ロサンゼルスにて。

サミュエル・L・ジャクソンは、

8月25日(金)公開の映画『ヒットマンズ・ボディガード』

(日本では同日よりNetflixで配信中)で

ライアン・レイノルズと共演する


 今、あなたがこれを読んでいるまさにこの瞬間、サミュエル・L・ジャクソンは、地中海でヨットに乗り、ファンテイルと呼ばれる船尾の張り出した部分に立ち、ゴルフ・ボールを強打して群青の海へ打ち込んでいるかもしれない。


数週間前に取材した時、彼は私を安心させるかのように言った。「このゴルフ・ボールは魚の餌でできているから環境的にも問題ないんだよ。それに、すごくよく飛ぶしね」


 ジャクソンと彼の妻である女優のラターニャ・リチャードソンは、毎年1ヶ月かけてイタリアとフランスの両国にまたがるリヴィエラ地方(リグーリア海岸とコート・ダジュール)をセーリングする。同乗するのは親しい友人数人と19人のクルーだ。


「われわれが互いに、心からリラックスできるチャンスなんだ」と、親友の一人であるマジック・ジョンソンは語る。ジョンソンは、ロサンゼルス・レイカーズのバスケットボール運営部門代表に就任したばかりで、その仕事の会議ラッシュの合間をぬって電話取材に応じてくれた。「人々の歓声を浴びたくなったときには、船から降りて街をぶらぶら歩くんだ。ポルトフィーノみたいなイタリアの小さな村に、俺たち2人がいるなんて大事件だろ。住民たちは、どうすりゃいいのかわからなくなっちゃうんだ」



「俺もそうだけど、サムは頭の悪い連中には容赦がないんだ」

とスパイク・リーは言う。

「現場で彼の反感をかうような真似はしたくないね」



 カリフォルニア州、ビバリーヒルズ。ザ・ペニンシュラ・ホテルのラウンジ“ザ・リビング・ルーム”では、サミュエル・L・ジャクソン(68歳)の周囲にそうした騒動は見られない。ベースボールキャップからT シャツ、短パン、スニーカーまですべてがまぶしいくらい真っ白なトレーニング用のスタイルで現れた彼は、ロブスター・ロールを注文し、サービスのパンはいらないと断った。


 ジャクソンは何十年ものあいだ、仕事に集中する時期と、ほとんど仕事をしない時期の繊細なバランスを保ってきた。彼はハリソン・フォード、トム・ハンクス、モーガン・フリーマンらと同じく、歴代最高の興行収入を上げた俳優の一人である。『スター・ウォーズ』やマーベル・シリーズ、膨大な予算をかけた大作アニメの吹き替え、政治ドキュメンタリー、ネオ・キッチュなアクション・ドラマなど様々なジャンルの作品に出演している。また、スパイク・リー監督やクエンティン・タランティーノ監督の作品の常連でもある。


 今月公開されたコンビものの娯楽映画『ヒットマンズ・ボディガード』で、ジャクソンは堅物役のライアン・レイノルズを相手に、情け深い殺し屋のダリウス・キンケードを演じている。ジャクソン本人と同様、ダリウスという男は仕事と遊びのどちらにも手を抜かないタイプなのだ。




 

 これまでのキャリアを通じて示されたジャクソンの演技力は、ハリウッドの偉大な伝説としてしっかりと刻まれている。その天性の才能のひとつは、新聞が政治家たちの暴言を引用するときぐらいしか書かないような、ひどい言葉遣いを流暢に操れることだ(彼は、自身が演じるマーベル・シリーズのキャラクターについて、「ニック・フューリーは残念ながら悪態をついてはいけないことになっているんだ」と言う)。


 そんなわけで、新作『ヒットマンズ・ボディガード』の冒頭でジャクソンが開口一番、「おや、それはそれはご親切なことで(※「親切」をwhiteという言葉で表す慣用句)」という表現に“口汚い修飾語”を加えたセリフを発するのを見ると、爽快感を覚えてしまう。


 即興で考えたこの悪態は、毒舌であるだけでなく、人種的な事柄についての一撃でもあった。ダリウス役は、もともとアイルランド出身の白人として書かれていたのだ。ジャクソンは、助手席ではなく、自らハンドルを握る操縦席を好むようだ。準備には入念に取り組み、その努力を怠る同業者には極めて厳しい姿勢をとる。


「俺もそうだけど、サムは頭の悪い連中には容赦がないんだ」とスパイク・リーは言う。「現場で彼の反感をかうような真似はしたくないね」。そう言って、リーは弾けるように独特な大笑いをした。「俺でさえ、撮影日の朝はまず彼のトレーラーの扉をノックして、『朝ごはん持ってこようか? なんか必要なものはある?』だもの」