一見ノーマル、よく見ると奇抜。そんな壁紙がジェイソン・ウーを筆頭に、米国のデザイナーやアーティストたちのあいだで評判だ。不思議な壁紙を手がけるふたり組「ワーク・アンド・シー」とは?

BY MERRELL HAMBLETON, PHOTOGRAPHS BY LINDA XIAO, TRANSLATED BY HIROMITSU KOISO

 ララ・アポニーとマイケル・ウッドコックが手がけるロサンゼルスの「WORK + SEA(ワーク・アンド・シー)」。彼らのデザインする壁紙は一見、おなじみの花柄やストライプ、ダマスク柄に見える。だが目を凝らせば、花や縞に沿って、カクテル・シュリンプやら目玉焼きやら宙に浮かぶ男などが並んでいるのに気づくだろう。「まず花や縞など伝統的なモチーフを使うと、人は受け入れてくれるものです」とアポニーは言う。「そうすると、奇抜な柄もOKになる」

画像: ロングアイランドのベルポートにある屋敷のために選んだパターンより。 「Busted(バスト)」(左)、 「Funky Stars(ファンキー・スターズ)」(右)

ロングアイランドのベルポートにある屋敷のために選んだパターンより。
「Busted(バスト)」(左)、
「Funky Stars(ファンキー・スターズ)」(右)

 ふたりはニューヨークの建築事務所「ラード・スタジオ」で知り合い、4年後、会社をともに立ち上げた。「シティ・アンド・ギルズ・オブ・ロンドン・アート・スクール」でアートを学んだアポニーは、ギリシャ神話から映画まであらゆるものの中にアイデアを見いだす。たいていの場合、彼女は油彩で柄をペイントする。その前に、ウッドコックが柄の要素をスキャンして並べ、レイアウトを組むのだが、ヤシの木とタバコ、猿と巨大な赤いポピーという具合に、異質なもの同士を合わせることが多い。ふたりの仕事はすぐにアーティストやファッションデザイナーの間で評判になり、2017年にはジェイソン・ウーから、猫とミラーボールと迷彩柄のパターンを、ウィメンズウェア用に依頼された。

画像: ロングアイランドのベルポートにある屋敷のために選んだパターンより。 「Totem Tunis(トーテム・チュニス)」(左)、 「Shape Shifters(シェイプ・シフターズ)」(右)

ロングアイランドのベルポートにある屋敷のために選んだパターンより。
「Totem Tunis(トーテム・チュニス)」(左)、
「Shape Shifters(シェイプ・シフターズ)」(右)

 建築業界で出会った者同士だけに、ふたりは壁紙の完成度のみならず、壁紙が使われる空間までも気にかける。昨秋は初めての大きなプロジェクトに挑んだ。ロングアイランドのベルポートのウォーターフロントにある、1860年代に建てられた広大な屋敷の16もの部屋に壁紙を貼ったのだ。屋敷のオーナーは彼らの友人にして変わり者の投資家だ。コスチュームドラマの舞台にもってこいのその家を、オーナーはウッドコックの言うところによると「ロマンティックに」アップデートしたがっていた。剝はげた天井ときしむ床板はその風情のままに残しつつ、けれども壁はデザイナーが自由にできることになったのだ。

画像: ロングアイランドのベルポートにある屋敷のために選んだパターンより。 「Monkeys of Ghazipur(ガーズィープルの猿)」(左)、 「The Hunt(ハント)」(右)

ロングアイランドのベルポートにある屋敷のために選んだパターンより。
「Monkeys of Ghazipur(ガーズィープルの猿)」(左)、
「The Hunt(ハント)」(右)

こうしてできたのが「ワーク・アンド・シー」のフル・コレクションのショーケースのような迷宮だ。中央のリビングには、積み重なったヤシの木とゾウが並ぶ深紅の壁紙を選んだ。サマー・リビングに隣接するカジュアルな部屋には、人魚や釣り人、手描きの波が一面に描かれた壁紙を。2階の寝室の一室には、アンリ・ルソーの絵を彷彿とさせる作風の壁紙「ハント」を用いた。かがんだトラが見たジャングルの光景を4つのパネルで表現したものだ。鬱うっ蒼そうとした草や葉が高さ2.4mの壁全体に広がり、滞在客は熱帯の島にでもいる気になるだろう。「摩訶不思議な世界へと誘いたいのです」とアポニーは言う。「吸い込まれてしまいそうでしょ」

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