TEXT & PHOTOGRAPHS BY MARI KATSURA
DAY4:長崎に向けて出航
豪華客船クイーン・エリザベスに乗船し、5泊6日の旅へ。横浜を出て広島に寄港し、4日目にあたる今日は一日中海上の日。24時間対応のルームサービスもお勧めというので、英国式ブレックファストを好みの組み合わせで頼み、テラスでいただく。久しぶりの英国式の朝食に、英国好きとしては思わず目が潤む。コーヒーもシルバーのポットでやってきて朝からテンションが上がった。

総料理長による料理教室
個人的に旅先での料理教室参加が大好物なので、料理教室のプログラムを発見し、赤丸をつけていそいそと参加してみた。デモンストレーションが行われたのは、リニューアルしたてのガーデンラウンジ。ガラスの天井から光が降り注いでいて、英国のキューガーデンを思わせる造りだ。この船の総料理長タルンシェフが、リド・テーマ・レストラン「コリアンダー」のメニューの中から4品の作り方を教えてくれた。バターチキンカレーやゴア風エビカレー、ビーツを使ったヨーグルトライタなど。早速復習したい!

まるで映画に出てくるような図書室
旅のあいだにすっかりお気に入りとなったのが、映画のセットのように美しい図書室だ。デッキ2とデッキ3からアクセスできる2階建てで、日本の本を含む6,000冊を所蔵する圧巻の規模。日本語のダイジェスト版の簡易新聞も毎日置かれている。日本の雑誌や、海を眺めながら読書のできるカウンター席もある。デッキ3には歴史あるクルーズ船ならではの、ゆかりの品々や写真のアーカイブが展示されていて見逃せない。

ソファに座って本を眺めているだけでもくつろげる

歴史を垣間見ることができる展示も
プールやサウナなど、ウェルネス設備も充実

デッキ9(リド・デッキ)船尾方向にあるリド・プール

ジャグジーもあって気持ちがいい
この日も快晴だったので、船上の屋外プールへ。大海原の上でのスイミングも格別だった。ジャクジーの温度設定は暖かめ。プールの水温も良く管理されているので、安心してリゾート気分に浸れる。有料のスパのアクアセラピー・プールで水流のマッサージに癒され、海の見えるフィンランド式サウナでくつろぐのもオススメだ。

同デッキにはマレール・スパというウェルネス設備も

サウナで海を見ながらリラックス。サウナは無料

更衣室にタオルが置かれた様子も絵になってしまう
アフタヌーンティー、ディナー、感涙のコンサート
毎日グランド・ロビーで夕方と夜にその音色に癒されてきて、衣装も毎回素敵でファンになったサンライズ弦楽三重奏。彼らのクラシックコンサートがクイーンズ・ルームであることをチェックしていたので、時間を合わせてデッキ3のバルコニーから鑑賞。彼らはウクライナとハンガリー出身だそうで、ウクライナの曲も披露、ここでもまた感涙。

アフタヌーンティーをデッキ2のクイーンズ・ルームで
リニューアルで調度品が新調されたクイーンズ・ルームでのアフタヌーンティーも逃せないイベント。毎日15時になるとウェイターたちが整列し、一斉にサーブが始まるのだ。特製キュナードスコーンは、レシピも公開するほどの自慢の逸品なので、マスト。ここでは、エリザベス女王スタイルで、デヴォン式ではなくコーンウォール式にジャムを先に塗ってクロテッドクリームをトッピング。カップ&ソーサーも英国王室御用達ウィリアム・エドワーズのキュナードオリジナルで落ち着いた優美さを放つ。サンドイッチも一味違う美味しさだ。ストロベリージャムの瓶の蓋の裏には、しゃれたメッセージが書かれていて、イギリスのセンスに包まれる。エリザベス女王の肖像画がそこかしこにあるクイーンズ・ルームで優雅にいただくのも、リド・レストランのビュッフェでカジュアルにもいい。甘いものといえば、ビュッフェでは日替わりでフレーバーの異なるアイスクリームも人気で、トッピングにマシュマロやカカオニブまであり、別腹でつい並んでしまう。

特製キュナードスコーン。まずジャムから、次にクロテッドクリーム、のコーンウォール式

カップ&ソーサーも素敵

(左)こちらのスコーンはリド・レストランのビュッフェにあった (右)リド・レストランのビュッフェにはアイスクリームも
夜は予約して、リド・レストランの一角にある有料のテーマ・レストラン、インド料理の「コリアンダー」へ。日替わりで東南アジア料理のバンブー、イタリア料理のラ・ピアッツァなど名前が変わり、気分を変えて楽しめる。料理教室でデモンストレーションを見せてくれたタルンシェフにまたここで再会し、モダンに盛り付けされたインド料理を存分に楽しんだ。ハッとさせられるほど奥深く美味な、ココナツミルクとスパイスを加えたトマトスープやビリヤニが美味しかった。

デッキ9のリド・レストランがこの日の夕食時はインド料理「コリアンダー」に。ビリヤニもオーダー

(左)少しずつプレートに載せてくれる前菜 (右)ココナツミルクとスパイスの入ったトマトスープ
DAY5:ブリタニア・レストランのモーニングで始まった、長崎寄港日

ブリタニア・レストランの英国式ブレックファスト
5日目の朝は、メインダイニングのブリタニア・レストランへ。朝食は7時30分から提供している。キュナードのシグネチャー、特製朝食プレートは、イングリッシュベーコン、ソーセージ、ハッシュブラウン、ブラックプディング、目玉焼き、グリルトマト、マッシュルームのソテーの、まさに絵に描いたような英国式ブレックファスト。NY生まれのエッグズベネディクトも定番だそう。本場のイングリッシュマフィンがまた美味しい。

(左)ブリタニア・レストランのシグネチャーの朝食メニューのひとつ、エッグズベネディクト (右)パンはどれもおいしそうで迷う
寄港地、長崎を散策

めがね橋まで散策
寄港地の長崎は港から街の散策がすぐにできるのがいい。レンガ造りの旧英国領事館のほぼ向かいに着岸、オランダ坂や、めがね橋まで朝の散策へ。常にお腹が満たされているので、大好きな「長崎ぶたまん 桃太呂」には寄らず、旅の友の「松翁軒本店」でのカステラ爆買いに付き添う。前日のリド・レストランでアフタヌーンティーにカステラが並ぶという粋なサービスにノックアウトされ、おいしくいただいたばかり。別の日には三色団子やどら焼きもあり、プールサイドで三色団子を楽しむ外国人の姿にほっこりした。

(左)オランダ坂入口にある洋館、東山手甲十三番館 (右)「中華菜館 福壽(ちゅうかさいかん ふくじゅ)」で長崎ちゃんぽんを
さて、長崎ではちゃんぽん、皿うどん、ハトシは外せないので中華街の「中華菜館 福壽(ちゅうかさいかん ふくじゅ)」に向かう。ああ、やっぱりこの味、とスープをすすり、評判のいい軍艦島デジタルミュージアムへ。ここは、クイーン・エリザベスの待つ港の目と鼻の先。5面のLEDディスプレイで島を体感する立体シアター、軍艦島VR、映像ギャラリー、採炭現場への道プロジェクションマッピングなど、午前中に上陸して夕方4時ごろの帰船時間までじっくり時間をかけて鑑賞できた。
出航に合わせた長崎大学教育学部附属小学校の金管バンドのお見送りに、またも胸がいっぱいになる。演奏後、船が離岸すると柵まで駆け寄って、さらに船を追って港を走る! 女神大橋の上で待っていた手を振る人々の姿も目に焼きつけた。
クイーン・エリザベスの船内でイースターをお祝い
この日は復活祭の日だったので、イースターバニーの形のチョコレートのサービスや、イースターエッグのデコレーションも。リド・レストランのアフタヌーンティーのデザートの種類もさらに増え、フェスティブなお茶時間のうれしいおもてなしがあった。

(左)リド・レストランのビュッフェに並んだイースターのウサギ形チョコレート (右)イースターのお菓子。ドーナツも並んで

(左)飾り付けも可愛いドーナツ (右)スワンシューやババロアも
また、2度目のガラ・イブニングがあり、この日のテーマは「マスカレード」。仮面舞踏会だが、仮面をつけていない方々も多く、スコットランドの民族衣装のキルトを召された紳士たちが少なくなかった。いっぽう、誇らしげにキルトを身につけた紳士たちに負けない華やかさで、お着物のレディーたちも素敵でした。
クルーズ最後の夜は、予約してディナーへ

デッキ2にある「ステーキハウス・アット・ザ・ベランダ」。予約・有料制
今回のプレスツアーに参加した私たち取材チームにとってはクルーズ最後の夜だったので、予約して「ステーキハウス・アット・ザ・ベランダ」へ。船には6つのレストランがあるが、その中でも最上級。流暢な日本語を話すフィリピン出身のスタッフの楽しく完璧なサービスにも感心。まさに伝統の“ホワイトスター・サービス”に触れることができた。キュナードは、かのタイタニック号を所有していたホワイト・スター社を1934年に買収し、そこからキュナードのクルーはホワイト・スター・アカデミーで格式あるサービスを学んでいる。大航海時代からの格式あるサービスが、ここに脈々と受け継がれているのを感じた。

(左)「ステーキハウス・アット・ザ・ベランダ」の、メープルシロップでコーティングしたパン
でのディナー (右)たっぷりのクラムチャウダー
クラムチャウダー、ベーコンとウェルシュ・レアビット、55日以上ウェットエージングしたアバディーン・ブラック牛のフィレ・ステーキに、アルゼンチンの酸味のあるハーブソースであるチミチュリソースを選び、アイスバーグレタス・ウェッジ、ベイビースピナッチのクリーム煮、3度揚げしたフライドポテト、デザートには英国ならではのメレンゲ菓子、中にコーニッシュクロテッドクリームを隠したワイルドストロベリーパブロヴァをチョイス。ピンクシャンパンのシャーベットも美味しかった。どれも記憶に残る美味しさで、記念日のディナーにも最適でお勧め。白を基調にしたインテリアもまるで映画のセットのように美しく、海の見える席をランチに予約するのも良さそう。熟成アンガスビーフ、ワイと島のブルーチーズ、メイプル・ベーコン、自家製ケチャプなどを挟んだザ・キュナーダー・バーガーもかなり気になる! 航海地域から可能な限り調達するというワインとのペアリングもお勧めだそう。

(左)旅の思い出を仲間と語り合いながら (右)フィレ・ステーキにはチミチュリソースを選んだ

食後のデザートももちろん美味
ディナー後、クイーン・メリー号の初代船長コモドアー(提督)、サー・エドガー・ブリテンの名を冠したマティーニをすする。ココナツを漬け込んだウォッカとクレーム・ド・カカオ・ホワイト、パイナップルビターズが異国情緒を運んでくる。7人のコモドアーにそれぞれちなんだカクテルは、デッキ10の落ち着いた雰囲気のコモドアー・クラブでいただける。

デッキ10にある「コモドアー・クラブ」にて、マティーニを
最後の夜にふさわしいロイヤル・コート・シアター・カンパニーの「ハリウッド・ナイト」を観劇。華やかな舞台のダイジェストに拍手喝采だった。毎晩、マジックショーや芸術的なアクロバットショーを観劇しても、シアターから客室までも徒歩数分。感動を胸に眠りに落ちることができる。この上ない贅沢!!
DAY6 :客船の旅、最終日

朝、目の前に広がった釜山の海辺と港の景色
翌朝、目覚めると見慣れた海雲台ビーチが視界に広がったのは、釜山が大好きで通う私には感動的!一昨年からだけでも4度目となる釜山。7年ほど前にはとうとう16ページに渡る釜山グルメ特集も担当したほど釜山愛は深いが、船での上陸は初めて。しかもクイーン・エリザベスでくることができるなんて!カモメたちの歓迎も受け、船はあっという間に韓国第二の都市の港に着岸した。

段々と釜山が近づいてくる

(左)カフェ・カリンシア。アール・デコ調の装飾が特徴 (右)デッキ3のカフェ・カリンシア
この後もクイーン・エリザベスの旅は大阪、横浜へと続いたが、取材チームはここで下船し解散となる。下船までまだ時間があったので、ビュッフェ会場の賑やかさとは対照的な、デッキ3のカフェ・カリンシアでカプチーノやフラットホワイトと流行りのニューヨークヘーゼルナッツクロワッサンで朝食。このカフェは11時以降は軽食もあり、15時から17時は繊細で美しいエクレアなどのあるアフタヌーンティーもいただける、忘れてはならない素敵な場所だ。

流行中のニューヨークヘーゼルナッツクロワッサン
大好きな釜山へ到着
さて、まだまだ船上で参加したいプログラムも少なくなかったが、後ろ髪をひかれつつ下船、韓国に入国。チャガルチ市場までのシャトルバスもあったが、釜山駅の裏という便利な立地の港から駅までまず歩いて、昨年秋以来となる海雲台ビーチへ地下鉄で向かった。まだチャガルチ市場のホテルにチェックインするには早かったので、スーツケースは駅の荷物預かり所に預けておいた。ミルキーなコムタンスープをすすってから、話題の雑貨店や大型スーパーマーケット、市場などを散策。気付けば3万歩以上歩いていた! 釜山駅に戻り、荷物をピックアップする前に、構内の、シャンパンマッコリで知られるボクスンドガにて、黒米マッコリで乾杯。

砂浜が広がる海雲台(ヘウンデ)ビーチ

(左)さまざまな野菜が並ぶ市場 (右)釜山にて、眼福な赤米マッコリ
豪華客船の旅の余韻にひたる
マッコリを飲みながらクルーズの余韻に浸る。華やかさだけではない、居心地のいい至福のクルーズ旅を終える頃には、盛りだくさんなクイーン・エリザベスの魅力の虜となり、ほかのデスティネーションも気になりだす。船上で出会ったクルーズマスターたちは、まず、季節で選ぶ、あるいは寄港地で選ぶのだそうだ。世界一周を決心したという日本からのキュナーダー(キュナード社クルーズのリピーター)もいた。日本発着の船は残念ながらしばらくないそうだが、今後はデッキから眺める星やオーロラ、間近に望む氷河が壮大であろう5月から9月頃のシアトル発着のアラスカクルーズも、10月から来年4月頃に予定されているマイアミ発着のカリブ海のアイランドホッピングも大いに気になる。
まとまった休みのご褒美旅に、ワーケーションに、一人旅・ソロ・クルーズに、旅の醍醐味のすべてが詰まった、最高に居心地のいい豪華客船クイーン・エリザベスはうってつけだ。予約は公式サイトから日本語でできるので、キュナード社の旅サイトをのぞいてみてはどうだろうか。旅情というものを思い出させてくれ、古き良き時代にタイムスリップしたような浪漫に満ちた経験ができるはずだ。

何度も訪れた釜山に、初めて船で
桂まり
雑誌「SPUR」「eclat」などで、フード&トラベル、インタビュー記事を担当するライター。趣味は世界各国で料理教室に行くこと。温泉保養士。Instagramはこちら
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