イギリス演劇界の第一線で活躍する演出家、サイモン・ゴドウィンにインタビュー。岡田将生、黒木 華ら豪華日本人キャストとの初タッグで挑む、清新なシェイクスピア劇に期待が集まる

BY YUKI SATO, PHOTOGRAPH BY SHINSUKE SATO

 今この瞬間、世界中でいったい幾つの『ハムレット』が上演されているだろうと考えると震えが来る、と演出家サイモン・ゴドウィンに告げると、「そうなんだよ! 今回日本で上演する日本人キャストの『ハムレット』の稽古をすればするほど、この戯曲のすさまじい人気と、俳優たちのより深いところにまで到達したいという熱意を感じる。しかも、稽古を積む度に彼らは解放され、より自由になって、フレキシビリティをも得ているんだ」と答えてくれた。

画像: サイモン・ゴドウィン(SIMON GODWIN) ロンドンを拠点に活動する演出家。ロイヤル・ナショナル・シアターのアソシエイトディレクターを務め、数々の舞台で高い評価を受ける。2019年8月からはアメリカのワシントンD.C.に拠点を移し、The Shakespeare Theatre Company の芸術監督に就任予定。英国のみならず、今世界で最も注目される演出家のひとり

サイモン・ゴドウィン(SIMON GODWIN)
ロンドンを拠点に活動する演出家。ロイヤル・ナショナル・シアターのアソシエイトディレクターを務め、数々の舞台で高い評価を受ける。2019年8月からはアメリカのワシントンD.C.に拠点を移し、The Shakespeare Theatre Company の芸術監督に就任予定。英国のみならず、今世界で最も注目される演出家のひとり

――『ハムレット』はもちろん、王子ハムレットが主人公の話ですが、ほんの短い時間しか登場しない墓掘り人夫など強烈なキャラクターが多い。その中で演出家の役割は?

「確かに、キャラクターがみんな濃いよね(笑)。物語自体はとてもクリアに書かれているのに、一人として“こう演じなければならない”というキャラクターはいない。僕にとってそれらの登場人物たちはまるでタロットカードの一枚一枚のようで、カードを開ける順番や開け方によって、話の見え方も変わってくる。つまり、キャラクターと言っても人間ではなくスピリット(精神)なんだと思う。だからこそ誕生以来400年、いろんな役者がいろんなやり方で、この芝居にアプローチしてきても今もって新鮮だし、新たな発見もある。もっともそういう超強烈なキャラクターが舞台上で自由に生きるために、僕がちゃんと方向を指し示すという責務があるわけだけどね」

―― 以前、ハムレットを演じた俳優たちに「一番心に残る台詞は?」と聞いたとき、みんなが即答えてくれたのが印象的でした。例えばダニエル・デイ=ルイスとレイフ・ファインズは同じで「雀一羽落ちるのも神の摂理」という台詞。ケネス・ブラナーは(その後に続く)「Let be.(あるがままであれ)」という答えでしたが……

「演出家としての僕も、レイフたちの言った“一羽の雀~”がこの芝居のキーポイントだと思う。つまり、それまでは“生きるべきか死ぬべきか”、“やるべきかやらざるべきか”と二つの選択肢の間で悶々としていたハムレットが、初めて、“あるがまま”という三つ目の選択肢に気づく。これは一見投げやりな道に思えるけれど、決してそうではなくて、ジタバタせずとも答えは自然に得られるという気づきにも近いんだ。だからこそ、この長大なストーリーの最後は『もう、何も言うことはない』というシンプルな言葉で終わっていて、物凄く深い余韻を残す」

―― たぶん理想の死に方ですね(笑)

「まさにね(笑)。正確にこの言葉を口にしなくても、心情的にはこうありたいと考えている人は多いだろうな」

―― あなたは『ハムレット』をダーク・ファンタジーととらえている、とコメントしていますが、実際に父王の亡霊が登場する以外の、どんなところをそのように思いますか?

「登場人物のみんながみんな、何かに取り憑かれているだろう? そのありようはかなり混乱していてすでに現実とは思えないくらいなのに、反面妙に人間臭い。僕はシェイクスピアの戯曲も、世につれ、その時代にあったアプローチをしていいと考えている。例えば、人種の問題とか性別の問題とか、戯曲が書かれた当時とは人々のとらえ方も違うからね」

―― 確かに。ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの芸術監督だったエイドリアン・ノーブルと演出家のデヴィッド・ルヴォーが、『じゃじゃ馬馴らし』と『ヴェニスの商人』を現代に演出するのは難しい、と語り合ったそうですね。

「オフィーリアやジュリエットのように、同世代の同性の友人がいない孤独感なども現代では考えられないけど、あの時代ならば不思議はなかったんだろうね。もっともピーター・ブルックがこれまで何度も『ハムレット』を演出して、それこそ(名優)ジョン・ギールグッドから(アフリカ系の)エイドリアン・レスターにまでハムレットを演じさせたように、今はより多くの自由がある。僕たちの『ハムレット』でも、男と女の役を入れ替えたりしているし。そうそう、僕は去年、女優のキャサリン・ハンター主演で『アテネのタイモン』を演出しているくらいだからね。キャサリンがタイトルロールの男役で(笑)」

―― 日本でも上演された『リア王』で、キャサリンが演じた老いた王役も見事でした。

「僕は今回、日本で仕事をするのは初めてだったけど、日本の人々がこんなにシェイクスピア劇に理解があって、こんなに深く求めてくれているとは知らなかった。日本にもロイヤル(皇室)があるから、デンマークのロイヤルのことは容易に感じとれる、というのも英国と同じだしね(笑)。ファンタジーの部分に現実が不思議と合致するという点も、本作をより興味深く見てもらえるところかもしれない。僕が演出した『アントニーとクレオパトラ』がライブビューイング(ナショナル・シアター・ライブ)される6月にも日本に来て、みんなの反応が見たいよ(笑)」

※ 文中の台詞は『ハムレット』(シェイクスピア作・野島秀勝訳/岩波文庫)による

画像: COURTESY OF BUNKAMURA

COURTESY OF BUNKAMURA

シアターコクーン・オンレパートリー2019
DISCOVER WORLD THEATRE vol.6「ハムレット」
作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:河合祥一郎
演出:サイモン・ゴドウィン
美術・衣装:スートラ・ギルモア
出演:岡田将生、黒木 華、青柳 翔、村上虹郎、福井貴一、山崎 一、松雪泰子ほか

<東京公演>
期間:2019年5月9日(木)~6月2日(日)
場所:Bunkamura シアターコクーン
料金:S席¥10,500、A席¥8,500、コクーンシート¥5,500
電話:TEL. 03(3477)3244(10:00~19:00)
公式サイト

<大阪公演>
期間:2019年6月7日~6月11日
場所:森ノ宮ピロティホール
料金:全席指定¥11,000
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TEL. 0570-200-888(10:00~18:00)

 

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