TEXT&PHOTOGRAPHS BY JUNKO AMANO
最近は京都の店が府外に支店や期間限定店を出すことも多く、さらにネットショッピングも普及し、京都に行かずしても買えるモノが増えてきました。とは言え、店に行かないと味わえないモノもまだまだあり。今月はそんな支店を持たず、賞味期限も短い餅菓子に注目。第2弾は、「まるに抱き柏」をご案内します。
西院「まるに抱き柏」

すべすべの餅に大粒の黒豆がゴロゴロと存在感を放つ銘菓「黒豆大福」
人口あたりの和菓子店の数が日本一多い京都。昔は、茶席で最上のもてなしとして出される”上生菓子”と、大福や団子、餅菓子、おまん(饅頭)といった”日常のおやつ”を作る店は明確に分かれていたのが、最近では、ジャンルレス化が進行中。今回紹介する「まるに抱き柏」も上生菓子と日常のおやつが仲良く並んでいる。

和菓子の名店で15年研鑽を積み、2021年に店を開いた西森敬祐さん
西森敬祐さんは、製菓専門学校を卒業後、「老松」や「亀屋良長」といった老舗の菓子司修行後、豆大福でお馴染みの「出町ふたば」の門をたたいた。
「修行先の菓子司では、上生菓子作りの技や四季のうつろいの表現、美意識などを学ばせていただきましたが、上生菓子は茶席をはじめ、特別なおもてなしの時にいただく菓子の印象がまだまだ強くて。将来、ご近所さんが普段使いしてくれる和菓子店を開きたいと思っていたので、大福やだんごなどを得意とする出町ふたばさんで修行させてもらいました」。

この日の上生菓子は備中白小豆のこしあんを忍ばせた道明寺製「初萩」。赤紫の氷餅で萩の花を表現している。¥330
2021年に構えた自身の店では、大福やおまん、団子を中心に、姿や銘から四季折々の風雅を伝える上生菓子も手がけている。

丹波黒豆を練り込みんだ餅でこしあんを包んだ「黒豆大福」¥290
代表銘菓は「黒豆大福」。餅米の粉に砂糖や水飴を加えて練り上げた求肥で包む大福もあるが、こちらでは、毎朝、餅米を蒸し、きめ細かい食感になるまでついた餅を使用。餅はかたくなるのが早く、賞味期限が当日中の朝生菓子になっている。「求肥よりも日持ちはしませんが、つきたての餅は、コシがあるのにもっちり柔らかく、食感が格別です」と、西森さん。
甘みをおさえた餅生地は、餅米の風味がしっかり感じられ、雑味のないなめらかなこしあんともよく合い、ペロリといけるあっさり感。餅に練り込んだ密漬けの黒豆もホックリおいしいアクセントを添えている。
秋冬は丹波栗を使った栗餅をはじめ、ぎんなんやくるみ、柚子を使った大福も登場予定。そちらも楽しみだ。

店名は西森家の家紋、丸に抱き柏紋から。白あんを挟んだ焼き印入りの「どらやき」¥230

餅屋さんではお馴染みの赤飯も並んでいる
まるに抱き柏
住所:京都市右京区西院平町21
営業時間:9:00~18:00
定休日:火曜、他不定休あり
TEL. 075-748-9650
公式サイトはこちら

天野準子
生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント