北部豪雨、2018年の西日本豪雨、北海道胆振東部地震の被災地から合唱の参加者を募り、子どもたちとベートーヴェンの交響曲第九番を演奏する。
「毎年のように発生する大きな自然災害の被害を見聞きするたびに、被災をきっかけに誕生したオーケストラとして、甚大災害の被災地の皆さんのために何かできることはないだろうかと考えていました。そこで、『第九』だったら合唱で参加していただけるんじゃないだろうか、とふと思って。幅広い年齢層の方と一緒に音楽を演奏し、音を浴びることで、団員もきっと自分たちの役割をあらためて感じ取ってくれると思います」
第1回から詩の朗読で参加している女優・吉永小百合も、東北ユースオーケストラの熱心な支持者。今年も、坂本の演奏とのコラボレーションが予定されている。震災発生から9年、時間とともに薄れていく記憶と人と人とのつながりを、若い演奏家たちが音楽で継承する。その音色は輝かしく、頼もしい。
「震災から年数を重ねていけば、『なぜこのオーケストラがあるのか?』と問われることになる。『東北だから』『被災地だから』ではなく、このオーケストラが演奏する音楽に存在意義があることが、必須条件になると思います。だから、音楽性を高めるために、新しい曲にどんどん挑戦していく。それを後押しするのが、僕たち大人の役割だと考えています」
演奏会では、坂本自身が彼らのために書き下ろした新曲も披露される。東北の空の色を滲ませた、若くしなやかな音の連なり。新たなハーモニーはまもなく完成し、披露の日を迎える。
※ 新型コロナウィルス感染症の拡大防止のため、 公演中止となりました
チケット払い戻しについて
東北ユースオーケストラ演奏会 2020
日時・会場:
3月27日(金)18:15開場/19:00開演
サントリーホール 大ホール
3月28日(土)13:15開場/14:00開演
東京芸術劇場 コンサートホール
料金:S席¥5,000(S席¥3,000+東北ユースオーケストラへの寄付金¥2,000)
A席¥4,000(A席¥2,000+東北ユースオーケストラへの寄付金¥2,000)
B席¥3,000(B席¥1,000+東北ユースオーケストラへの寄付金¥2,000)
電話:050(5533)0888(DISK GARAGE)
3月29日(日)13:15開場/14:00開演
とうほう・みんなの文化センター(福島県文化センター)大ホール
料金:S席¥4,000(S席¥3,000+東北ユースオーケストラへの寄付金¥1,000)
A席¥3,000(A席¥2,000+東北ユースオーケストラへの寄付金¥1,000)
電話:024(531)4171(福島民報社事業局)
022(217)7788(キョードー東北)