あくまでワイルドに

新しいタイプのフラワーデザイナーによるアレンジメント。

大量生産された花を使わず、クリスマスローズの「ピンクフロスト」や

スイセンの球根など季節の植物をアレンジに用いている

FLOWERS BY SAIPUA, STYLED BY MARGARET MACMILLAN JONES




 アメリカには今、フラワー革命の嵐が吹き荒れている。さまざまな出来事に気を取られて気づいていないかもしれないが、ここ数年のフラワーアレンジメント界は、森や道端、庭や家庭菜園から摘み取られた、ありとあらゆる種類の四季折々の植物を使った野性味あふれるユニークな作品が主役となっている。バラやカラーを束ねた上品なブーケより、鞘のように茎を包み込む葉っぱやアーチ状に曲げたクレマチスのツル、ユリの球根、紫色の花をつけたバジルなどを使った個性的なアレンジメントを見ることのほうが多くなったはずだ。「これはすごい!」と感心せずにはいられない。そう、たしかに見事だ。では、そんなアレンジメントが誕生した背景を説明しよう。

 

 こうしたフラワーアレンジメントは、個々の素材の美に光を当てた、型にはまらず動きのある表現スタイルを生み出しただけでなく、これまであまりパッとせず、長く苦しんできたフラワーデザインのトレンドに飛躍的な進歩をもたらした。過去に流行したフラワーアレンジメントの数々を思い出してみてほしい。葉っぱでぐるぐる巻きにされた茎や、堅いスポンジの土台に花器の縁からあふれそうなほど花を挿したアレンジメント、色鮮やかな花がクレヨンで描いたグラフィックの模様にしか見えないポップアートのインスタレーション。だが、当時のフラワーデザイナーたちが使っていた素材を思えば、彼らは缶詰のフルーツや季節はずれのトマトだけで料理しなければならないシェフのようなものだったのだ。それに比べて、今のフラワー業界は産業として高度に進化し、品種改良によって低コストで長もちする、輸送に適した花が出回るようになった。


だが、人々がすばらしいと感じる新鮮な花ならではの香りや繊細な作り、はかない美しさは失われ、季節感や産地とのつながりも希薄になった。アメリカで販売される切り花の最大の輸入先である中南米では、労働者が過酷な労働条件と低賃金で働かされ、緩い規制のもとで化学薬品が大量に使用されている。しかも、その輸入比率は増大する一方だ。収穫された花は殺菌され、防腐剤に浸され、押しつぶされ、1週間ものあいだ手荒に扱われる。こうして大量の二酸化炭素を排出しながら、何の香りもしない、色も形も均一で長もちする花が、アメリカじゅうの花屋や家庭に届くことになる。いやはや、すばらしい。