《Come Play with Me》(2018年)

アクリルグワッシュ、キャンバス

© TOMOO GOKITA

COURTESY OF TAKA ISHII GALLERY


 

 今、世界的にもっとも注目を集めている日本人画家、五木田智央の個展『PEEKABOO』が、東京オペラシティ アートギャラリーで始まった。


 五木田は90年代から商業誌のイラストやデザインの分野で活躍し、2000年代半ばより海外でも積極的に作品を発表。2014年には、バスキアを発掘し、ニュー・ペインティング(新表現主義)をリードしたNYの老舗画廊メアリー・ブーン・ギャラリーでも個展を開き、ファインアートとしての評価も高めた。本展は、アーティストとして勢いに乗る五木田の現在を示すように、近作の“顔のない人物画”やドローイング、またインスタレーション作品など全36点を展示。その半分が2018年に制作した最新作だ。



《記念撮影》(2017年)

アクリルグワッシュ、キャンバス  個人蔵

© TOMOO GOKITA

COURTESY OF TAKA ISHII GALLERY



《Holiday Flight》(2017年)

アクリルグワッシュ、キャンバス ジャック ・ チャン氏(香港)蔵

© TOMOO GOKITA

COURTESY OF TAKA ISHII GALLERY



 五木田の過去の作品には、青や暖色系の色を基調にしたものもある。が、本展に並ぶのは、すべてモノクロームの作品だ。人物の顔や手などに見られる描写のデフォルメや、グラデーションとベタ塗りの技術の使い分け。ミステリアスでありながらユーモラスでもあり、具象と抽象の境界をゆさぶるような不思議な世界観。そういった五木田ならではの“視覚言語”のようなものをよりわかりやすく体験できるのは、これらモノクロームの作品だろう(実際に、五木田の作品でよく購入されるのもモノクロームのシリーズだという)。


 そのモノクロームのイメージを、本展では巨大なサイズのキャンバスで大量に展示。その光景は圧巻である。ただ、五木田の作家性を知るうえで改めて注目したいのは、彼の作品が油絵でないことだ。彼が作品制作の際に愛用するのは、イラストレーションなどに使われるアクリルグワッシュ。これは速乾性の高い絵具のため、急いで色を乗せていかないと作品にあるようなグラデーションは表現できず、そもそもキャンバスとの相性自体がよくない。それでも五木田は、その組み合わせによる表現力に惹かれ、絵具が乾くまでという制限時間のなか、自分より大きなキャンバスと向かい合って絵を描いてきた。作品に囲まれながらそんな姿をふと想像すると、彼の制作行為自体がスポーツのようにも、五木田が好きだというプロレスのようにも思えてきて、楽しくなる。



《妖怪のような植物》(2017年

アクリルグワッシュ、キャンバス 川崎祐一氏蔵

© TOMOO GOKITA

COURTESY OF TAKA ISHII GALLERY



《Untitled》(2014-15年)

ミクストメディア Anzai Art O ce, Inc. 蔵

© TOMOO GOKITA

COURTESY OF TAKA ISHII GALLERY

PHOTOGRAPHS: KENJI TAKAHASHI



 木炭デッサンやテント生地を使った作品、また小さい額入りの素描など800点で構成したインスタレーション作品もある。「自由に絵を描いてきた」と言われる五木田だが、こうした作品は、彼が絵画の歴史や文脈をどこかで意識しながら制作していることを暗示する。実際、本展示作品のなかには、世界的なアートコレクターであるスタートトゥディ社長の前澤友作やアーティストのカウズ、ミュージシャンのテイトウワなどの所蔵品が含まれている。ファッションや音楽、サブカルチャーのファンのみならず、すっかりアートワールドの住人たちをも虜にしている五木田の現在を、本展で体感したい。




五木田智央『PEEKABOO』

会期:〜6月24日(日)
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2
開館時間:11:00〜19:00(金、土曜は20:00まで)
入場料:一般¥1,200、大学・高校生¥800、中学生以下無料
休館日:月曜(ただし4月30日は開館)

TEL. 03(5777)8600(ハローダイヤル)

公式サイト






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