日本の海が育む真珠に詩的な感動を見出した、TASAKIの新クリエイティブ ディレクター プラバル・グルンの見る夢とは?

BY HIROKO NARUSE, PHOTOGRAPH BY MASANORI AKAO(STILL), ARTWORK BY AYAME KIKUCHI

「今とてもワクワクしているんだ! いつになくね」とプラバル・グルンは語り始めた。ファッションに興味のある方なら、彼の名を耳にしたことがあるだろう。シンガポールに生まれ、ネパールのカトマンズで育った彼は、服の絵でノートを埋め尽くすような子どもだった。やがてニューヨークのパーソンズ美術大学でデザインを学び、著名なファッションハウスでキャリアを積んだのち、自身のブランドを立ち上げた。現在では、ニューヨークを代表するファッションデザイナーのひとりとして知られている。その彼が、2017年秋に日本のジュエラーTASAKIのクリエイティブディレクターに就任。2018年春夏ニューヨーク・コレクションで、初のハイジュエリー・コレクション“TASAKI Atelier”を、新作の服とともにランウェイ方式で披露した。

画像: TASAKIの新クリエイティブ ディレクター、プラバル・グルン COURTESY OF TASAKI

TASAKIの新クリエイティブ ディレクター、プラバル・グルン
COURTESY OF TASAKI

「就任する前に、僕は長崎の養殖場と神戸のアトリエを訪ねて、真珠の誕生からジュエリーになるまでの全工程を見てきた。素材から製品まで、すべてを自社で手がけるTASAKIの仕事は、クチュールハウスの服作りに通じる点が多い。この体験をきっかけに、真珠に対するイメージが明確になったんだ」とグルン。初めて知る真珠の全貌、なかでも、ふたつの“発見”に強烈な印象を抱いた。
ひとつは、かつて日本に存在した、真珠採りの女性たち。「美を求めて、女性が人魚のように海に潜っていく。海底から見いだされる真珠は、なんとポエティックで感動的なんだろう! 彼女たちはまるで夢のように、現実と超現実の間を行き来している」と。もうひとつ、彼を驚嘆させたのは、TASAKIの職人たちの技と物づくりへの思いだ。「真珠の核入れをする人やダイヤモンドをカットする人など、現場でさまざまな職人たちと語りあった。全員が自身の仕事にとても誇りを持っていることに感動し、TASAKIのへリテージが彼らのアイデンティティだと気づいたんだ。そして彼らが生み出すストーリーを前面に打ち出していくことが僕の責任だ、とね」。貝を開けた瞬間の、真珠が放つ鮮烈なパワーそのものもグルンの感性を刺激し、それを主役に据えたジュエリーのデザインに自由な発想をもたらした。“TASAKI Atelier”に対するグルン独自の視点は、こうして一歩ずつ定まっていった。

画像1: 真珠がつなぐ、ふたつの夢

(写真上より時計まわり)
真珠を育む入り江に、さざ波が寄せる。「コーヴ」イヤリング
<K18WG、ダイヤモンド、アコヤ真珠>¥6,400,000
真珠層が放つ多面的な輝きを表現。「ナクレアス」ハンドカフ(右手用)
<K18SAKURA GOLD、K18WG、ダイヤモンド、南洋真珠白蝶、アコヤ真珠>¥7,800,000
絡み合うロープに美の着想を得て。「ナクレアス」リング(ダブルフィンガー)
<K18WG、ダイヤモンド、イエローサファイア、アコヤ真珠>¥2,000,000
青い海の中で、オーロラのように煌めく光をイメージ。「オーロラ」リング
<K18WG、ダイヤモンド、ブルーサファイア、南洋真珠白蝶、アコヤ真珠>¥1,400,000
すべて TASAKI(TASAKI Atelier)

 彼のジュエリーのデザインは、服と同様、通常とは着眼点を変えることから生まれる。「養殖場を訪れたとき、桟橋に置き忘れられたロープが目にとまった。ただの使い古されたロープなんだけど、そのまま古びて朽ちていくものに美を感じて、ジュエリーのデザインに採り入れたんだ。意外な対象に美を見いだすのは、日本の侘び寂びにも通じるでしょう?」と彼はほほえみながら語る。「ひとりの女性を見た瞬間、ジュエリーは服よりもっとさりげなく、しかし直観的に人となりを伝え、そこから会話が始まるのだと思う。だから、デザインを通して女性の美を追求してきた僕にとって、ジュエリーを創り出すことは大きな夢なんだ」。

ジュエリーの制作プロセスは、彼とデザインチームとのキャッチボールで進められる。彼が描いた200点以上のイメージデッサンから、話し合いによって選ばれたものが、デザインチームを経由して職人の手に委ねられた。その中で最も工程が難しかったのは、ハンドカフのかつてない立体的なフォルム。試行錯誤の結果、でき上がりは、「すべてが想像以上」とグルンをうならせたほど完璧だったという。

画像: (写真左)「コーヴ」イヤリングの素材違いの制作過程。入り江を思わせるモチーフの曲線に合わせて、パールのフリンジを手で留めつける。動きにつれて、さらさらと揺れるように (写真右)「オーロラ」のブレスレットに、ダイヤモンドをセッティング。煌めく光の軌跡を表現した、ゴールドのラインの曲面へのセッティングは、熟練職人のテクニックなしには実現できない COURTESY OF TASAKI

(写真左)「コーヴ」イヤリングの素材違いの制作過程。入り江を思わせるモチーフの曲線に合わせて、パールのフリンジを手で留めつける。動きにつれて、さらさらと揺れるように

(写真右)「オーロラ」のブレスレットに、ダイヤモンドをセッティング。煌めく光の軌跡を表現した、ゴールドのラインの曲面へのセッティングは、熟練職人のテクニックなしには実現できない
COURTESY OF TASAKI

 グルンのミューズは、年齢に関係なく若々しいマインドを持ち、パワフルに活躍する女性。彼女たちを念頭において、従来の常識に縛られないジュエリーを提案したいと言う。「これまでのハイジュエリーは、イブニングドレスやカクテルドレスに合わせるイメージが強かった。その決まりを崩してもっと多様な可能性を見せたくて、コレクションでは、たとえばジャケットとショーツの組み合わせやカジュアルなデイドレス、水着などに合わせてみたんだ」。同時に、もうひとつの狙いがあった。「若い世代にもファンを増やしたい。だから、モデルたちの素のリアクションが見たかった。全員が素敵! と喜んでつけてくれたよ。ただ値段を聞いてびっくりしていたけれどね」とグルンは笑いながら打ち明ける。

 初コレクションをデザインするにあたり、彼は「女性の視点によるシュルレアリスム」のスパイスをきかせた。「ロンドンで見た、女性アーティストたちによるシュルレアリスムの展覧会に触発されたんだ。これまで僕は、服のデザインでもフェミニズムを表現してきたのだけれど、今回は日常と非日常の間をたゆたう現代女性の心をのぞき込むような気分を、ハイジュエリーに込めたかった」と語る。

TASAKIのクラフツマンシップと、女性の気持ちに寄り添うグルンの視点。そこから生み出される独創的なデザインが、ジュエリーとファッションという、女性の、そして彼自身のふたつの夢をつなぐ。「人生に対して、またファッションに対して情熱を持ち続けるエキサイティングな女性たちは、世代を超えて真珠のパワーに共感してくれるはずです」とグルン。彼が光をあてる真珠の新しい可能性に、世界中の女性たちは注目せずにいられないだろう。

問い合わせ先
TASAKI
フリーダイヤル: 0120-111-446
公式サイト

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