BY ASAKO KANNO, PHOTOGRAPHS BY HIROKO MATSUBARA, STYLED BY TOMOKO IIJIMA
HAIR BY KOICHI NISHIMURA AT VOW-VOW, MAKEUP BY TOMOHIRO MURAMATSU, MODEL BY HIROMI ANDO AT TWO PLUS ONE AGENCY

シャツ¥321,200・スカート¥203,500・ベルト¥38,500/ドリス ヴァン ノッテン
TEL:03-6778-7975
若狭姫神社の境内に深く根を張る巨大な千年杉の下で、生命の息吹に身をゆだねて。古来、不老長寿の象徴とされた霊木は、今なお大きな枝を空に広げ、力強い生命力をたたえている。スカートに描かれた桃のモチーフは、17世紀のフランドル静物画を着想源としたもの。東洋でも桃は古来、邪気を払う不老不死の仙果とされ、能の演目や古事記にも登場する。神聖なる霊木と、東西の神話や芸術が紡ぎ出す"永遠の生命"が、時空を超えてこの装いに結実する。

トップス¥69,300・パンツ¥63,800・タイツ(参考商品)/イッセイ ミヤケ
TEL:03-5454-1705
遠敷川の清流のほとりにて。ここには、上流の山々から削り出された砂岩や硬石が、時に激しい水流に磨かれながらたどり着く。清流の奏でる調べが、訪れる者の心をも洗い清めていくよう。このニットは、自然界の偶発的な作用によって生まれた石の形を美しいと感じたデザイナーの近藤悟史の、その形をそのまま着るという発想を起点としたもの。リブやガーター、メッシュを組み合わせ、自然が生み出した造形と質感を再解釈した。
鵜の瀬
遠敷川(おにゅうがわ)の中流に位置する、巨岩が佇む一角「鵜の瀬」は、若狭彦神と若狭姫神が降臨したとされる神域。毎年3月2日に行われる神事「お水送り」では、鵜の瀬から送られたお香水(こうずい)が、約10日かけて奈良・東大寺二月堂の若狭井に湧き出るとされている。若狭地方の豊かな水文化と歴史に彩られた、神秘的な水脈の拠点だ。
●福井県小浜市下根来
若狭能倉座による「一人翁」

神事能「一人翁(ひとりおきな)」を舞うのは若狭能倉座の85代目座長・大江幸一。「一人翁」をはじめとする若狭能倉座の神事能は、国の選択無形民俗文化財、ならびに福井県指定無形民俗文化財となっている。天下泰平や五穀豊穣を祈る「翁」の面は、一般的な能面には見られない「切り顎」の構造で、舞いながら神歌を唱える際に顎が動く仕組みになっている。また、目はへの字形にくりぬかれ、柔和な笑みをたたえているのが特徴だ。

ドレス¥470,800・ベルト¥179,300/ジバンシィ by サラ・バートン
ジバンシィ ジャパン
TEL:0120-218-025
舞台上で「翁面」をかけることで人から神となり、舞を終えて面をはずすことで再び人へと戻る。そんな現世と神域を行き来する「一人翁」の神聖な儀礼が、この地では650年以上の長きにわたり大切に受け継がれている。太陽のエネルギーを宿すかのような真紅のドレスは、印象的なフォルムでみなぎる生命の力を鮮やかに描く。
豊かな風土に育まれてきた、自然の恵みと世の平穏への祈り
若狭で能楽が盛んになった背景として、若狭の地の豊かさと、文化の先進性が挙げられます。海と山の幸に恵まれた若狭は、古代の頃から、豊富な食材を京都に送る「御食国(みけつくに)」として、京都の食文化を支えてきました。その食材の運搬に用いられた街道が、京都の先進文化を若狭の地にもたらす役割をも果たしたのです。
室町時代に京都で発展した猿楽の文化は、こうして若狭の地に定着することになります。若狭猿楽の伝統を今に受け継ぐ若狭能倉座のメンバーは、今も10の神社で神事能の奉納を行っています。
その最も代表的な演目が、「一人翁」と呼ばれるものです。大夫(座の棟梁)が舞台上で「翁面」という老人の面をかけ、神と一体になり祝福の言葉を語る、という儀式的な演目で、「翁面」は御神体として丁重に扱われています。
若狭の人々が「翁面」を深く敬う気持ちは、自然への感謝と畏敬の念のあらわれともいえるでしょう。
宮本圭造(みやもと・けいぞう)
能楽研究者、野上記念法政大学能楽研究所 所長。1971年大阪府生まれ。能楽史や能面史を専門に研究。著書に『上方能楽史の研究』(和泉書院)などがある。若狭の神
事芸能をまとめた『中世若狭芸能資料集』(若狭路文化研究所)を2027年に刊行予定。
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