日本における韓流ブームの立役者で韓流エンタメのスペシャリストである田代親世さんが、韓国ドラマの魅力をさまざまな切り口でご紹介。今回は、家族の話が多い韓国ドラマの中でも、ホームドラマとは違い、家族内に疑惑が浮上するサスペンスドラマを3本セレクト!

TEXT BY CHIKAYO TASHIRO

天才プロファイラーが娘への疑念に揺れる
『こんなに親密な裏切り者』

 名優ハン・ソッキュ主演の心理サスペンスです。人の嘘を見抜くことに関しては天才的な国内最高のプロファイラーが、ある殺人事件を捜査していくうちに、「自分の娘が犯人かもしれない」という疑念に取り憑かれてしまう物語です。

画像: 主演のハン・ソッキュ(左)と娘役のチェ・ウォンビン(右) ©2024 MBC

主演のハン・ソッキュ(左)と娘役のチェ・ウォンビン(右) ©2024 MBC

 このドラマの見どころにしてキーワードになっているのが「疑心」。「血を分けた我が子だからこそ信じたいけれど、疑わざるを得ない」という状況に置かれた親子関係の複雑な心理を克明に表現し、疑ってしまう心が一つの家族を崩壊させていくさまが緻密に描かれていきます。ハン・ソッキュ演じる「壊れていく父親」の、娘とうまくコミュニケーションできないもどかしさ、疑いに揺れてしまう震える視線、苦しい心情から絞り出すような吐息。彼が娘を疑う自分に絶望し、プロファイラーとしての理性が崩壊していく過程が、見ていて辛くなるほどお見事。そして、娘を演じた新人チェ・ウォンビンが本当に素晴らしいんです。謎めいていて、感情が読めない無機質な瞳で父親を翻弄していく姿は、まさに新スターの誕生を予感させます。いやがおうにもこの二人のあいだの緊張感に引き込まれて、一筋縄ではいかないストーリー展開にはまること必至です。

画像: 主演のハン・ソッキュ ©2024 MBC

主演のハン・ソッキュ ©2024 MBC

 家族だからといって理解し合えるわけじゃない。家族という名の迷宮にはまり込んでしまった彼らはどうすればよかったのか。極限の親子の心理戦を描いたこのドラマは、静かな部屋でじっくりと見ていただきたい大人のための極上ミステリーです。

■CS放送 衛星劇場にて2/12より放送開始

心理カウンセラーの嫁と推理作家の姑がバディに
『我が家~嘘のかけら~』

 家族の中でも嫁と姑が最強のバディーを組むという、ひねりの効いたヒューマンミステリーです。主人公は、名声を得ている家庭心理カウンセラーで、キャリアも家庭のことも完璧な日常を送っている女性と、そんなできすぎの嫁が気に入らない推理小説家でもある姑。この二人の間には上流階級特有の、優雅ながらもどこかぴりついた緊張感が漂っていました。しかし、一見幸せに包まれたこの一家を不幸が襲ったことをきっかけに、家族のとんでもない秘密が次々に明らかになっていき、仲がいいとはいえなかった嫁と姑が、家族を守るために協力せざるを得なくなっていきます。

画像: 家庭心理カウンセラー役のキム・ヒソン © 2024.Rednine Pictures.Co., Ltd. All rights reserved.

家庭心理カウンセラー役のキム・ヒソン © 2024.Rednine Pictures.Co., Ltd. All rights reserved.

 このドラマはその過程が面白くて、嫁は、家庭心理カウンセラーという職業を生かして、犯人の心の動きや隠された本音を読み解いていき、一方、姑のほうは、推理作家ならではの推察力を使って論理的に事件の謎を解き明かしていきます。「感情」で読み解く嫁と「論理」で攻める姑。反発しあいながらもそれぞれ補完し合いながら、結果的に戦友のような絆が芽生えて犯人を突き止めていくようになるんですね。

画像: 推理作家の義母役イ・ヘヨン © 2024.Rednine Pictures.Co., Ltd. All rights reserved.

推理作家の義母役イ・ヘヨン © 2024.Rednine Pictures.Co., Ltd. All rights reserved.

 いったい誰が、何のために罠を仕掛けたのか、家族それぞれの「嘘」や「秘密」が物語を複雑にし、最後まで誰が味方で誰が敵なのか目が離せません。そうした謎解きの面白さとともに、家族の円満とは何なのか、家族の再生について考えさせられるドラマになっています。

■Prime Videoのサブスクリプション「Channel K」にて配信中

夫の過去を知っても妻は信じ切れる⁉
『悪の花』

 妻と子供を溺愛し、裕福な親に恵まれている男が、本当は身分を入れ替えていて、殺人犯を父に持ち、自身も反社会性人格障害を抱え、殺人の容疑を持たれている人物だった…というサスペンスドラマ。ですが、その実、とてつもなく深い夫婦の愛が描かれた作品です。

画像: 主演のイ・ジュンギ(中央)とムン・チェウォン(右) © STUDIO DRAGON CORPORATION

主演のイ・ジュンギ(中央)とムン・チェウォン(右) © STUDIO DRAGON CORPORATION

 この男の妻は刑事で、男の過去を知らずに結婚したのですが、あることをきっかけに自分の夫が連続殺人犯なんじゃないかと疑惑を持ってしまいます。妻のほうは、愛に包まれた完璧な家族だと信じて疑っていなかったのに、夫の過去を知って夫を信じ切れるのかという展開に。一方、夫のほうは、「自分には感情がないので、愛なんてわからない」と思い込んで、作り笑いと偽のやさしさで妻をだまして生きてきたつもりなのですが、身バレしそうで追い詰められた状況でも、彼女に危険が迫れば体が反射的に動いて助けてしまうのです。根っこの部分では愛が溢れているのに、それを自分で認められない不器用さが何とも不憫でたまらなく、男を演じたイ・ジュンギの抑制の効いた演技の美学が光っています。

画像: 主演のイ・ジュンギ(左)とムン・チェウォン(右) © STUDIO DRAGON CORPORATION

主演のイ・ジュンギ(左)とムン・チェウォン(右) © STUDIO DRAGON CORPORATION

 つまり、このドラマは、「犯人は誰か?」を探るだけの作品ではなく、「愛を知らないと思い込んでいた男が、自分の中の愛に気づいていく過程」を丁寧に丁寧に描いた物語なわけです。それを象徴するように、一連の事件は一応15話で解決しますが、最終回は男の自分探し的な話になります。愛によって救われ、人は変わっていけるというテーマが最後の1話に集約されていて、一人の男性が妻の愛で自分自身を取り戻し、再生していく物語として完璧に描き切っていることに拍手です。

■U-NEXTにて配信中

田代親世 韓流ナビゲーター 
韓流解説、韓流イベント司会の第一人者。公式サイト「田代親世の韓国エンタメナビゲート」やYoutube「ちかちゃんねる☆韓流本舗」「韓ドラ・マスター親世と尚子の感想語り」などで韓流情報を発信しているほか、会員制のコミュニティ【韓流ライフナビ】を主宰。ツアーやイベントを企画・開催している。


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