BY JUN ISHIDA
川久保 玲が初めてオペラの衣装をデザインする。演目は12月にウィーン国立歌劇場で初演される『オルランド』。同劇場の150周年を飾る記念作品でもある。『オルランド』の原作はヴァージニア・ウルフが1928年に発表した小説で、16世紀末のイングランドに生まれた貴公子オルランドが、不老不死となり、男性から女性へと変わり、400年にわたり世界を旅する物語だ。1992年にはティルダ・スウィントン主演で映画化され話題を集めた。
今回、初オペラ化にあたり、ウィーン国立歌劇場は初めて女性の作曲家オルガ・ノイヴィルトに作曲、脚本を委託。演出にも女性を起用し、女性クリエイターが主導する世界でも稀なオペラ作品となる。セクシュアリティやアイデンティティという『オルランド』、そしてヴァージニア・ウルフが追い続けたテーマは、川久保玲の探求するものとも重なる。川久保はウルフの生き方、考え方に共鳴し、2020年春夏のコム デ ギャルソン・オム プリュスとコム デ ギャルソンで、「オルランド」をテーマにコレクションを発表した。12月のオペラ衣装により、川久保の『オルランド』三部作は完結する。