BY REIKO KUBO
ティモシー・シャラメが魅せる卓球界の野望でアカデミー賞9部門ノミネート『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』

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1952年のニューヨーク。叔父が営む靴屋で働くマーティ・マウザー(ティモシー・シャラメ)の夢は、卓球人気の低いアメリカで卓球世界チャンピオンに輝き、名誉と金を掴むこと。そのためなら口八丁手八丁、自尊心を武器に親類縁者から卓球協会の重鎮や返り咲きを図る女優ケイ(グウィネス・パルトロウ)まで利用してゴーイング・マイウェイ。ところがイギリスでの卓球世界選手権の決勝戦で、ダークホースの日本人選手コト・エンドウ(川口功人)に惨敗、マーティは次回世界選手権の地、東京でのリベンジを誓うが……。

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次から次にスラップスティック・コメディさながらの詐欺騒動の連続。自己愛のみで突っ走るマーティは感情移入を阻むクズっぷり。なれど7年間練習に打ち込んだという卓球の腕前を披露しながら、ペテン師&色事師として輝くティモシー・シャラメの無双ぶりは天晴れ。第98回アカデミー賞の作品賞、監督賞、主演男優賞を含む9部門にノミネートされている本作は、弟ベニーとともに『アンカット・ダイヤモンド』等で熱烈ファンを生み出してきたジョシュ・サフディの単独監督作。舞台は1950年代だが、嘘つきマーティの内面を歌うかのようなアルファヴィルの「フォーエバー・ヤング」をはじめ、ティアーズ・フォー・フィアーズやニューオーダーといった80年代のニューウェイブメドレーが、ハイテンションなドラマを楽しく盛り上げながら彩る。
映画『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』本予告|3/13全国ロードショー|ムビチケ発売中
youtu.be『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』
3月13日(金)TOHOシネマズ 日比谷他全国ロードショー
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キリアン・マーフィー主演、修道院の闇に向き合う男の葛藤を描く『決断するとき』

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アイルランド出身俳優のキリアン・マーフィーが原作「ほんのささやかなこと」に惚れ込み、出演映画『オッペンハイマー』の撮影中、マット・デイモンに映画化をもちかけ、マーフィー、デイモン、ベン・アフレックの3人がプロデューサーに名を連ねた『決断するとき』。舞台は1985年、アイルランドの田舎町。主人公は石炭を商いながら、妻と5人の娘たちと慎ましく暮らすビル(キリアン・マーフィー)。クリスマスが近づくある日、ビルは納品に行った修道院で監禁されたサラという名の少女と出会い、逃してくれと懇願される。蘇るシングルマザーの母と過ごした過去の記憶。押し黙るビルに対し、妻は「地元の実権を握る修道院に楯突けば一家の未來はない」と夫に釘を刺す。

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キリスト教への抗議活動でも知られたミュージシャン、故シニード・オコナーが収監されたことを告白していたマグダレン洗濯所。19世紀からなんと20世紀後半まで、アイルランドのカトリック教会運営の収容施設では、婚外妊娠したり、周囲から素行不良とみなされた女性たちが保護や更生の名の下に強制労働を強いられ、施設内で生まれた赤ん坊は密かに売りさばかれた。2002年に『マイネーム・イズ・ジョー』の主演ピーター・ミュランが、自らの監督作『マグダレンの祈り』(ヴェネチア国際映画祭の金獅子賞受賞)でこの教会による人権侵害を告発。本作では、ミュランと同じケン・ローチ門下のキリアン・マーフィーが、サラのために、すなわち自分自身を生かすためにどうすべきかと煩悶する男の心の彷徨を抑制の演技で見せる。ビルの妻役には『マグダレンの祈り』で未婚の母として収監される側を演じたアイリーン・ウォルシュ。町の実権を握る修道院長を演じたエミリー・ワトソンがベルリン国際映画祭最優秀助演賞を受賞。
映画『決断するとき』予告編 | 2026.3.20(金)より全国順次公開
youtu.be『決断するとき』
3月20日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開
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ダルデンヌ兄弟が若き母たちの歩みを描きカンヌ脚本賞を受賞『そして彼女たちは』

ⓒLes Films du Fleuve - Archipel 35 - The Reunion - France 2 Cinéma - Be Tv & Orange - Proximus - RTBF (Télévision belge) / PhotoⓒChristine Plenus
『ロゼッタ』と『ある子供』でカンヌ国際映画祭パルムドール賞に二度輝いたベルギーの巨匠ダルデンヌ兄弟(ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ)。その最新作は、彼ら初の群像劇であり、昨年の同映画祭脚本賞受賞作だ。自分を養子に出した実母を追い求めるジェシカ。少年院の前で幼な子の父親を待つペルラ。子どもと自身の将来のために養子に出すことを望むアリアンヌ。薬物中毒だった過去の不安が拭えないジュリー。娘と二人で施設を卒業してゆくナイマ。5人の若い母親は、リエージュ郊外にある母子支援センターで共同生活を送っている。

ⓒLes Films du Fleuve - Archipel 35 - The Reunion - France 2 Cinéma - Be Tv & Orange - Proximus - RTBF (Télévision belge) / PhotoⓒChristine Plenus
ダルデンヌ兄弟は、これまで社会の片隅で震えるか弱き存在をフレームの中心に据え、背後から寄り添うようにカメラで追い、主人公に希望の光を手繰り寄せてきた。本作では大きな船のような母子支援センターを舞台に、家庭内暴力や貧困、母親との関係不良、薬物依存など、それぞれ異なる背景を抱えた若い母親たちが、幼い命への責任に戸惑いながら、孤独に震える姿を描く。やがて彼女たちは、センター長をはじめ看護師、ケースワーカー、心理カウンセラーらスタッフに辛抱強く寄り添われ、少しずつ成長してゆく。ある者は胸に仕舞いこんだ想いを吐き出し、ある者は養子に出す幼子への手紙をしたため、それぞれが未来に向けた一歩を自ら選び取っていく。
ラストに流れるトルコ行進曲は、母船を離れ、小さなボートで新しい人生に漕ぎ出す母子たちの勇気を讃えるダルデンヌ兄弟からのエールであり、映画を通して彼女たちに出会えた我々観客への微笑み返しのように胸に染み込んでいく。
【本予告】映画『そして彼女たちは』予告編(ナレーション:有村架純)/ダルデンヌ兄弟監督最新作
youtu.be『そして彼女たちは』
3月27日(金)より、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
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