BY TERUNO TAIRA, PHOTOGRAPHS BY SHINSUKE SATO
資生堂、ポーラの国産2強が、シミ発生の要因を丁寧にひとつひとつ潰すアプローチで“点美白”を極める一方、外資系ブランドは最新遺伝子学の知見に基づき、エイジングによって低下する「肌機能のバックアップ」を図っている。シミ予防はもちろんだが、むしろ肌全体の透明感を高める“面美白”のアプローチがメインだ。
例えば、ランコムの「レネルジー M FS セラム」。シミといえばメラニンのできる表皮に目を向けがちだが、ランコムが着目したのはそのさらに奥深く、真皮にある線維芽細胞。肌の弾力をもたらすコラーゲンやエラスチンを生み出すこの線維芽細胞は、加齢や紫外線ダメージの影響で機能が低下すると、メラニンの生成量を増やす遺伝子が発現し、色素沈着を起こすのだという。
レネルジーの新しい美白美容液は、表皮細胞だけでなく真皮にも働きかけることで、シミやシワ、たるみまで全方位をこれ1本で対応する最新処方だ。 今や美白ケアは肌全体の質感を上げるエイジングケアの一環でもあるというのが、昨今のトレンド。複数の肌悩みを抱える大人には一石二鳥を狙えるうれしい1本だ。
ディオールの最新美白もランコム同様、遺伝子アプローチで攻めている。
エピジェネティクス=後成遺伝学という言葉を聞いたことがあるだろうか。環境要因によって遺伝子発現が変調することで、細胞にどんな変化が現れるかを研究する学問だ。同じ遺伝子を持った一卵性の双子でも、環境によって肌の質感が変わってくる。このように、遺伝子情報によって決まる肌の色自体は変えられないが、環境要因によってどの遺伝子が発現するかは細胞に大きな影響を及ぼす。この後天的な変化は持続するものの永遠に続くものではなく、改善できる点に救いがある。
ディオールが着目したのは、メラニン生成を活性化する遺伝子が発現する際のDNAの状態。シミのない正常な肌ではDNAの二重螺旋がきつく巻かれているのに対し、これに緩みが生じるとメラニン生成遺伝子が発現することを突き止めた。このDNAの緩みをタイトに巻き直すのが、「スノー エッセンス オブ ライト」に配合された発酵酵母エキスだ。後天的な遺伝子の発現がもたらすメラニン生成量の増加を抑えて肌本来の透明感を取り戻するという、従来のメラニンコントロールの枠を超えた新発想の美白なのだ。
今ある濃いシミを消したいなら点美白、エイジングケアも兼ねて肌全体のクオリティを上げるなら面美白を。もちろん両方を組み合わせて、早い効果を狙うのもよし。取材した研究者たちによれば、シミは薄い段階でケアすれば比較的簡単になくせるものだという。私自身の肌にも隠れメラニンらしきものがちらほら散見されるが、長年の美白ケアのおかげか、大きなシミはいまだ現れていない。地道に使えばきちんと結果が出せる、現代の美白ケアのレベルは間違いなく、格段に上がっているのだ。