歌舞伎ワールドへようこそ。劇場の扉、時空の扉、そして心の扉を開いて、絢爛たる異世界へと誘う連載。第十六回は、祖父の追善公演を兄弟で担う、中村勘九郎さん、中村七之助さんの思いを聞いた

BY MARI SHIMIZU

 今回はその祖父、十七世中村勘三郎三十三回忌追善狂言と銘打っての上演である。もうひとつの追善狂言『奥州安達原 袖萩祭文(おうしゅうあだちがはら そではぎさいもん)』では、七之助さんと長三郎さんが母娘を演じ勘九郎さんも顔を揃える。七之助さんが演じる袖萩は親に背いて浪人と駆け落ちした結果、落ちぶれ果て盲目となった女性。その母に献身的に尽くすのが、長三郎さん演じる幼いお君だ。
「お君はいろいろな意味で難しい役。出ずっぱりでもあり、7歳の長三郎にはたいへんだと思いますが、ふたりで一緒に乗り切っていこうと話しています。(叔父と甥として身近に接している)普段の関係性にも通じる、深い深い愛でつながった母子の情がお客様に伝わるよう、一所懸命勤めたいと思います」

画像: 『奥州安達原 袖萩祭文』袖萩=中村七之助、お君=中村長三郎 PHOTOGRAPH BY KISHIN SHINOYAMA

『奥州安達原 袖萩祭文』袖萩=中村七之助、お君=中村長三郎
PHOTOGRAPH BY KISHIN SHINOYAMA

 生前の勘三郎さんが、勘九郎さんと七之助さんにことあるごとに語っていた話がある。それは父の十七世から「歌舞伎座で追善(公演)ができる役者になっておくれ」と何度も念を押され続けたというエピソード。「それこそ100回以上聞かされて来ました」と、勘九郎さん。七之助さんがそれに頷き続ける。
「父は遠回しに『お前たちもそうならなくちゃいけないよ』と言っていたのだと思います。祖父自身が、お客様にいつまでも思い続けていただけるいい役者でなければ、追善は成り立たちません。でもそれだけではできない。追善する側の父もまた、いい役者でなければ無理なんです。先代の素晴らしい舞台が目に焼きついているからそれでいい。あなたでは見たくないとお客様に思われてしまったら終わりですから」

画像: 中村七之助 Ⓒ SHOCHIKU

中村七之助
Ⓒ SHOCHIKU

 勘三郎さんは父・十七世の二十三回忌までその思いに応え、世を去った。二十七回忌はその勘三郎さん自身の三回忌と重なり、そこからは勘九郎さんと七之助さんに引き継がれた。十七世が没した時、勘九郎さん6歳、七之助さんは4歳だった。だから同じ俳優目線での記憶はない。

画像: 中村勘九郎 Ⓒ SHOCHIKU

中村勘九郎
Ⓒ SHOCHIKU

「僕たちは祖父を愛してくださったお客様の温かさと、祖父がどんな人物でその舞台がどうであったかを語ってくださる先輩方に支えられ、何度もの追善を通して祖父という役者の存在を身近に感じることができました。それによって祖父は僕たちの中で生き続け、ごく自然に祖父のような役者になりたいと思うようになりました。今回の追善では祖父はおろか、父ですら生の舞台をご存知ないお客様もいらっしゃると思います。その逆で四代にわたってご覧くださっている方もいらっしゃいます。いろいろなお客様が混ざり合ってひとつになれるのが追善という舞台。そして役者もお客様もそこからまた未来へとつながっていく。今、強く思うのはかつて当たり前だった満席の劇場の光景を伝説にしてはいけないということ。その日がまた必ずやってくることを信じて、僕たちはつなげていかなければいけないんです」

 歌舞伎の未来に視線をすえて、勘九郎さんがそう締めくくってくれた。

二月大歌舞伎
第一部 本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)十種香
    泥棒と若殿(どろぼうとわかとの)
第二部 於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)
     土手のお六 鬼門の喜兵衛    
    神田祭(かんだまつり)
第三部 奥州安達原(おうしゅうあだちがはら)袖萩祭文
    連獅子(れんじし)

上演期間:2021年2月2日(火)~27日(土)
上演時間:
第一部 10:30~
第二部 14:15~
第三部 17:30~
休演日:2月8日(月)、18日(木)
会場:歌舞伎座
住所:東京都中央区銀座4-12-15
料金:1等席¥15,000、2等席¥11,000、3階A席¥5,000、3階B席¥3,000、1階 桟敷席¥16,000
※4階幕見席の販売はなし
公式サイト
<チケットの購入は下記から>
電話: 0570-000-489(チケットホン松竹)
チケットWEB松竹

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