BY HIROKO NARUSE
私自身に関していえば、時計を着けている時間が長いため、選ぶ際には軽い着け心地を何よりも優先している。どんなに素敵な時計でも、重く感じるものはNG。またシンプルで、コーディネートしやすいデザインがマストだ。知り合いのキャリア女性は、ステイタスを求めてハイスペックな高級時計を購入。しかし「着けていても気を使うし、結局出番が少なくなってしまう」のが悩み。時間に追われる生活では、機械式時計を優雅に操作する余裕もないのが現実だ。さらに、時計が高額なものと安価なものに二極化した昨今、“ちょうど良い”時計が見つからない、という声も多い。「現実的な価格で、大人が満足できるクオリティを備えたモデルが少ない」のだ。過剰な機能や華美な装飾よりも、安心して毎日使いたくなるリアリティを優先したい、というのが彼女たちの正直な気持ちだが、そうしたデイリーウォッチを見つけることこそ、実はなかなか難しいのだ。
レディスウォッチを発表する側と使う側の、こうした微妙な温度差に気づいてから、私の心の隅にはいつもこの“女性が毎日使いたくなる時計”問題がひっかかっていた。しかしようやく昨年末、その答えのひとつではないかと思えるモデルに出会うことができた。それは世界に先駆けてアメリカと日本で発売された、オメガの新作レディスウォッチ「トレゾア」。フランス語で「宝物」を意味する。
このコレクションで特に注目したいのは、すべてのモデルがクォーツムーブメントを備えていること。薄くて精巧なムーブメントから生まれる、軽快な着け心地と使いやすさは、まさに現代の女性の気持ちに寄り添うものだ。また36mm径と39mm径の2種類からなる全9モデルは、単なるサイズ違いではなく、すべて異なる素材と色による、独自の表情を持つ。それゆえ9型の中から、自分にいちばんフィットするモデルを探してみたくなる。腕にのせてみると、軽さが心地よい。一日中着けていても、気にならない重さだ。さらに、40万円台から90万円台までという価格設定にも、女性のニーズに本気で向き合う姿勢が感じられる。
「トレゾア」の名称は、1949年にオメガから誕生したスリムなゴールドケースのウォッチに用いられたもので、当時その時計に搭載されていた伝説的なムーブメントを、宝物になぞらえて名づけられたという。
オメガは、オリンピックの公式計時に象徴されるような優れた機能性ゆえに、日本では男性用のイメージが強いブランドだ。しかしじつは、20世紀前半から1世紀以上にわたり、レディスウォッチの分野でも画期的な新作を発表し、デザイン面でも時計界をリードしてきた歴史を持つ。
1906年、懐中時計が主流の時代に、いち早く発表されたレディスウォッチ「レピン」。12時のインデックスが3時位置に配されたデザインは、当時のぺンダントウォッチをベースにした証しだ。1940年には、ジュエリーウォッチの分野でも大きな足跡を残している。プラチナ製のケースにダイヤモンドとブルーサファイアを配した、「オメガ アールデコ ジュエリー ウォッチ」の登場である。そして、1955年に発表したブランド初の女性用自動巻き時計「レディマティック」は、世界最小のローターを搭載し、革新的なテクノロジーと独創的なデザインが融合した次世代モデルとして、世界的に注目を集めた。
こうした歴史を背景に、新しい「トレゾア」は新世代に向けたメッセージを発信する。その象徴が、ミレニアルモデルとして注目を集めるカイア・ガーバーだ。彼女は往年のスーパーモデル、シンディ・クロフォードの娘だが、母の影響を感じさせない、独自の個性と才能を確立している点が非常に現代的だ。写真家ピーター・リンドバーグよるトレゾアを着けた彼女のポートレイトは、女性と時計のあいだに生まれる、自然でさりげない、互いを高めあうような関係性を示唆している。見せる時計よりも、自分が毎日使いたくなる時計こそ、新しい時代の「宝物」と呼ぶにふさわしい。身に着ける女性たちが、カイアのように、自分らしさを大切にしたオンリーワンの存在であるためにも。
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