BY KIMIKO ANZAI, 12 JANUARY 2024
1743年の創業以来、「モエ・エ・シャンドン」は、その美しい味わいで人々の幸福の瞬間に寄り添ってきた。世界のセレブリティに愛されたことや多くの映画に登場することから華やかなイメージが強いが、その実、緻密な造りに定評ある質実剛健なメゾンでもある。3代目当主ジャン・レミー・モエの「シャンパーニュの魔法を世界中に」という夢を受け継ぎ、老舗の筆頭としてシャンパーニュの世界を牽引してきた。歴史に彩られたメゾンでもあり、同社のフラッグシップ「モエ・エ・シャンドン モエ アンペリアル(皇帝)」の名は、ジャン・レミー・モエと皇帝ナポレオンとの深い友情に由来することでも知られる。
創業から280年を迎えた2023年、メゾンの”フレンズ・オブ・ザ・ハウス”に俳優・歌手である山下智久氏が就任した。彼が選ばれた理由について、「モエ・エ・シャンドン」最高醸造責任者のブノワ・ゴエズ氏はこう語る。
「この節目の年に、私たちはメゾンのパートナーとして誰がふさわしいか、熟考を重ねました。その中で名前が挙がったのが山下さんでした。彼が日本のスーパースターであること、近年は世界でも活躍の場を広げていることは知っていましたが、私たちが惹かれたのは彼のパーソナリティでした。情熱的かつエレガント、深いインテリジェンスを感じさせる。彼の仕事に対する妥協なき姿勢は、これらに支えられていると確信しました。そしてこの”妥協なき姿勢”は、私たちのシャンパーニュ造りの哲学とも共通します。彼と手を携えることで、多くの方にメゾンの本質を伝えていただけるのではないかと思いました」。
ゴエズ氏の言葉を受け、山下氏はこう語る。
「オファーを受けた時、正直、驚きました。シャンパーニュは大好きで、仕事の節目や打ち上げなどでよく仲間と飲んでいましたが、お話をいただいた時は『自分はシャンパーニュのことを深く知らない。自分でいいのだろうか』と考えました。でも、モエ・エ・シャンドンは大好きでしたから、とても光栄でした」。
その後、山下氏は2023年6月にシャンパーニュ地方エペルネにあるメゾンを訪問、「モエ・エ・シャンドン」について学んだという。
「メゾンやカーヴ、畑を案内していただきました。圧倒されたのは、全長28kmもあるという地下カーヴの大きさでした。また、ジャン・レミー・モエがナポレオンを迎えたという庭の槐の木の前に立ってみたり、”ナポレオンの間”に通していただいた時には、歴史に触れることができたようで、感慨深いものがありました」。
また、今回の訪問で、メゾンからの素晴らしいサプライズがあったことも話してくれた。
「メゾンでのランチの時、僕の生まれ年ヴィンテージの『モエ・エ・シャンドン グラン ヴィンテージ 1985』が出され、とても感動しました。驚いたのは、酸がフレッシュでいきいきとしていたこと。『38年の熟成を経ても、こんなに美しいのか』と。今回の訪問で学んだのは、シャンパーニュの奥深さです。歴史や自然と強く結びついている。もっと知りたい、勉強したいと思うようになりました」。
すると、ここでゴエズ氏が最新ヴィンテージ『モエ・エ・シャンドン グラン ヴィンテージ2015』を出してくれた。グレープフルーツの香りと豊かな果実味。味わいの中の軽やかな苦みが印象的だ。ゴエズ氏は言う。
「2015年は“太陽の年”でした。近年、シャンパーニュ地方も気候変動の影響を受けていますが、これもその影響を受けていると言っていい。2015年は、暑い年ではありましたが、朝の輝く光を思わせる爽やかさが感じられます。私たちは、サステナブルなブドウ栽培を続けながらも、気候変動ともきちんと向き合い、その年のテロワールを表現していきたいと思っています。ちなみに、山下さんの生まれ年の85年は“センセーショナルなほど奥深い年”でした。気候は毎年異なり、ヴィンテージによって味わいも違う。自然に拠るところが大きいのも、シャンパーニュの魅力のひとつでしょう。山下さんは、今回のシャンパーニュ地方への旅で、私たちの本質を発見してくださった。私たちにとって心強いパートナーです」。
MHD モエ ヘネシー ディアジオ
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