京都生まれの京都育ちの食いしん坊、京都でおいしいものに出合いたければ、この人に聞けばハズレなし!と、長きにわたり業界の人々がブ厚い信頼を寄せる、アマジュンこと天野準子さん。今昔とりまぜ、京都ならではの絶品満腹口福アドレスを教えてもらいます。第18回は、「菓子屋 のな」をご案内します

TEXT&PHOTOGRAPHS BY JUNKO AMANO

 京都に来たら、やっぱり外せないのが和菓子。老舗の菓子司や甘味処、気軽な団子屋さんなど、いろんな店がありますが、今回は、フルーツやハーブ、洋酒を使った新感覚の和菓子店を紹介します。

堀川五条「菓子屋 のな」

画像: 2種類のあんこ玉にハーブを添えた「アントニオとララ」¥940(持ち帰りのみ。写真は盛り付け例)。アンデルセン作・森鴎外翻訳の「即興詩人」をオーマージュ。菓子銘には、登場人物二人の名前がつけられている

2種類のあんこ玉にハーブを添えた「アントニオとララ」¥940(持ち帰りのみ。写真は盛り付け例)。アンデルセン作・森鴎外翻訳の「即興詩人」をオーマージュ。菓子銘には、登場人物二人の名前がつけられている

 夫婦二人で営む持ち帰り専門の小さな和菓子店「菓子屋 のな」。店内は、オープンキッチンのカウンターに菓子が並び、和菓子屋さんというより焼き菓子店のような素朴で可愛い雰囲気が漂っている。

画像: 四角い外郎(ういろう)生地を折り紙の要領でクチナシの花に折り上げた、不言花(いわぬはな)¥470。中には八角で香りづけした白あんとパイナップルの果肉入り(台湾パイナップルがなくなり次第終了)

四角い外郎(ういろう)生地を折り紙の要領でクチナシの花に折り上げた、不言花(いわぬはな)¥470。中には八角で香りづけした白あんとパイナップルの果肉入り(台湾パイナップルがなくなり次第終了)

 ガラスケースに飾られた生菓子も、台湾パインあんを包んだ外郎やメロンとココナッツミルクあんを忍ばせたわらび餅など、斬新すぎるラインアップに。

画像: 柔らかなわらび餅を切ると、中からみずみずしいメロンの果肉を包んだココナッツみるくあんが現れる。一雫(ひとしずく)¥470(肥後メロンがなくなり次第終了)

柔らかなわらび餅を切ると、中からみずみずしいメロンの果肉を包んだココナッツみるくあんが現れる。一雫(ひとしずく)¥470(肥後メロンがなくなり次第終了)

 従来の生菓子は、意匠や銘で季節を表現しているが、こちらの生菓子は、フルーツやハーブを使い、味や香りからも季節の移ろいを感じさせてくれる。
 いちご大福が世の中に広まっているように、甘酸っぱいフルーツとたあんこは相性抜群。フルーツを使った生菓子がこれまであまりなかったのが不思議なほど!と思っていたら、
「上生菓子は、茶席で濃茶をいただく前に出されるものであり、あくまでも濃茶が主役。そのため制約がありますが、私が作る生菓子は、茶席用ではなく、日常に楽しんでもらうためのものなので、香りづけに洋酒を使ったり、コクを出すときに乳製品を加えたり、自由に作っています。紅茶やコーヒー、お酒にも合わせてください」と、名主川千恵さん。

画像: 和菓子店っぽくないモダンな店内。イートインはなく、持ち帰りのみ

和菓子店っぽくないモダンな店内。イートインはなく、持ち帰りのみ

 名主川千恵さんは、老舗和菓子店で14年修行後、2020年、夫・高行さんと共に店をオープン。元々は和菓子にフルーツやバターを使うことに抵抗があったそうだが、元イタリア料理人の夫の旬ありきの考え方に触発されたそう。オープン当初から出している「アントニオとララ」はまさに店のスタイルを体現した代表銘菓になっている。

画像: 代表銘菓「アントニオとララ」¥940

代表銘菓「アントニオとララ」¥940

 クリアボックスの中には、焦がしキャラメルとマンゴートロピカルの洋酒を効かせた2種類のあんこ玉と季節のハーブやエディブルフラワーを詰め合わせて。「ハーブやエディブルフラワーはあんこ玉と一緒に食べるためというよりは、見た目が美しくなりますし、蓋を開けた時に香りも楽しんでもらえます。あんこ玉をお召あがりいただく時にお皿にあしらったり、紅茶やソーダなどドリンクに入れてもらってもいいですね」。

画像: 定番のあんバターチャバタのほか、旬の季節を使ったものもあり。アメリカンチェリー、台湾パイン各¥520

定番のあんバターチャバタのほか、旬の季節を使ったものもあり。アメリカンチェリー、台湾パイン各¥520

 和菓子のほか、毎朝、夫・高行さんが焼くチャバタを使ったあんバターサンドも名物に。旬のフルーツを使い、加水率が高いもっちりとしたチャバタとみずみずしいフルーツ、こっくりとしたあんこのコンビネーションは最高だ。

画像: なくなり次第閉店するので、食べたい菓子は、インスタから予約がベター

なくなり次第閉店するので、食べたい菓子は、インスタから予約がベター

菓子屋 のな
住所:京都市下京区篠屋町75
営業時間:12:00~18:00(売り切れ次第閉店)
定休日:日曜、月曜
TEL. なし
公式サイトはこちらから

画像: 天野準子 生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント

天野準子
生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント

京都人・天野準子の「これ、おいしいから食べよし」記事一覧へ

▼関連記事

T JAPAN LINE@友だち募集中!
おすすめ情報をお届け

友だち追加
 

LATEST

This article is a sponsored article by
''.