歌舞伎ワールドへようこそ。劇場の扉、時空の扉、そして心の扉を開いて、絢爛たる異世界へと誘う連載。第十四回は、 11月の歌舞伎座で“古典中の古典”の主役に奮闘する、中村獅童さんが登場

BY MARI SHIMIZU

 本公演での初めてのチャレンジは2003年1月の「新春浅草歌舞伎」。
「またお兄さんにめちゃくちゃ怒られて『どうしてダメなのかわかる?』と聞かれました。そして前回より少しでもうまくやろうという思いから、気持ちが疎かになっていたことに気づかされました」

 それ以来となる11月の舞台、勘三郎さんの教えを胸に、当時の書き込みのある台本を手にして臨む。獅童さんにとっては、「歌舞伎座で初めて勤めさせていただく古典の主役」。歌舞伎座で主役を演じた経験はあるが、それらはいずれも新作や明治以降に誕生した新歌舞伎でのことだった。
「父が役者を廃業していた自分は『歌舞伎座で主役は無理だろう』と言われたことがあるんです。19歳の時でした。そんなことを言われたら心折れますよね。でもあきらめなかった。あきらめたくなかったんです」

画像: © SHOCHIKU

© SHOCHIKU

 だから「古典中の古典である『義経千本桜』を歌舞伎座でさせていただけるのは自分にとって特別なこと」なのだという。夢はかなった。けれどこれはゴールではない。
「ひとつの役を一生かけて演じていけるのが歌舞伎。その時だからこそ表現できることというのがあるんです。そこで試されるのは技術だけでなく人間として何を感じ考えて来たかという日々の生き様。前回、浅草で勤めてから17年。その間には自分もいろいろなことを経験しました。これまで生きて来た中村獅童のすべてをぶつけてこの役を勤めたいと思います。そして一生かけて歌舞伎というものを追求していきます」

 獅童さんにはもう一つ、この公演にかける思いがあった。それは、「ニコニコネット超会議」のイベントとして2016年に誕生した「超歌舞伎」で、新たなチャレンジをともに続けてきた澤村國矢さんに出演してもらうこと。「超歌舞伎」とは、最新のデジタル技術によって初音ミクを始めとするボーカロイドと生身の俳優の演技を融合させた新たな歌舞伎のことである。
「澤村藤十郎さん門下のお弟子さんである國矢さんはとても勉強熱心で実力のある役者さん。『超歌舞伎』で敵役を演じてもらったところ、それまで歌舞伎なんて見たこともなかった若い世代の心にヒットしたんです」

画像: ニコニコネット超歌舞伎 2020夏 超歌舞伎『夏祭版 今昔饗宴千本桜』 © SHOCHIKU

ニコニコネット超歌舞伎 2020夏 超歌舞伎『夏祭版 今昔饗宴千本桜』
© SHOCHIKU

 会場となる幕張メッセのイベントホールはいつもライブ会場さながらの盛り上がり。コロナ禍にある今年は無観客上演で『夏祭版 今昔饗宴千本桜』を無料生配信したところ、23万5,000人が視聴したという。その舞台は國矢さんと、獅童さん門下の中村獅一さんをこれまでになくフィーチャーした内容だった。
「どんな状況であっても夢や希望を持てるということが大切。あきらめずに一所懸命やっていれば、いつかそれは叶うと信じられること。それを示すことができたらと思うんです」

 上演中の『義経千本桜』で國矢さんが演じているのは義経の家臣である亀井六郎だ。歌舞伎の作法に則った確かな技術と溌溂とした演技で、様式美あふれる舞台を力強く支えている。
 かつて勘三郎さんがそうであったように、真摯に芸と向き合う者に目を配り歌舞伎の活性化と発展を願う獅童さん。歌舞伎という芸能にはこうしたところにも先人の魂が息づいているのだ。

歌舞伎座『吉例顔見世大歌舞伎』
第一部『蜘蛛の絲宿直噺(くものいとおよづめばなし)』
第二部『新古演劇十種の内 身替座禅(みがわりざぜん)』
第三部『一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり) 奥殿』
第四部『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら) 川連法眼館』

会期:2020年11月1日(日)~26日(木)
休演日:11月6日(金)、18日(水)
会場:歌舞伎座
住所:東京都中央区銀座4-12-15
料金:1等席¥8,000、2等席¥5,000、3階席¥3,000、1階 桟敷席¥8,000
※4階幕見席の販売はなし
公式サイト
<チケットの購入は下記から>
電話: 0570-000-489(チケットホン松竹)
チケットWEB松竹

※ 掲載商品の価格は、特に記載がないかぎり、「税込価格」で表示しています。ただし、2021年3月18日以前に公開した記事については「本体価格(税抜)」での表示となり、 掲載価格には消費税が含まれておりませんのでご注意ください。

 

This article is a sponsored article by
''.