COURTESY OF EL SISTEMA JAPAN


 聴覚などに障がいのある子どもたちと、ない子どもたちが、互いに補完し合って音楽を創りあげる――。この合唱団の名は、ホワイトハンドコーラス。ベネズエラ生まれだ。白い手袋をはめて歌を表現する合唱と、声を出して歌う合唱。2つが一体化した彼らの躍動感あふれるパフォーマンスは、ザルツブルク音楽祭で称賛を浴びた。プロとして活躍するボーカルアンサンブル「ララ・ソモス」も輩出している。


 そしてついに、日本の子どもたちによる「東京ホワイトハンドコーラス」が始動した。このプロジェクトは、音楽教育を通じて東日本大震災の被災地を支援する「エル・システマジャパン」と、東京芸術劇場との共催だ。都内のろう学校などでメンバーを募ったところ、幼稚園生から高校3年生まで、幅広い顔ぶれが集まった。



COURTESY OF FESJ/2017/MARIKO TAGASHIRA



 音が聴こえなかったら、音楽を理解し、表現するのは難しいのではないか――。これがいかに見当違いの勝手な思い込みであったか、私はホワイトハンドコーラスの練習を見学して痛感した。指導する歌手のコロンえりかさんは、「まつ毛に響く音、爪に響く音を感じて」と、音を体感するように促す。すると子どもたちは、歌っているコロンさんの喉をさわってみたり、ピアノの下にもぐりこんでみたり。私も、子どもたちと一緒にピアノの側面に耳をあててみた。振動が体全体に伝わって、心が旋律に素直に共鳴するような感覚を味わった。


 ホワイトハンドコーラスの表現は、手話にとどまらない。歌詞に込められた意味や光景を、体の動きで引き出すのだ。その表現のしかたは、子どもたちが話し合って考える。心に響いたもの、わきあがる感情を、自由な発想で紡いでいく。


 コロンさんとともにコーラスを指導する井崎哲也さんは、自身も耳が不自由で、日本ろう者劇団の顧問を務めている。小学1年生のとき、木琴を叩いていたら学校の先生に「リズム感が悪い」と言われて傷つき、音楽が大嫌いになったという過去を持つ。「聴こえなくても、振動で、感触で、音楽の素晴らしさや楽しさがわかります。日本にも、聴こえない人に合った音楽教育があるべきなのです」と話す。


 最年長メンバーである高校生の新井ひかるさんにとって、音楽はこれまで身近なものではなかったが、ホワイトハンドコーラスに参加して、新しい表現を得た。「聴こえないけど、音が出るものにさわって、響いてくるものを感じるのが楽しい」と目を輝かせる。


 この日の練習で、子どもたちに囲まれながら伴奏を担当していたピアニストの富永峻さんは、「これがまさに音楽の原点」と言う。「感情から感情へ伝わる。それが音楽なのです」


 東京ホワイトハンドコーラスは今、10月に初公演を控えて練習を重ねている。福島県相馬市から参加する子どもコーラスと、ベネズエラから来日する予定の「ララ・ソモス」と共演するのだ。文化の違いや個性を認め合いながら全員で織りなすハーモニーは、音楽とは心で奏で、心で聴くものであることを、教えてくれるだろう。



COURTESY OF FMSB



「ララ・ソモス」を日本に招待する費用が不足しているため、エル・システマジャパンは現在、クラウドファンディングによる寄付を呼びかけている(※すでに募集期間は終了)。


クラウドファンディングサイトへは下記リンクから

https://readyfor.jp/projects/whitehands




エル・システマフェスティバル 2017

日時:10月22日(日)14:00(開演)

場所:東京芸術劇場コンサートホール

住所:東京都豊島区西池袋1-8-1


問い合わせ先

エル・システマジャパン

TEL. 03(6280)6624

公式サイト






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