ルールやスタイルに捉われない、素敵な生き方が息づくスタイリスト古牧ゆかりさんの部屋を数回に分けてレポートし、自分のいる場所を心地よい空気で満たすコツを伺う。第10回は、古牧さんの部屋を彩る椅子にフォーカス

BY EMI ARITA, PHOTOGRAPHS BY YUKARI KOMAKI

画像: PHOTOGRAPH BY MAKOTO NAKAGAWA

PHOTOGRAPH BY MAKOTO NAKAGAWA

 20代後半から3年間暮らしたパリや世界中を旅して集めてきたものと、素敵なものに囲まれて自分らしい住まいをつくり上げている古牧さん。置かれている家具はほとんどがヴィンテージもので、どれも経年変化による趣が感じられるものばかり。中でも「椅子が大好き」だと言い、パリ時代に蚤の市で見つけた椅子、名作と呼ばれるデザイナーズチェア、生命力あふれる無垢材のスツールなど、部屋にはたくさんの椅子が置かれている。

「もう置ける場所がないので、新しいものを買い足すことは諦めているのですが、以前は直感で“よさそう!”と感じるものに出合うとつい買ってしまい、どんどんと増えていきました。イームズのシェルチェアなど、納戸にしている部屋に眠っている椅子が、実はまだまだあるんです(笑)。よく部屋の家具を一新して全て変える人も居ると聞きますが、私はどんどんプラスして自分のスタイルを作っていくタイプ。ファッションはできるだけシンプルにマイナスしていくコーディネート、インテリアはどんどんプラスするコーディネートこそが、自分らしさにつながると考えています」
  今回は、プラスのコーディネートを楽しむうちに増えていったという、素敵な椅子たちを見せてもらった。

気ままな時間を過ごす、ラタン×アイアンチェア

画像: アイアンのベースに、曲線的なフォルムのラタンのシートを合わせた一人掛けの椅子。リラックスムード漂う、ピーコックチェアのような佇まい

アイアンのベースに、曲線的なフォルムのラタンのシートを合わせた一人掛けの椅子。リラックスムード漂う、ピーコックチェアのような佇まい

 パリ暮らし時代に出合った家具を今も大切に使っているという古牧さん。こちらのラタン×アイアンの一人掛けチェアも、パリの蚤の市で購入し、長年愛用してきた椅子のひとつだそう。

「60年代にフランスでつくられたヴィンテージの椅子で3脚購入しました。今は1脚だけをリビングに置いています。小さなクッションを敷いて腰掛け、読書をしたり、考え事をしたり...。気ままな時間を過ごす椅子です。あとポイントで黒を使うとコーディネートが引き締まるので、インテリアのアクセントにもぴったり。日本に帰国後、旅行でパリを訪れた際にも、蚤の市で偶然同じデザインの二人掛けを見つけて持ち帰ったので、このラタン×アイアンの椅子は計4脚持っています(笑)」

シンプルで美しい椅子が彩るダイニング

画像: 後脚から背もたれへと伸びるフレームの緩やかなカーブと、背もたれ中央の直線的なスティックとのコントラストが印象的なフランス製のヴィンテージチェア

後脚から背もたれへと伸びるフレームの緩やかなカーブと、背もたれ中央の直線的なスティックとのコントラストが印象的なフランス製のヴィンテージチェア

 ダイニングを囲むのは、経年変化による風合いも素敵なフランス製のヴィンテージチェアと、スタイリッシュなブラックのウィンザースタイルの椅子。どちらも飽きのこないシンプルなデザインでタイムレスな美しさを放つ。

「フランス製のヴィンテージチェアは、クリニャンクールの蚤の市で購入しました。パリの住まいではイームズスタイルの椅子を愛用していたのですが少し重くて...。この椅子は軽くて使い勝手がいいので、キッチンチェアにもぴったり!と思い迎え入れました。座り心地もいいので、今はダイニングチェアとして活躍してくれています」

画像: 伝統的なウィンザーチェアのスタイルに、フラットシートのすっきりとした直線美やブラック塗装仕上げとモダンなエッセンスを融合した椅子

伝統的なウィンザーチェアのスタイルに、フラットシートのすっきりとした直線美やブラック塗装仕上げとモダンなエッセンスを融合した椅子

「ブラックの椅子は、北欧のインテリアブランドDesign House Stockholm(デザインハウスストックホルム)のもので、渋谷にあったインテリアショップで2脚購入しました。以前はダイニングにプライウッド×白のスチールチェアを使っていたのですが、部屋が全体的にウッディなので、アイアンアイテムのように、締め色として黒を取り入れたくて選びました。シンプルでモダンなデザインもお気に入り。座り心地も快適です!」

存在感抜群のアルヴァ・アアルトの名作「スツール60」

画像: カラーや素材のバリエーションが豊富な「スツール60」

カラーや素材のバリエーションが豊富な「スツール60」

 たった一脚でも空間の印象をがらりと変えてしまう力が、名作と呼ばれる椅子にはある。古牧さんが愛用している名作は、20世紀を代表するフィンランドの巨匠、アルヴァ・アアルトが1933年にデザインした「スツール60」。

「かつて神宮前にあったインテリアショップQUICO(キコ)で購入しました。ホワイトカラーのヴィンテージで、使い込まれた傷も含めて程よいエイジング感が気に入っています。スツール1脚でも、名作には部屋のムードを作ってしまうほどの存在感があって、やっぱり素敵。好きなものとか、良質なものとか、“いいもの”を常に使い続けることは、心地よい暮らしにもつながると思っています」

再塗装した、ヴィンテージのハイスツール

画像: すっきりとしたフォルムのハイスツール

すっきりとしたフォルムのハイスツール

 イギリス製のヴィンテージハイスツールは、自身でブラウンカラーに再塗装し、ファッション撮影の際にも重宝しているというお気に入りの椅子。インテリアやその時の気分に合わせて、再塗装を楽しめるのも木製椅子ならではの楽しみ方かもしれない。

「友人から頂いたもので、以前空間内装のディレクションしていた子供服のお店に置いたらかわいいかも!と思い、ブラウンにオイルコーディングして飾っていました。そのお店の内装を変えるタイミングで家に持ち帰ったあとは、植物たちを飾る場所になっています。今はどんどん大きくなるモンステラの“モンちゃん”の特等席です」

無垢材ならではの生命力あふれる、ヒバのスツール

画像: 青森のヒバの特性を活かしたプロダクトを手掛けるブランド、Cul de Sac-JAPON(カルデサックジャポン)のヒバスツール

青森のヒバの特性を活かしたプロダクトを手掛けるブランド、Cul de Sac-JAPON(カルデサックジャポン)のヒバスツール

 愛らしい表情を見せる鳥のオブジェ“カラスくん”が佇むのは、青森のヒバを切り出したスツール。中目黒にあるCul de Sac-JAPON(カルデサックジャポン)で購入したものだそう。

「普段はソファの前に置いて、“カラスくん”をちょこんと座らせています。ヒバスツールのすごいところは、まるで呼吸しているかのように切った後もオイルを出し続けること。購入時にはオイル対策用に分厚いフェルトのような敷物を一緒につけてくれるのですが、それを敷いても床のラグにオイルが染みてしまいます。木の持つ生命力って本当にすごい!それにオイルからほのかに香る、ヒバの清々しい香りもとても心地いいんです。無垢材特有のサラサラとした感触も気持ちいいですよ」

古牧ゆかり
スタイリスト/ビジュアルディレクター。ファッション誌で活躍後、渡仏。パリに暮らす。帰国後『エル・ジャポン』のファッションエディターに。現在はフリーでファッション、インテリアのスタイリングや動画制作のビジュアルディレクションを手がける。本誌ファッション特集でも活躍中。
公式サイトはこちら

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