クリスチャン・ムエックスが手がける
至極の赤ワイン。
サン・テミリオンの“美しきメルロ”、その正体

　ボルドーの「ペトリュス」といえば、“世界最高峰”と評されるワインのひとつで、ワインファンにとっては“憧れ”でもある。クリスチャン・ムエックス氏は「ペトリュス」を始め、数々の名シャトーを育て上げた凄腕ワインメーカーで、ワイン関係者の間ではカリスマ的存在として知られる。

　近年、このムエックス氏が手がけるサン・テミリオンの赤ワイン「シャトー・ベレール・モナンジュ」が高い評価を受けている。メルロの芳醇で凝縮した果実味とやわらかな酸味、なめらかなタンニンが美しく調和し、飲む人を幸福な気分に誘ってくれる。

「シャトー・ベレール・モナンジュ」の前身は「シャトー・べレール」といい、サン・テミリオンではもともと名シャトーとして名を馳せていた。5大シャトーに代表されるメドック同様、サン・テミリオンにも格付けがあるが、1850年の格付けにおいて最高レベルの“サン・テミリオン特級”に選出されたという輝かしい歴史を持つ。だが、前オーナーがシャトーを手放さなくてはならなくなり、以前から「シャトー・べレール」との付き合いがあったジャン・ピエール・ムエックス社が2008年に新たなオーナーとなった。

　ムエックス氏はこう語る。
「実は、私の父の代から『シャトー・べレール』とは付き合いがあり、父はいつも『このあたりでいちばんいいシャトーだ』と言っていました。畑はサン・テミリオンでも標高の高い位置にあり、日照に恵まれている。私は、父とともに『10年後にはこの地のベストワインにしてみせる』と心に誓いました」。

　ムエックス氏は、シャトー名を祖母の名前にちなみ「シャトー・べレール・モナンジュ（モン・アンジュ/私の天使）」と改名、栽培と醸造を見直し、緻密なワイン造りを続けていった。結果、その美しい味わいは、年を増すごとに評判となっていったのだ。最新ヴィンテージは2020年だが、まだ若いながらも豊かな果実味とシルキーなタンニンが華やかな熟成を予感させる。主要品種はメルロで、メルロならではの芳醇さが感じられる。

「私は、品種の中でメルロがいちばん好きなのです。チャーミングで親しみやすく、とても優美。『シャトー・べレール・モナンジュ』は『ペトリュス』とはまた違う個性のワインです。私はメルロで、このワインならではの魅力を引き出したいと思っています。サン・テミリオンのテロワールには、まるで京都のお寺の朝の鐘のような静けさがあります。それを、『シャトー・べレール・モナンジュ』に反映させたいのです」。

　ムエックス氏は大の親日家として知られるが、テロワールの話に“京都のお寺の鐘”を引き合いに出すほどとは……と驚かされた。
「美しいワインには“陰翳”があります。私はそんなワインを造りたい。そう、谷崎潤一郎の『陰影礼賛』のような美しさを湛えたワインをね」。

問い合わせ
エノテカ TEL.0120-81-3634

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