名品の“最初と最新”
ーー カルティエの「タンク」

First of Its Kind, Last of Its Kind(For Now) Vol.3ーCARTIER TANK
時代を超えて人々を魅了する名品たち。第3回は、カルティエの「タンク」。誕生秘話から最新作まで、遊び心たっぷりに時代を映すそのデザインを読む

BY LINDSAY TALBOT, STILL LIFE BY ANTHONY COTSIFAS, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI

 カルティエが腕時計の製造を開始したのは1904年。その57年前に始めたファインジュエリーと同様、精密な職人技でウォッチの制作に取り組んだ。目指したのは、大胆でほかにはないジオメトリックなデザイン。正方形の「サントス」と楕円形の「ベニュワール」という二つの腕時計を世に送り出したあと、創業者の孫であり三代目当主のルイ・カルティエは「タンク」の原型をスケッチした。第一次世界大戦の戦場を行く軽戦車、ルノー FT-17の四角い車体を思い起こさせるデザインだった。

画像: カルティエのカタログに掲載されたイラスト。左下に「タンク パラレログラム」が。1937年 CARTIER ARCHIVES, NEW YORK © CARTIER

カルティエのカタログに掲載されたイラスト。左下に「タンク パラレログラム」が。1937年
CARTIER ARCHIVES, NEW YORK © CARTIER

 ブロンカール(「担架」の意)と呼ばれる太いサイドバーが特徴的なこの長方形のフォルムは、戦車を上空から見た姿に似ている。今ではメゾンのシグネチャーでもある“シュマン・ド・フェール(線路)式”の目盛りとローマ数字を配し、極めて直線的なデザインのタンクは、当時、一般的だった丸いフェイスの腕時計とは一線を画していた。アールデコとフラッパー全盛の1936年、タンクはまるで夢でも見たかのようにひし形に変わった。「タンク ロザンジュ」もしくは「パラレログラム」という名で知られるこのタイプの文字盤はすべて小粋に右に30度傾き、12の数字は文字盤の右上の角に、6はその対角線上の角に置かれていた。

画像: カルティエ プリヴェの新作ウォッチ。タンク アシメトリック<K18YG>¥3,207,600(世界100本限定発売) STYLIST: MARCI LEISETH. RETOUCHING: ANONYMOUS RETOUCH. PHOTO ASSISTANT KARL LEITZ. DIGITAL TECH: RUSSELL UNDERWOOD.ARCHIVAL

カルティエ プリヴェの新作ウォッチ。タンク アシメトリック<K18YG>¥3,207,600(世界100本限定発売)
STYLIST: MARCI LEISETH. RETOUCHING: ANONYMOUS RETOUCH. PHOTO ASSISTANT KARL LEITZ. DIGITAL TECH: RUSSELL UNDERWOOD.ARCHIVAL

 今シーズン、タンクは再び形状を変えた。それが「タンク アシメトリック」だ。K18イエローゴールドのケースにブルースチール製の剣型針、リュウズにはサファイアがはめ込まれ、ストラップは茶色いアリゲーターレザー(ケースはピンクゴールドとプラチナも展開。プラチナ仕様のリュウズはルビー)。今も昔もこのゆがんだデザインは、遊び心たっぷりに問いかける。ものごとのあるべき姿とは何であろう、と。―― これは“タンク”が誕生した時代にも、現代にもふさわしい問いかけだと言える。

問い合わせ先
カルティエ カスタマー サービスセンター
フリーダイヤル:0120-301-757
公式サイト

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