国内外で活躍する著名なアーティストの個展から、地域の魅力を再発見できる芸術祭まで、この夏に見たい展覧会をピックアップ

BY MASANOBU MATSUMOTO

『ゲルハルト・リヒター展』|東京国立近代美術館

画像: (写真左から)《ビルケナウ(CR: 937-1)》、《ビルケナウ(CR: 937-2)》 2014年、油彩・キャンバス 各260×200㎝、ゲルハルト・リヒター財団蔵 © GERHARD RICHTER 2022 (07062022)

(写真左から)《ビルケナウ(CR: 937-1)》、《ビルケナウ(CR: 937-2)》
2014年、油彩・キャンバス 各260×200㎝、ゲルハルト・リヒター財団蔵
© GERHARD RICHTER 2022 (07062022)

 現代アート界の巨匠、ゲルハルト・リヒター。日本では16年ぶりとなる彼の大規模な個展が開幕した。見どころは4枚の巨大な抽象画からなる《ビルケナウ》。画題はアウシュビッツ第二強制収容所が置かれた村の名である。

 ドイツ生まれのリヒターにとって、長くホロコーストは重要なテーマであった。1957年に手がけた『アンネの日記』の挿絵にはじまり、ナチスの安楽死政策の犠牲になった伯母や戦死した叔父らの具象画なども制作。自身の創作源となってきた大量のイメージ素材を集めた「アトラス」にも、ホロコーストに関する写真が多数収録されている。《ビルケナウ》の下地にあるのは、収容所で囚人が隠し撮りした4枚の写真。リヒターはそれをキャンバスに転写したのち、絵の具を塗り広げ、こすったり、削ったりしてこの絵を完成させた。歴史的な大虐殺を実際に描くことは可能なのか、またどのように描くことができるのか──。絵画の可能性、また「見ること・見えること」を探求してきた彼のひとつの答えともいえる作品だ。

『ゲルハルト・リヒター展』
会期:~10月2日(日)
会場:東京国立近代美術館
住所:東京都千代田区北の丸公園3-1
開館時間:10:00〜17:00(金・土曜、および9月25日~10月1日は10:00〜20:00)
※入館は閉館時間の30分前まで。
休館日:月曜(ただし9月19日、9月26日は開館)、9月27日(火)
料金:一般 ¥2,200、大学生 ¥1,200、高校生 ¥700
電話:050-5541-8600(ハローダイヤル)
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『ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡ー市民が創った珠玉のコレクション』|国立新美術館

画像: (左)カジミール・マレーヴィチ《スプレムス 38番》 1916年 油彩/カンヴァス 102.5 × 67.0 cm MUSEUM LUDWIG, KÖLN / COLOGNE, ML 01294. (PHOTO: © RHEINISCHES BILDARCHIV KÖLN, RBA_D033965_01) (右)モーリス・ルイス《夜明けの柱》 1961年 アクリル絵具/カンヴァス 220.0 × 122.0 cm MUSEUM LUDWIG, KÖLN / COLOGNE, ML 01091. (PHOTO: © RHEINISCHES BILDARCHIV KÖLN, RBA_D040139)

(左)カジミール・マレーヴィチ《スプレムス 38番》 
1916年 油彩/カンヴァス 102.5 × 67.0 cm
MUSEUM LUDWIG, KÖLN / COLOGNE, ML 01294. (PHOTO: © RHEINISCHES BILDARCHIV KÖLN, RBA_D033965_01)
(右)モーリス・ルイス《夜明けの柱》
1961年 アクリル絵具/カンヴァス 220.0 × 122.0 cm 
MUSEUM LUDWIG, KÖLN / COLOGNE, ML 01091. (PHOTO: © RHEINISCHES BILDARCHIV KÖLN, RBA_D040139)

 ドイツ・ケルン市にあるルートヴィヒ美術館。その世界有数の質と量を誇る、20世紀初頭から現代までのアートコレクションは、市民コレクターが大きく寄与して形成されてきたものだ。いわば、芸術と芸術文化を愛する市民たちの豊かなつながりが礎にある美術館ーー。本展は、そのコレクションの代表的な作品約150点を、寄贈に関わったコレクターたちに焦点を当てながら紹介する。

 たとえば、美術館に名を冠するルートヴィヒ夫妻が寄贈した、アンディ・ウォーホルやリキテンスタインといったポップアートや、マレーヴィチ、ロトチェンコなどロシア・アヴァンギャルドの貴重な作品群、パブロ・ピカソの選りすぐりの作品。ケルンで弁護士として活躍したヨーゼフ・ハウプリヒが寄贈した表現主義や新即物主義などドイツ近代美術の名品。優れた写真コレクションも見どころだ。美術館が市民コレクター、社会と結びついたひとつのモデルを提示するとともに、ドイツ表現主義からキュビスム、シュルリアリスム、抽象表現、2000年代以降の今日のアートまでの近・現代美術史のハイライトに触れられるのも、本展ならでは。

『ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡ー市民が創った珠玉のコレクション』
会期:~9月26日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室2E
住所:東京都港区六本木 7-22-2
開館時間:10:00~18:00(金・土曜は20:00まで)
※入場は閉館時間の30分前まで
休館日:火曜
料金:一般 ¥2,000、大学生 ¥1,200、高校生 ¥800、中学生以下無料
電話:050-5541-8600(ハローダイヤル)
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『国立西洋美術館リニューアルオープン記念 自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで』|国立西洋美術館

画像: ゴッホ《刈り入れ(刈り入れをする人のいるサン=ポール病院裏の麦畑)》 1889年 油彩・カンヴァス フォルクヴァング美術館 © MUSEUM FOLKWANG, ESSEN

ゴッホ《刈り入れ(刈り入れをする人のいるサン=ポール病院裏の麦畑)》
1889年 油彩・カンヴァス フォルクヴァング美術館
© MUSEUM FOLKWANG, ESSEN

 本展は去る4月、1年半の休館を経て再開館した国立西洋美術館のリニューアルオープン記念展。ドイツ・フォルクヴァング美術館とコラボレーションし、印象派、ポスト印象派を軸にドイツ・ロマン主義から20世紀絵画までの作品を通して、芸術家たちはどのように自然と対話し、どのようなヴィジョンを描いてきたか――自然と人の対話(ダイアローグ)から生まれた近代の芸術の展開をたどる。出展作家はゴッホ、マネ、モネ、セザンヌ、ゴーガンなど。よく知られた画家たちの作品も「自然との対話」という視点で眺め直すことで、新たな発見が得られるに違いない。

 見どころのひとつは、今回ドイツから初来日となるゴッホの《刈り入れ(刈り入れをする人のいるサン=ポール病院裏の麦畑)》。炎天下の麦畑で農夫が黙々と麦を刈る姿を描いたその風景画に、ゴッホは「自然という偉大な書物が語る死のイメージ」を見たという。自然の中で繰り返される循環的な営みとその一部である人間の生死を暗示する風景。それが光り輝く太陽のもと、金色に輝くように描かれているのも感慨深い。是非とも会場で実物を観賞したい1枚だ。

『国立西洋美術館リニューアルオープン記念 自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで』
会期:~9月11日(日)
会場:国立西洋美術館
住所:東京都台東区上野公園7-7
開館時間:9:30~17:30(金・土曜は20:00まで)
※入館は閉館時間の30分前まで。
休館日:月曜 ※ただし、8月15日(月)は開館
料金:一般 ¥2,000、大学生 ¥1,200、高校生 ¥800
※チケットは日時指定制。詳細はこちらから
電話:050-5541-8600(ハローダイヤル)
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『越後妻有 大地の芸術祭2022』|新潟県越後妻有地域

画像: イリヤ&エミリア・カバコフ《手をたずさえる塔》 PHOTOGRAPH BY NAKAMURA OSAMU

イリヤ&エミリア・カバコフ《手をたずさえる塔》
PHOTOGRAPH BY NAKAMURA OSAMU

 いまでは日本各地で開かれるようになった地域芸術祭。その先駆けと言えるのが、新潟県越後妻有地域を舞台にした『大地の芸術祭』だ。2000年から3年に一度開かれてきたが、2021年はコロナ禍により延期され、今年4月29日に開幕日を移した。今回も十日町、川西、中里、松代、松之山、津南の6つの地域、約200の集落に333の作品が展示され、またパフォーマンス作品も展開する。2018年に公開されSNSで話題になった清津峡渓谷トンネル内のマ・ヤンソン/MAD アーキテクツの《Tunnel of Light》、宿泊できるジェームス・タレルの《光の館》やマリーナ・アブラモヴィッチの《夢の家》など、越後妻有越の風土を生かしたもの、越後妻有にしかない世界的作家の作品も多い。

 注目は、昨年末に完成したイリヤ&エミリア・カバコフの《手をたずさえる塔》。イリヤは旧ソビエト連邦(現ウクライナ)で生まれ育ち、現在はニューヨーク在住。作家曰く、この作品は民族、宗教、文化の違いについて平和的に話し合うことを促すモニュメントであり、塔上のオブジェは世界の国や地域で起こっているニュースを反映して照明の色が変わるという仕組みだ。また、芸術祭の拠点のひとつ「越後妻有里山現代美術館 MonET」での「大地の芸術祭2000-2022 追悼メモリアルシリーズ 今に生きる越後妻有の作家たち」も見逃せない。芸術祭がスタートしてから23年間、そのうちに亡くなった12名の本芸術祭出展作家を追悼する小さな展覧会で、期間中、2週間ごとに展示替えを行い、それぞれの作品、越後妻有との関わりを紹介する。

『越後妻有 大地の芸術祭2022』
会期:〜11月13日(日)
会場:新潟県越後妻有地域
休場日:火・水曜
料金:[作品鑑賞パスポート]一般 ¥4,500、大学・高校・専門学校生 ¥3,500、中学生以下無料
※作品鑑賞パスポートの詳細はこちらから
電話:025-761-7767(「大地の芸術祭」の里 総合案内所)
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『ラシード・ジョンソン ― Plateaus』|エスパス ルイ・ヴィトン東京

画像: 《PLATEAUS》2014年 579.1 x 457.2 x 457.2 cm エスパス ルイ・ヴィトン東京での展示風景(2022年) COURTESY OF FONDATION LOUIS VUITTON © RASHID JOHNSON PHOTO CREDITS: © KEIZO KIOKU / LOUIS VUITTON

《PLATEAUS》2014年 579.1 x 457.2 x 457.2 cm
エスパス ルイ・ヴィトン東京での展示風景(2022年)
COURTESY OF FONDATION LOUIS VUITTON
© RASHID JOHNSON PHOTO CREDITS: © KEIZO KIOKU / LOUIS VUITTON

 ラシード・ジョンソンは、1977年アメリカ・シカゴ生まれの美術家。いま最も影響力のあるアフリカ系アメリカンのアーティストと称される人物でもある。キャリアの転機になったのは、シカゴの黒人ホームレスを絵画的に撮影した写真シリーズ「Seeing in the Dark」。この作品が広く議論を呼び、「ポスト・ブラック」(「黒人アーティスト」というラベリングを拒み、自身たちの複雑なアイデンティティの再定義を要求するクリエイターたち)と呼ばれるポスト公民権運動世代の一翼を担う人物として注目を集めた。近年は、ドローイングやパフォーマンス、映像など多様な作品を発表し、また映画『ネイティブ・サン~アメリカの息子~』の監督も務めている。

 本展で紹介されるのは、日本初公開となるインスタレーション作品《Plateaus(プラトー)》。植物、シアバター、陶器、さらには書籍『ネイティブ・サン』や作家が幼少期から親しんだラジオなどファウンド・オブジェクトで構成された作品で、ジョンソン曰く「私が用いる素材にはどれも実用的な用途があります。(中略)狙いは、すべての素材が『異種混交』して、私を著者とする新たな言語へとなることです。骨組みは、この異種混交のためのプラットフォーム」。自然なるものと人工物、大きな歴史と作家の個人史、アフリカ起源の伝統的なものと現代化されたものーーそれらがパズルのように組み合わされて浮かび上がるイメージは、ジョンソンの思う複雑な多様性をシンボライズしているようだ。

『ラシード・ジョンソン ― Plateaus』
会期:〜9月25日(日)
会場:エスパス ルイ・ヴィトン東京
住所:東京都渋谷区神宮前5-7-5 ルイ・ヴィトン表参道ビル7F
開廊時間:11:00〜19:00
休廊日:ルイ・ヴィトン 表参道店に準じる
入場料:無料
事前予約も可。詳細はこちら
電話:0120-00-1854
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『A Quiet Sun』 田口和奈展|銀座メゾンエルメス フォーラム

画像: (写真右)《エウリュディケーの眼 #39》 2021年 ゼラチン・シルバー・プリント、14.7x10.5cm (写真左)《Exercise in shape》の習作 2021年 IMAGES:COURTESY OF THE ARTIST

(写真右)《エウリュディケーの眼 #39》 2021年
ゼラチン・シルバー・プリント、14.7x10.5cm
(写真左)《Exercise in shape》の習作 2021年
IMAGES:COURTESY OF THE ARTIST

 たとえば、自ら制作した絵画や彫刻を多重露光で撮影したり、プリントした印画紙の上に油彩のドローイングを描き、再び撮影したり。田口和奈は、そういった重層的とも言えるモノクロームの作品を通じて、時間や空間といった形而上の存在を見出そうとする美術家だ。匿名のファウンドフォト(日常のなかに埋もれていた、誰が撮ったのかわからない写真)や雑誌といった既存のイメージを制作に応用しているのもその特徴である。

 銀座メゾンエルメス フォーラムで開かれている『A Quiet Sun』では、本展のために制作した作品群と、田口が収集してきたファウンドフォトを見せる。展示方法も面白い。ギャラリー空間に入る自然光や、展示用に立てた大きな白壁を生かし、印画紙をそのまま壁に入りつけたり、印画紙をくるっと丸めオブジェ的に置いたり。イメージであり物質である写真が空間にどう働きかけるか、写真という存在により空間をどう整えることができるのか。作家の写真に対する問題意識とみずみずしい感性が感じられる展覧会だ。

『A Quiet Sun』 田口和奈展
会期:~9月30日(金)
会場:銀座メゾンエルメス フォーラム
住所:東京都中央区銀座5-4-1 8/9F
開館時間:11:00~19:00
※入館は閉館時間の30分前まで。
休館日:8月17日(水)
※ギャラリーは基本、銀座店の営業に準じる。
料金:無料
電話:03-3569-3300
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『ジャン・プルーヴェ展 椅子から建築まで』|東京都現代美術館

画像: ジャン・プルーヴェ《組立式ウッドチェアCB 22》1947年 © GALERIE PATRICK SEGUIN © ADAGP, PARIS & JASPAR, TOKYO, 2022 C3892

ジャン・プルーヴェ《組立式ウッドチェアCB 22》1947年
© GALERIE PATRICK SEGUIN © ADAGP, PARIS & JASPAR, TOKYO, 2022 C3892

 20世紀の建築や工業デザインに大きな影響を与えた巨匠ジャン・プルーヴェ。本展は、プルーヴェが手がけたオリジナルの家具や建築物およそ120点を、図面やスケッチなどの資料とともに展示し、彼の仕事を振り返るものだ。

 プルーヴェは金属工芸家としてキャリアをスタート。1930年代からスチールなどの新たな素材に注目し、家具から建築へと創造の領域を拡げていった。政治・社会への関心も強く、第二次世界大戦中はレジスタンス運動に積極的に参加。またナンシー市長も務め、フランスの戦後復興計画の一環としてプレファブ住宅を複数考案するなど、時代や社会的な要請を的確に捉え、デザインに反映していった。

 会場には《「サントラル」テーブル》や《ライン照明》などの家具、なかでもプルーヴェにとって重要であった椅子のうち《「シテ」チェア》をはじめとした数々のモデルがまとめて並ぶ。解体・移築可能な建築物《「メトロポール」住宅(プロトタイプ)》の実物展示も見どころだ。20世紀という時代に、デザインと生産をトータルに捉え、多くの実験的な試みを実践したプルーヴェ。その構築的な想像力を作品から感じ取りたい。

『ジャン・プルーヴェ展 椅子から建築まで』
会期: 〜10月16日(日)
会場:東京都現代美術館
住所:東京都江東区三好4-1-1
開館時間:10:00~18:00(入場は閉館時間の30分前まで)
休館日:月曜(ただし9月19日、10月10日は開館)、9月20日、10月11日
入場料:一般 ¥2,000、大学・専門学校生・65 歳以上 ¥1,300、高校・中学生 ¥800、小学生以下無料
電話:050-5541-8600(ハローダイヤル)
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『名和晃平 生成する表皮』|十和田市現代美術館

画像: 名和晃平《Biomatrix (W)》 2022年 ミクストメディア PHOTOGRAPH BY KUNIYA OYAMADA

名和晃平《Biomatrix (W)》 2022年
ミクストメディア
PHOTOGRAPH BY KUNIYA OYAMADA

「セル(細胞・粒)で世界を認識する」という独自の概念を軸に、ガラスや液体などのさまざまな素材や技法を横断しながら、彫刻の新たなあり方を追求してきた美術家・名和晃平。青森県・十和田市現代美術館で始まった本展は、新作を含む名和の多彩な作品を展示し、その活動の遍歴を紹介するものだ。オブジェの表面を透明な球体で覆った名和の代表作「PixCell」シリーズも並ぶ。真珠のような輝きと高い粘度を持つシリコーンオイルの界面に気泡がグリッド状につぎつぎと沸き起こっていく《Biomatrix (W)》と、秒速1センチ程でゆっくりと移動する支持体の上を、粘度を調整した絵の具が雫のようにしたたり落ちる「White Code」シリーズの2種類の新作も見どころだ。

 なお10月1日からは、地域交流センターも会場に加わり、2箇所で展開。地域交流センターは、アートを活用した地域交流の拠点として9月にオープンする新施設で、設計は建築家・藤本壮介が担当。こちらでは、名和の版画や平面作品を展示する予定だ。

『名和晃平 生成する表皮』
会期:〜11月20日(日)
会場:十和田市現代美術館
住所:青森県十和田市西二番町10-9
開館時間:9:00~17:00(入場は閉館時間の30分前まで)
休館日:月曜(祝日の場合は開館、翌日火曜を休館)
入場料:一般 ¥1800、高校生以下無料
電話:0176-20-1127
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『池田亮司展』|弘前れんが倉庫美術館

画像: 池田亮司《data-verse 3》 2020年 撮影:浅野豪 ©︎RYOJI IKEDA

池田亮司《data-verse 3》
2020年 撮影:浅野豪 
©︎RYOJI IKEDA

 池田亮司は、ダムタイプのメンバーとしても知られる現代美術家、作曲家。いち早くテクノロジーを駆使し、映像や音によって鑑賞者の感覚を揺さぶるような没入型の作品を数多く発表してきた。青森県・弘前れんが倉庫美術館で開かれている『池田亮司展』は、彼の2009年以来となる国内美術館での大規模な個展であり、近年の池田の活動を新作・近作を通じて紹介するものだ。

 レーザーを使った近作《exp》、美術館の空間的特性を活かしたプロジェクション作品なども池田の多様な作品を鑑賞できるが、みどころのひとつは、2019年、第58回ヴェネチア・ビエンナーレで初公開され話題を呼んだ「date verse」シリーズ。これはCERN(欧州原子核研究機構)やNASAなどによる膨大なオープンデータを取り入れた映像・音響インスタレーションで、鑑賞者を原子核の内部から宇宙まで、ミクロとマクロの視点を行き交う壮大なイメージ世界へと誘うような作品。近年、科学的データを作品に応用し、世界のあらたな認識の方法を模索してきた池田の集大成のひとつともいえるアートワークだ。

『池田亮司展』
会期:〜 8月28日(日)
会場:弘前れんが倉庫美術館
住所:青森県弘前市吉野町2-1
開館時間:9:00〜17:00
休館日:火曜
入場料:一般 ¥1,300、学生 ¥1,000
電話:0172-32-8950
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『浅間国際フォトフェスティバル2022』|MMoP(モップ)ほか

画像: 「PHOTO MIYOTA」での展示風景

「PHOTO MIYOTA」での展示風景

 浅間国際フォトフェスティバルは、浅間山麓の地域を舞台に2018年にはじまったアートフォトの祭典。今年は御代田エリアの「PHOTO MIYOTA」、仮想空間での「PHOTO ALT」の2つのセクションを開催している。

「PHOTO MIYOTA」は、衣食住と写真を楽しめる複合施設「MMoP(モップ)」がメイン会場。展示作品は、ファッション写真の分野でも活躍するヴィヴィアン・サッセンの近作「Venus & Mercury」や、石内都が1980年代に撮影した「連夜の街」のカラー版、またウクライナ出身でアメリカ在住の写真家イェレナ・ヤムチュックの作品など。また、MMpP内に新しくできた「御代田写真美術館」では、グッチの特別展『NEW GENTLEMAN 新時代の紳士の肖像』展を開催。森山大道らが俳優の志尊淳ら、現代のジェントルマンを撮りおろしたポートレイトが並ぶ。

「PHOTO ALT」は、建築家の谷尻誠が空間設計を担当した「amana virtual museum」が会場。これは、メタバースのなかにつくられた仮想ミュージアムで、国内外で活躍するアーティストたちの作品を鑑賞できるとともに、解説を読んだり、作家のインタビュー動画も閲覧可能。写真展の新しいかたちが垣間見える。

『浅間国際フォトフェスティバル2022』
会期:~9月4日(日)

<PHOTO MIYOTA>
会場:MMoP(モップ)
住所:長野県北佐久郡御代田町馬瀬口1794-1
時間:10:00〜17:00
※屋内展示は最終入場16:30まで
休場日:水曜
料金:一部有料(詳細は公式サイトにて)
メール:info@asamaphotofes.jp
公式サイトはこちら

<PHOTO ALT>
会場:amana virtual museum
こちらから入場可能
料金:無料

『ICC アニュアル 2022 生命的なものたち』|NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]

画像: エレナ・ノックス《The Masters》2021年 図版提供:トーキョーアーツアンドスペース PHOTOGRAPH BY KENJI TAKAHASHI

エレナ・ノックス《The Masters》2021年
図版提供:トーキョーアーツアンドスペース
PHOTOGRAPH BY KENJI TAKAHASHI

 東京・新宿にあるICCは、新しいテクノロジーを駆使した芸術作品やインタラクティブな作品、いわばメディアアートをいち早く紹介してきた文化施設だ。「ICC アニュアル」は、今年リニューアルされた企画展。メディアテクノロジーの動向や環境、社会におけるテクノロジーのあり方、またそれに触発され更新される人間の意識のありようを展示作品から考察する。

 今回のテーマは「生命的なものたち」。たとえば、スマートホームに接続された「キャラクター召喚装置」に現れるAIキャラクターをモチーフにしたエレナ・ノックス《The Masters》。現実空間の箱庭に設置された「家」と呼ばれる小型ロボットが動き回り、その家々に生息するNFT(非代替性トークン)のデジタル人工生命体(各個体の情報はNFTに登録されており、売買することも可能)が“子孫繁栄”を行う菅野創+加藤明洋+綿貫岳海の《かぞくっち》も面白い(もはやロボットは家であり、NFTが生命の表象であるわけだ!)。ほか、タンパク質の構造や生命の自己組織化のプロセスをドローイングに取り入れる村山吾郎の新作、「同期現象」と呼ばれる自然現象を利用したnorのキネティックサインドインスタレーションなど多彩な作品が一堂に会する。

『ICC アニュアル 2022 生命的なものたち』
会期: 〜 2023年1月15日(日)
会場:NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー4F
開館時間:10:00~18:00(入場は閉館時間の30分前まで)
休館日:月曜(祝日の場合は開館し、翌日休館)、年末年始(12月26日〜2023年1月4日)
料金:一般 ¥500、大学生 ¥400、高校生以下無料
※事前予約推奨。オンラインチケットはこちらから
電話:0120-144199
公式サイトはこちら

『アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真』|東京都写真美術館

画像: (写真左)平井輝七《月の夢想》1938年 東京都写真美術館蔵 (写真右)久野久《海のショーウインドウ》1938 年 福岡市美術館蔵

(写真左)平井輝七《月の夢想》1938年 東京都写真美術館蔵
(写真右)久野久《海のショーウインドウ》1938 年 福岡市美術館蔵

 1930年代から40年代にかけて隆盛した日本の前衛写真。その後、太平洋戦争が本格化したため全盛期が短かったこと、またアマチュア写真家を主体にしたものであり写真史的に軽視されてきたことから、あまり大体的に研究・紹介されてこなかったムーブメントでもある。東京都写真美術館で開かれる『アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真』は、歴史の闇に埋もれてきた前衛写真の本質をつまびらかにする企画展だ。出展作品は約170点。シュルリアリスムや抽象芸術といった海外の美術運動との関連、また大阪、名古屋、福岡、東京など地域で起こった実験的な写真家グループの活動の詳細、画家や詩人などとともに拓かれていったアヴァンギャルドな精神性にも光をあてる。

 この十数年の間に「もの派」や「具体」といった日本の前衛芸術、前衛工芸の再評価が進み、また近年、欧州を中心に日本の気鋭の若手写真家が高い評価を得ている。「前衛」「ジャパニーズフォトグラフィー」といったトレンドを鑑みても、日本の「前衛写真」は今後さらにマーケットや批評のシーンも掘り下げて注目されるだろうテーマであり、その意味でも、いま見るべき価値のある展覧会と言える。

『アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真』
会期:〜8月21日(日)
会場:東京都写真美術館
住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
開館時間:10:00~18:00(木・金曜は20:00まで)
※入館は閉館時間の30分前まで
休館日:月曜(月曜が祝休日の場合は開館し、翌平日休館)
料金:一般 ¥700、大学・専門学校生 ¥560、高校・中学生・65歳以上 ¥350
電話:03(3280)0099
公式サイトはこちら

『これってさわれるのかな?ー彫刻に触れる展覧会ー』|神奈川県立近代美術館 鎌倉別館

画像: オーギュスト・ロダン《花子のマスク》 1908年(1974年鋳造) ブロンズ 神奈川県立近代美術館蔵 COURTESY OF THE MUSEUM OF MODERN ART, KAMAKURA & HAYAMA

オーギュスト・ロダン《花子のマスク》
1908年(1974年鋳造) ブロンズ 神奈川県立近代美術館蔵
COURTESY OF THE MUSEUM OF MODERN ART, KAMAKURA & HAYAMA

 作品にふれてみたいーー。美術館を訪れたとき、そのような衝動に駆られることはないだろうか。本展は、神奈川県立近代美術館のコレクションする24点の作品を、さわりながら鑑賞できるというユニークな試みだ。実際には作品保護や感染症対策の観点から、美術館が用意するグローブを着用することになるが、一部、彫刻家・北川太郎による素手で触れられる作品も会場に並ぶ。

 主な出展作品は、オーギュスト・ロダンのブロンズ彫刻《花子のマスク》や木彫のレリーフで人物のいる風景を表現した土方久功の《ゆうべのアンニューイ》、真鍮にクロームメッキを施した湯原和夫の《四つの等しい形と一つのキューブ》など。全体的なシルエットやボリューム感、彫りなどのディテール、金属や木、石など素材がもたらす質感や温度ーー。ふれてみることで、そういった彫刻芸術の魅力をよりリアルに発見できるだろう。

『これってさわれるのかな?ー彫刻に触れる展覧会ー』
会期:〜9月4日(日)
会場:神奈川県立近代美術館 鎌倉別館
住所:神奈川県鎌倉市雪ノ下2-8-1
開館時間:9:30〜17:00 ※入場は閉館時間の30分前まで
休館日:月曜
入場料:一般 ¥250、20歳未満・学生  ¥150、65歳以上・高校生  ¥100
電話:0467-22-5000
公式サイトはこちら

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