東京の中でも、浅草には特別な趣が漂う。まだ都が京都にあった時代から、浅草は商売、文化、芸能が盛んなにぎわいのある町であった。温かでおせっかい、人情味あふれる人々の住む下町としても知られ、昔ながらの銭湯や旨いもん処が今も点在している。いわれの残る古寺名刹、そこを拠点とする伝統的な祭りや行事も多い、江戸情緒を代表する地区である。



ホテル外観

銀座線 田原町駅から徒歩1分の便利な場所に建つ



 その浅草に、小さくてもキラリと光るホテル「アゴーラ・プレイス浅草」がある。オープンは2012年7月。大がかりな宣伝をしていないにもかかわらず、今では外国人観光客が75%を占めるというから驚きだ。客室は全145室で、12㎡から最大30㎡。部屋は決して広いとは言えないが、客とスタッフの距離感がちょうどよく快適なことや、温かなもてなしが浅草らしいと好評を得ている。ゲストの平均滞在日数は3.8泊、連泊の人がほとんどだという。中でも窓からスカイツリーの見える部屋は、空が大きく爽快な気分である。



ロビーには、PCコーナーや、理美容家電のレンタルも。

中央の台では、歯ブラシやひげ剃りといった

オプションアメニティ類も販売している。

無駄な対価をなくすエコへの挑戦だ



プレシャスツイン<22㎡>



 多くのホテルが独自のアクティビティやプランを用意しゲストを楽しませている今、ここ「アゴーラ・プレイス浅草」でも、浅草ならではの“日本文化体験”を数々揃えている。定番で人気のある「着物着付け」「人力車巡り」に加え、「江戸切子ガラスの製作体験」や「江戸提灯手描き体験」ができるプランも外国人には面白いと好評だ。極めつけは、東京でたった1軒、このホテルだけの無料イベントとして開催される伝統話芸「落語」の提供だろう。月に一度、英語で披露する本物の「落語」が開催される。



鹿鳴家 英楽(かなりやえいらく)氏。

月に一度、無料で開かれる英語での落語は大好評



 江戸の中期から後期にかけて浅草では寄席が流行り、現在も落語定席が残っている。現在、このホテルで開催している英語の落語寄席は、鹿鳴家英楽(かなりやえいらく)氏が行なっている。氏はキャナリー英語落語教室を主宰し、英語落語の普及に尽力している師匠であり、神田外語大学、駒澤大学の講師も務める学者肌でもある。「立川談志に影響を受け、また英語落語を始めた上方の桂枝雀に触発された」とは師匠談。世界中に招聘され、講演をしているという国際派だ。


 ホテルでは2階の共用エリアが寄席の舞台となる。満席で20名ほどのスペースだが、外国人観光客が多く座を占める。宿泊客でなくても無料で観覧できることから、少しずつ認知度も上がっているという。初めての経験だった筆者にも想像をはるかに超えてわかりやすく、クリアな英語に皆が笑う姿は微笑ましかった。余談だが、外国人と日本人である我々とは、笑いのツボが少し違うことにも気が付いて新鮮だった。



「世界のウォールアート体感プラン」で宿泊できるアートルームのひとつ。

ウォールデザインは客室ごとに作者も絵も違う

PHOTOGRAPHS:COURTESY OF AGORA PLACE ASAKUSA



 このホテルは「美しい日本を集めたホテルアライアンス」をビジョンに揚げるアゴーラ・ホスピタリティーズの運営であり、地域によって社会活動や文化事業などを行なっている。ここ浅草では、2015年6月から始めた「世界のウォールアート体感プラン」があり、その客室に泊まることで、宿泊料金の10パーセントを各種支援団体へ寄付。国内では小児病棟や児童養護施設、児童自立支援施設等を対象に活動中だ。




アゴーラ・プレイス浅草(AGORA PLACE TOKYO)


住所:東京都台東区寿2-2-9

予約電話: 03(3842)8421 

客室:全145室

料金:¥8,000~

(1泊1室2名の料金。消費税込) 

 ※日によって料金が異なるため、要問合わせ

公式サイト




せきね きょうこ

ホテルジャーナリスト。フランスで19世紀教会建築美術史を専攻した後、スイスの山岳リゾート地で観光案内所に勤務。在職中に住居として4ツ星ホテル生活を経験。以来、“ホテル”の表裏一帯の面白さに魅了され、フリー仏語通訳を経て、94年からジャーナリズムの世界へ。「ホテルマン、環境問題、スパ」の3テーマを中心に、世界各国でホテル、リゾート、旅館、および   関係者へのインタビューや取材にあたり、ホテル、スパなどの世界会議にも数多く招かれている。雑誌や新聞などで多数連載を持つかたわら、近年はビジネスホテルのプロデュースや旅館のアドバイザー、ホテルのコンサルタントなどにも活動の場を広げている。www.kyokosekine.com




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