BY JUNKO ASAKA
その写真が描き出すのは、躍動するブロンズ像のようでもあり、土と汗に汚れひそかに息づく野獣のようでもある。9月9日(土)から品川の原美術館で開催されている写真展『田原桂一「光合成」 with田中泯』。そこに展示された50点余りのモノクロームの写真作品は、音もなく、張りつめた緊張感をみなぎらせている。
本写真展の撮影者は写真家・田原桂一、被写体はダンサーの田中泯。撮影時期は、1978年から80年の3年間が中心となっている。
1971年、20歳で渡仏した田原は、日本とは違う、ヨーロッパの刺すような鋭い”光”に衝撃を受け、これを自らの創作に生かすべく写真家の道へ進んだ。当時、日本ではまだアートとしての写真が普及していなかったが、フランスに定住した田原は、《都市》《窓》など、光そのものを捉える作品群によって、写真家としてヨーロッパで確固たる地位を獲得していた。
一方、クラシックバレエとモダンダンスを学び、モダンダンサーとして活躍していた田中泯は、1974年より独自のダンス・身体表現を追求。前衛的かつ独創的な「オドリ」で注目を集めていた彼が1978年、パリで開催された芸術祭の中の「日本の時空間-間-」展に招かれ、2人はパリで初めて出会うことになった。
国内外で土地土地の光や空気、湿度を感じ、それを自らの身体で表現する「場踊り」を展開してきた田中と、「光で絵を描く」=Photographを追求する田原は、当然のように意気投合。そこから、田中のダンスを田原の写真で切り取るユニークなフォトセッションが始まった。田中泯33歳、田原桂一27歳のときのことだ。