大量生産と高いクオリティを両立させるユニクロ。その未来には、どんな服をまとう私たちがいるのか?「LifeWear」を武器に、ファッションの民主化を唱える企業のアート&サイエンスをひもとく

BY MICHINO OGURA

 ここ数年、冬のワードローブにユニクロのニットが欠かせなくなってきている。それは私に限ったことではなく、周囲のスタイリストやフォトグラファーからもそんな声を聞く。「それどこの服?」という会話が日常的に飛び交う日本のファッションシーンに携わる人々の話だ。そんなムードが世界的であることを裏づける出来事があった。

2018年9月26日からパリでユニクロのニットウェアに特化した初の展覧会『The Art and Science of LifeWear : Creating a NewStandard in Knitwear』がジュ・ド・ポーム国立美術館で開催。折しも、パリはファッションウィーク中で、5日間という短期間だったにもかかわらず、通常の展覧会では平均来場者数が一日500〜600人という規模の会場に、最終的に約6,000人が訪れたという。世界中のファッション関係者とパリの人々がそれだけユニクロのニットに魅せられ、関心を寄せているという証拠だろう。

画像: 『The Art and Science of LifeWear : Creating a NewStandard in Knitwear』 会場となったジュ・ド・ポーム国立美術館。展覧会の空間構成や映像はライゾマティクスが手がけた ほかの写真をみる

『The Art and Science of LifeWear : Creating a NewStandard in Knitwear』
会場となったジュ・ド・ポーム国立美術館。展覧会の空間構成や映像はライゾマティクスが手がけた
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 本展覧会は「アート&サイエンス」がテーマ。ユニクロが掲げる「LifeWear」を体現するアイテムとしてニットを軸に、エッセンシャルなものこそアートとサイエンスのどちらが欠けても成り立たないという服作りの深部を表現した。ユニクロを抱えるファーストリテイリングでクリエイティブを統括するジョン・ジェイ氏は記者発表時に「ニットは“サイエンス”を駆使して、暖かさや着心地などの技術を追求する一方、着る人の感性を刺激する“アート”としての色彩やクラフツマンシップをこめることができる」と語った。

画像: 『The Art and Science of LifeWear : Creating a NewStandard in Knitwear』展示より。 ニットの色バリエーションを美しいインスタレーションで表現した DESIGN BY EMMANUELLE MOUREAUX / COURTESY OF UNIQLO ほかの写真をみる

『The Art and Science of LifeWear : Creating a NewStandard in Knitwear』展示より。
ニットの色バリエーションを美しいインスタレーションで表現した
DESIGN BY EMMANUELLE MOUREAUX / COURTESY OF UNIQLO
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 その展示会場で多くの人の注目を集めていたのが日本の島精機製作所が作る最新鋭の編み機だった。重厚な機械音を出しながら、ガラスの中ではニードルが素早く動き、しばらくすると機械の足もとから一枚のニットドレスが姿を現す。この編み機こそが、ユニクロのいう“サイエンス”の一端を担っている。従来のニットは前身頃、後ろ身頃、袖とパーツを編み、それらを縫い合わせる工程が必要だが、島精機製作所の編み機は裁断・縫製を省き、一着を一度に編み上げる「ホールガーメント」製法。この編み機を使うことによって、縫い代がなく、フィット感に優れたニットを作ることが可能になった。

画像: 『The Art and Science of LifeWear : Creating a NewStandard in Knitwear』展示より。 日本からホールガーメントの編み機を持ち込み、実演するスペース PHOTOGRAPHS: COURTESY OF UNIQLO ほかの写真をみる

『The Art and Science of LifeWear : Creating a NewStandard in Knitwear』展示より。
日本からホールガーメントの編み機を持ち込み、実演するスペース
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF UNIQLO
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また、サスティナビリティの面からみると、使用する糸の量をコンピュータで正確に制御し、裁断をなくすことで無駄な糸が出ないというのも利点だ。この技術に着目したファーストリテイリングは2016年10月に島精機製作所との合弁会社である「株式会社イノベーションファクトリー」を立ち上げ、戦略的取り組みを開始した。

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