あの大名跡が、歌舞伎界に戻ってくる。十三代目 市川團十郎白猿の襲名を祝して制作された特別な引幕「祝幕」が、このほどお披露目された。手がけたのは、世界的アーティストの村上隆。團十郎らしい破格のスケールだ

BY T JAPAN

 歌舞伎座の定式幕が上手から静々と引かれ、「それ」が徐々に姿を現すと記者席から小さなどよめきが起きた。

画像: 村上隆による原画は幅が約4メートル。「歌舞伎十八番」の演目がすべて描かれている 《2020 十三代目市川團十郎白猿 襲名十八番 》村上隆 2020年アクリル絵の具、キャンヴァス、アルミフレーム480×102.8cm ©︎2020 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

村上隆による原画は幅が約4メートル。「歌舞伎十八番」の演目がすべて描かれている
《2020 十三代目市川團十郎白猿 襲名十八番 》村上隆
2020年アクリル絵の具、キャンヴァス、アルミフレーム480×102.8cm
©︎2020 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

 十三代目 市川團十郎白猿襲名披露、八代目 市川新之助初舞台の「十一月吉例顔見世大歌舞伎」がいよいよ今月7日に開幕する。2020年に予定されていたものがコロナ禍で延期となり、2年半の時を経てついに歌舞伎界随一の大名跡が復活する。

画像: 披露された祝幕を前に。左から映画監督の三池崇史、市川團十郎白猿、アーティストの村上隆 ©️SHOCHIKU

披露された祝幕を前に。左から映画監督の三池崇史、市川團十郎白猿、アーティストの村上隆
©️SHOCHIKU

 その注目の公演を華やかに彩る「祝幕」が1日、お披露目された。手がけたのは世界的なアーティスト、村上隆。團十郎襲名を記録するドキュメンタリー作品を制作中の映画監督・三池崇史が、「現代の絵師が描く現代の役者絵を作ってほしい」と村上に依頼し、團十郎との縁を繋いだという。記者発表には3人が揃って登壇した。

画像: 市川團十郎白猿(左)と村上隆 ©SHOCHIKU

市川團十郎白猿(左)と村上隆
©SHOCHIKU

画像: ©️SHOCHIKU

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画像: 映画監督・三池崇史。制作中のドキュメンタリー作品の中にも、この祝幕が登場するようだ ©️SHOCHIKU

映画監督・三池崇史。制作中のドキュメンタリー作品の中にも、この祝幕が登場するようだ
©️SHOCHIKU

 成田屋の家の芸である「歌舞伎十八番」の演目がすべて描かれた、幅約32メートルの祝幕。その迫力は歌舞伎座の巨大な空間を圧倒していた。中央には、成田屋の三升紋を染め抜いた袖を大きく広げた『暫』の鎌倉権五郎。『勧進帳』の弁慶や、『助六由縁江戸桜』の助六など、いずれも歴代の團十郎が得意とした役柄が勢ぞろい。『外郎売』では父と並ぶ可愛い新之助の姿もある。印象的なのは、描かれた超人的ヒーローたちの「目」だ。ひと睨みされれば無病息災という言い伝えもある、團十郎の魔力を秘めた「目」。その目が十八対、こちらを睨んでいる。その圧たるや、まさに現代の疫病を吹き飛ばす勢い。

 工房で原画となる作品を見て感激し「いつか購入したい」と冗談混じりに語った團十郎も、巨大な幕となって舞台にかかった様を見て「細部まですべてが素晴らしい。とくに十八番の役どころの目の色が全部違うんです。言葉を失います」と感嘆。

画像: 祝幕の原画を手掛けたアーティストの村上隆。「自信をもって作りました」と語った ©️SHOCHIKU

祝幕の原画を手掛けたアーティストの村上隆。「自信をもって作りました」と語った
©️SHOCHIKU

 村上隆は「團十郎さんからはオーラを感じました。なんというか、3Dな感じ(笑)」と出会った時の印象を楽しげに語る一方で、祝幕については「巨大なサイズになることを想定して全体に視線が行き届くように、また『目』が一つ一つの顔に視線を誘導するように、高度な技術を用いて制作しているので、そうした専門的な視点からも見てほしい」とアート作品としての鑑賞ポイントもレクチャーした。

 まだ街では「海老蔵さん」と声をかけられると笑う、新・團十郎白猿。村上が描いた「歌舞伎十八番」の演目を散りばめ、人気俳優がずらりと出演する襲名披露公演は、東京・歌舞伎座で11月、12月と二ヶ月間続く。ただし、この祝幕が見られるのは11月の公演のみ。歌舞伎界あげての一大イベントを、スペシャルな祝幕とともに目撃したい。

【公演情報】
市川海老蔵改め 十三代目 市川團十郎白猿襲名披露
十一月吉例顔見世大歌舞伎

昼の部
祝成田櫓賑(いわうなりたこびきのにぎわい)
歌舞伎十八番の内 外郎売(ういろううり)
歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)

夜の部
歌舞伎十八番の内矢の根(やのね)
十三代目市川團十郎白猿 八代目市川新之助 襲名披露 口上(こうじょう)
歌舞伎十八番の内 助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)

上演期間:2022年11月7日(月)~28日(月)
昼の部:11:00~
夜の部:16:00~
休演日:14日(月)、21日(月)
会場:歌舞伎座
住所:東京都中央区銀座4-12-15
料金:1等席¥23,000、2等席¥18,000、3階A席¥8,000、3階B席¥6,000、1階 桟敷席¥25,000
※ 4階幕見席の販売はなし
公式サイトはこちら>

    

    

    

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