シャンパーニュのトップブランド「シャルル・エドシック」創業者の開拓者精神を伝えるコラボレーションイベント「マーベリック エンカウンター」。日本古来の文化である香道によって開かれる新しい扉とは?

BY KIMIKO ANZAI, PHOTOGRAPHS BY SHINSUKE SATO

 香道とシャンパーニュの香りには、かくも共通項があるものなのか――。そんな新鮮な驚きに満ちた画期的イベント「マーベリック エンカウンター」が、この6月、名古屋・徳川美術館の茶室で行われた。志野流 香道 松隠軒 第二十一世家元継承者 蜂谷宗苾氏の指導のもとで香を聞き、「シャルル・エドシック」のシャンパーニュを楽しむというこの上なくリュクスな催しである。

「マーベリック エンカウンター」は、「シャルル・エドシック」の創業者シャルル・カミーユ・エドシックが持っていた先見性や開拓心など、彼のスピリッツを共有できる異業種アーティストやクラフトマン、文化の継承者たちとともに取り組む文化的な試み。今年は室町時代から続く志野流香道とのコラボレーションが実現した。フランスからは最高醸造責任者シリル・ブラン氏も臨席、本格的な香道を楽しんだ。

画像: シリル・ブラン(CYRIL BRUN) 「シャルル・エドシック」最高醸造責任者。上質なピノ・ノワールの産地アイ村出身。大手メゾンを経て2015年より現職。「私は創業者からダンディさと自由さを学びました。そして今回、香道からは“禅の精神”を学んだ。“香りを聞く”という表現はとても印象的でした」

シリル・ブラン(CYRIL BRUN)
「シャルル・エドシック」最高醸造責任者。上質なピノ・ノワールの産地アイ村出身。大手メゾンを経て2015年より現職。「私は創業者からダンディさと自由さを学びました。そして今回、香道からは“禅の精神”を学んだ。“香りを聞く”という表現はとても印象的でした」

「シャルル・カミーユ・エドシックは、初めて北米にシャンパーニュを紹介した人物でした。彼が生きた19世紀、シャンパーニュの輸出先は多くはロシアでしたが、シャルル・カミーユが着目したのはアメリカでした。彼は新しい国のエネルギーを感じ取り、新しい市場になると確信したのです。そして、彼らの前にシルクハットにステッキといった粋な出で立ちで現れ、『さあ、皆さん、私と一緒にシャンパーニュを飲みましょう』と人々を誘った。彼のシャンパーニュは爆発的に売れ、“シャンパン・チャーリー”の愛称で親しまれるようになりました。そう、彼自身が広告塔となったのです」とブラン氏。

“シャンパン・チャーリー”の先見性はそれだけではないと、彼は続ける。アメリカでひと財産を築いた彼は、帰国すると真っ先にクレイエールを購入した。クレイエールとは、ガロ・ロマン時代に石切り場として使われていた石灰質の洞窟で、彼はこれをカーヴとして使って、シャンパーニュを熟成させることを考えたのだ。その場所は2015年にユネスコの世界文化遺産に「シャンパーニュの丘陵、メゾンとカーヴ」として登録されたが、このことからも、クレイエールの価値にいち早く気づいたシャルル・カミーユの先見性が見て取れる。

画像: シャルル・エドシックのクレイエール。カーヴとして使用され、ここで多くのボトルが熟成を待っている。ひんやりとして、まさに“天然の冷蔵庫” COURTESY OF CHARLES HEIDSIECK

シャルル・エドシックのクレイエール。カーヴとして使用され、ここで多くのボトルが熟成を待っている。ひんやりとして、まさに“天然の冷蔵庫”
COURTESY OF CHARLES HEIDSIECK

 今回コラボレーションを行う志野流は、室町時代から途切れることなく500年にわたって香道を継承してきた歴史ある流派。宗苾 若宗匠は、作法や装束、香道にまつわる歴史や書道など諸芸を極め、数千人の門弟を指導するかたわら、日常に楽しめるインセンスをプロデュースするなど、香道を国内外に広める活動を展開する。伝統を守りつつも、常に新しいことにチャレンジするその精神が、シャルル・カミーユ・エドシックの哲学との共通性を思わせ、今回の運びとなった。

画像: 会場となった名古屋市の「徳川美術館」茶室前で。 右は、志野流 香道 松隠軒 第二十一世家元継承者 蜂谷宗苾氏。室町時代から500年続く志野流香道の第二十世家元蜂谷宗玄の嫡男として生まれる。香道と言う日本独自の香り文化を通して各国との交流を図り、文化によって世界を繋げるという思いのもと活動している

会場となった名古屋市の「徳川美術館」茶室前で。
右は、志野流 香道 松隠軒 第二十一世家元継承者 蜂谷宗苾氏。室町時代から500年続く志野流香道の第二十世家元蜂谷宗玄の嫡男として生まれる。香道と言う日本独自の香り文化を通して各国との交流を図り、文化によって世界を繋げるという思いのもと活動している

 静謐な空気が流れる茶室で、宗苾 若宗匠の簡単な講義を聞いたあと、夏の組香(くみこう)である「菖蒲香(あやめこう)」が始まった。組香とは最初にひとつの香を聞き、その後、5つの香を聞いて最初の香りを見分けるというゲーム性に富んだもので、その本質は静かな時間の中で趣向を楽しむことにある。「菖蒲香」は「五月雨に 池の真菰の水増して いずれあやめとひきそわづらふ」という源頼政の和歌に由来するもので、この日は特別ルールで3つの香を聞くことに。作法にのっとりつつ、列席者のあいだを香炉が順に回されていく。ブラン氏もゆったりと香を聞き、目を閉じて瞑想するかのような表情を見せる。

「以前、ランスに蜂谷さんがいらしてくださり、香道体験はしていたのですが、やはり場所が違うと受ける印象はまったく違うものですね。“禅”を感じる茶室や庭、そこで聞く香りは、本当に素晴らしかった。リラックスしたムードの中、香りに集中できたと思っています。長い時を経て生まれる香木の香りは、もはや単なる木の香りではなく、なにか存在感をもって心身に訴えかけてくる。時を経たシャンパーニュと同じような深みを感じることができました」

画像: 徳川美術館の茶室「餘芳軒」で、志野流の香道を体験するシリル・ブラン氏。この日は夏の組香「菖蒲香」に続き、特別に志野流が代々受け継ぐ名香も披露された

徳川美術館の茶室「餘芳軒」で、志野流の香道を体験するシリル・ブラン氏。この日は夏の組香「菖蒲香」に続き、特別に志野流が代々受け継ぐ名香も披露された

 香道体験のあと、庭に出て「シャルル・エドシック ブリュット・レゼルヴ」と「シャルル・エドシック ロゼ・レゼルヴ」を楽しむ。希少な名香、伽羅の残り香がそこはかとなく漂う中でのひと口は、いつもより果実の甘やかさが際立って感じられた。その不思議な感覚をブラン氏に伝えると、彼はこう答えた。「瞑想のような時間を過ごしたからではないでしょうか。私も、いつもよりエキゾティックな香りを感じます。このムードは、シャンパーニュを楽しむには完璧ですね」

画像: (左から) 「シャルル・エドシック ブリュット・レゼルヴ」 <750ml> ¥8,000 ピノ・ノワール40%、シャルドネ40%、ムニエ20%。平均10年熟成させたリザーヴワインを40%使用。ブリオッシュやトーストなどの香ばしいニュアンスや、マンゴーやアプリコットなどの香り。芳醇でありながら、酸味は繊細でしなやか 「シャルル・エドシック ロゼ・レゼルヴ」 <750ml> ¥10,000 ピノ・ノワール40%、シャルドネ35%、ムニエ25%。(赤ワインはレ・リセ村の丸みのある味わいのピノ・ノワールを5%ブレンド)。リザーヴワインを20%使用し、複雑味のある味わい。野イチゴやチェリーなど赤い果実やジンジャーブレッドなどスパイスの香り

(左から)
「シャルル・エドシック ブリュット・レゼルヴ」<750ml> ¥8,000
ピノ・ノワール40%、シャルドネ40%、ムニエ20%。平均10年熟成させたリザーヴワインを40%使用。ブリオッシュやトーストなどの香ばしいニュアンスや、マンゴーやアプリコットなどの香り。芳醇でありながら、酸味は繊細でしなやか
「シャルル・エドシック ロゼ・レゼルヴ」<750ml> ¥10,000
ピノ・ノワール40%、シャルドネ35%、ムニエ25%。(赤ワインはレ・リセ村の丸みのある味わいのピノ・ノワールを5%ブレンド)。リザーヴワインを20%使用し、複雑味のある味わい。野イチゴやチェリーなど赤い果実やジンジャーブレッドなどスパイスの香り

 ほのかに香る伽羅の残り香と「シャルル・エドシック」の多彩な香り。共通しているのは、どちらも時によって育まれた自然の香りということだろうか。いわば、時によって育まれた“過去からの贈り物”。確かに、夏の夕べを彩るにふさわしい、雅な贈り物だ。

問い合わせ先
日本リカー
TEL. 03(5643)9770
公式サイト

 

This article is a sponsored article by
''.