主演映画『メモリィズ』が6月12日から公開される俳優・柄本佑。彼は自身を空っぽにして周囲の流れに身を委ねながら、ひとつの作品を皆でつくり上げるのが楽しい、と語る。その日々を支えるのは"映画が好き"という純粋な思いだった。

BY SATORU YANAGISAWA, PHOTOGRAPHS BY SEIJI FUJIMORI, STYLED BY TAICHI SUMURA, HAIR & MAKEUP BY KANAKO HOSHINO

画像: ウールとコットン混紡の軽やかな生地からなる、オーバーサイズのジャケットとトラウザーズのセットアップ。淡いベージュのトーン、そして静かさの中にも強さを秘めた彼の無造作な立ち姿が貫禄あるダブルブレストを粋に見せる。 ジャケット¥599,500・パンツ¥239,800/ボッテガ・ヴェネタ ボッテガ・ヴェネタ ジャパン TEL.0120-60-1966 その他/スタイリスト私物

ウールとコットン混紡の軽やかな生地からなる、オーバーサイズのジャケットとトラウザーズのセットアップ。淡いベージュのトーン、そして静かさの中にも強さを秘めた彼の無造作な立ち姿が貫禄あるダブルブレストを粋に見せる。

ジャケット¥599,500・パンツ¥239,800/ボッテガ・ヴェネタ
ボッテガ・ヴェネタ ジャパン TEL.0120-60-1966

その他/スタイリスト私物

画像: ボタンダウンシャツにベージュのコットンパンツという、プレッピーを彷彿させる肩肘張らないスタイリング。 マルチカラーのチェックが配されたポップな印象のシャツも、こうしてタイドアップすることで プレイフルな魅力を主張しながら落ち着いた雰囲気にも着こなせる。 シャツ¥291,500・パンツ¥192,500(ともに予定価格)/プラダ プラダ クライアントサービス TEL.0120-45-1913 その他/スタイリスト私物

ボタンダウンシャツにベージュのコットンパンツという、プレッピーを彷彿させる肩肘張らないスタイリング。
マルチカラーのチェックが配されたポップな印象のシャツも、こうしてタイドアップすることで
プレイフルな魅力を主張しながら落ち着いた雰囲気にも着こなせる。

シャツ¥291,500・パンツ¥192,500(ともに予定価格)/プラダ
プラダ クライアントサービス TEL.0120-45-1913 

その他/スタイリスト私物

画像: インテリアファブリック風の生地によるジャケットを主役に。この日の撮影場所に選んだ歴史的な建造物に溶け込みつつ、彼の表情の多彩さを見せてくれる。 ジャケット¥198,000・ジーンズ¥74,800/ジュンヤ ワタナベ マン コム デ ギャルソン TEL.03-3486-7611 シャツ(古着)¥11,000/sinot TEL.03-5738-8853 ネクタイ(古着)¥6,500・カラーバー(古着)¥8,000/アヤワスカ洋服店 TEL.03-6887-9299 その他/スタイリスト私物

インテリアファブリック風の生地によるジャケットを主役に。この日の撮影場所に選んだ歴史的な建造物に溶け込みつつ、彼の表情の多彩さを見せてくれる。

ジャケット¥198,000・ジーンズ¥74,800/ジュンヤ ワタナベ マン
コム デ ギャルソン TEL.03-3486-7611
シャツ(古着)¥11,000/sinot TEL.03-5738-8853
ネクタイ(古着)¥6,500・カラーバー(古着)¥8,000/アヤワスカ洋服店 TEL.03-6887-9299 

その他/スタイリスト私物

柄本佑  スペシャルインタビュー

クランクイン前は、自分自身をフラットな状態に引き戻す作業が必要。
だからこそ常に、"映画ファン"だという自分を大事にしている

「すみません、お待たせしました!」
 たった数分の遅れにもかかわらず、柄本佑は急ぎ足で、申し訳なさそうに私たちの前に現れた。聞けば、今日初めて訪れる広大な敷地の撮影場所にあって、入り口を見つけるのに悪戦苦闘していたのだという。息つく間もなく準備に取りかかろうとする彼に、かえってこちらが恐縮しつつも、そんな姿が、数日前に試写で観たばかりの新作映画で柄本が演じた主人公と重なり、なんだかうれしく、どこか安心した。
 近日公開となる柄本の主演映画『メモリィズ』(坂西未み 郁いく監督)は、写真という記録を通して、大好きな人たちのかけがえのない記憶を静かに、鮮やかに浮かび上がらせる、とめどなく続く家族の物語。日々の些細な出来事を淡々と描く作品のなかで、彼は、足を骨折した義父・誠(イッセー尾形)の身の回りの世話をするために、九州の田舎町を訪れた雄太を演じる。
「いつもクランクイン前はひたすら台詞の練習をするんですが、この作品に関してはただ歩いていたり、写メを撮ったり、食事をしたり、そういったシーンが多くて。台詞があまりないので、何をしていればいいんだろうという手持ち無沙汰さがありましたね。僕は基本的に、演じる役を自分に重ね合わせたり、事前に考えを巡らせたりすることはしないんですが、この雄太という役に関しては、ある種の"匿名性" みたいなものが必要だと思いました。のん気でのんびりとした、どこにでもいそうな青年っていう意味では、わりと自分にも遠くない役かもしれないですね」

 俳優についてまわる"役づくり" という言葉。だが柄本は、与えられた役に自ら何かを乗せること、自分からアプローチすることはあまりしないという。
「あくまで僕個人の考え方として、他人が書いたものを"わかるはずがない" っていうのがまずあるんです。他人のことなんて絶対にわからないし、それがベースにあるから、役について考える必要がないっていうのかな、この仕事に関しては。ただ、ほかのキャストの方々が決まって、台本が少しずつ改訂されて、衣装や小物も決まって、そうやってちょっとずつ具体的な要素が積もっていって、いざ『よーい、スタート!』がかかった瞬間の自分がどうなっているか。まっさらな状態で、棒読みで覚えた台詞を現場で初めて言ってみて、監督をはじめとしたスタッフと意見交換をするうちに、自
分のなかに何かが自然と出てくる。その流れには逆らうことなくやっていく、という感じですね」

 自分だけで正解を見いだそうとせず、脚本はもちろん、現場の流れにも身を任せつつ、みんなで意見を出し合いながらひとつの映画をつくり上げていく。その過程が楽しいのだと柄本は話す。
「僕は映画が好きでこの業界に入ったので、やっぱり映画にこだわりたいし、自分の"ホーム" と呼べるところがあるとすれば"映画" だと思っています。映画の現場ではいろんな世代の人たちが交わりながら仕事をしますが、そのなかにはプロとして作業に徹している人もいれば、不満を顔に出しながら参加している人もいる。ただ、どんな人であっても、自分の役割にチューニングを合わせて、よりよい作品にするためのアイデアを持ち寄りながら仕事をしている。いろんな思いをもった人たちがいて、でも同じ方向に向かってひとつの作品がつくられていくのが面白くて、自分もその仲間入りがしたくて、ずっと映画に携わり続けているんだと思います」

 そんな自身のことを「まったくの映画ファン。わりと一途にそれで来ている」と言う柄本。その純粋な気持ちは、さまざまな作品や役柄と向き合うにあたり、できるだけ多くの新しいものを受け入れられる状態を保つために重要なのだと話す。
「(この仕事を)長く続けてきてしまっているので、どうしても経験みたいなものが積まれてしまうんですよね。でも、そんなものは別にいらなくて、とりあえずそこに"いる" という状態こそが望ましい。ただ、空っぽな状態を保ち続けること、それに抗わずにいることって難しくて、けっこう精神力がいるんです。自分をフラットな状態に引き戻す作業というか。だからこそ常に、"映画ファン" だという自分を大事にしているところはありますね」

 子どもの頃、俳優である父(柄本明)と共通の話題をもつために映画館に通うようになり、映画が好きになった。
「映画館って、ひとつの空間で同じ作品を100人くらいで観ますよね。そのなかには前のめりになって観ている人もいれば、つまらなくて退屈している人、面白いと思いながらも疲れて寝ちゃっている人とか、いろんな人がいるじゃないですか。たぶん僕は、そんな環境や状況もひっくるめて映画が好きなんです。やっぱり映画は観るっていうより、体験するものだと思うので。そう考えると、映画の撮影現場も映画館みたいなものだから(笑)、そんな原体験がベースにあるのかもしれないですね」
 ゆっくりと言葉を選びながらも、彼からは熱い気持ちが伝わってきた。やはり柄本佑は、映画が好きで好きで仕方がないのだ。

画像: 機能と造形美の両立を図ることで、フォーマルの新たな言語を提示するソウシオオツキ。このジャケットも例にもれず、構築的な設計を取り入れながらもとても柔らかく、スカーフのような美しいドレープを生み出している。その自然な表情は、まるで彼自身のワードローブの一部であるかのようだ。 ジャケット¥132,000/MATT.(ソウシオオツキ) info@the-matt.com シャツ(古着)¥8,800/ジャンティーク TEL.03-5704-8188

機能と造形美の両立を図ることで、フォーマルの新たな言語を提示するソウシオオツキ。このジャケットも例にもれず、構築的な設計を取り入れながらもとても柔らかく、スカーフのような美しいドレープを生み出している。その自然な表情は、まるで彼自身のワードローブの一部であるかのようだ。

ジャケット¥132,000/MATT.(ソウシオオツキ) info@the-matt.com

シャツ(古着)¥8,800/ジャンティーク TEL.03-5704-8188

柄本佑(えもと・たすく)
東京都出身。2003年の映画『美しい夏キリシマ』で主演デビュー。映画『きみの鳥はうたえる』(2018)で第73回毎日映画コンクール男優主演賞を受賞。同年にはほかに公開された二作と合わせ、数々の映画賞を受賞。以降、大河ドラマ『光る君へ』(2024)ほか多くの映像作品に出演。今年2 月には主演を務めた映画『木挽町のあだ討ち』も公開された。待機作に主演映画『メモリィズ』( 6 月12日公開)、黒沢清監督の映画『黒牢城』( 6月19日公開)がある。

▼あわせて読みたいおすすめ記事

T JAPAN LINE@友だち募集中!
おすすめ情報をお届け

友だち追加
 

LATEST

This article is a sponsored article by
''.