パリを拠点に活動した写真家・田原桂一が世界各地で写しとった、ダンサー・田中泯の身体表現。30数年間、世に出ることのなかった秘蔵写真が、原美術館で展示公開中だ

BY JUNKO ASAKA

画像: Paris-4 1978 © KEIICHI TAHARA

Paris-4 1978
© KEIICHI TAHARA
 

 パリ、ローマ、東京……。あるときはニューヨークのビルの屋上で、あるときは凍てつくアイスランドの荒野で。さまざまな場所で、3年間にわたって撮影は行われた。中でもひときわ異質な重量感を放つのは、フランス・ボルドーに残る旧ドイツ軍の建造したUボート潜水艦の基地跡で撮られた何枚かだ。人間の存在を拒否するような荒れ果てたコンクリートの塊の中で踊る田中泯は、空間のもつ記憶すら身体にとりこんで、見る者の目をくぎ付けにする。

 昨年、30数年ぶりに邂逅したふたりは、これまで公開されていなかったこれらの作品をまとめて出版することにし、その機会に新たにフォトセッションを行った。そのとき撮影された5点の新作も、本展で見ることができる。歳月を経て変化したダンサー・田中泯の身体は、鋼のようだった70年代とはまた違った深みをたたえて美しい。

画像: Island-11 1980 © KEIICHI TAHARA

Island-11 1980
© KEIICHI TAHARA
 

 この写真展のため、作品の選定や全体のディレクションに携わり、足しげく美術館に足を運んだという田原は、昨年6月、病のため展覧会の実現を見ることなく急逝した。展示された写真の多くは、彼が生前、自ら焼いたゼラチンシルバープリントだ。田原が最後に手がけた個展であり、希代のアーティスト2人が魂をぶつけあった成果である貴重な写真展に、ぜひ足を運んでほしい。光を踊り、光を描き出した男たちの、静かで熱い息遣いを感じるはずだ。

 

田原桂一 「光合成」 with 田中泯
会場:原美術館
住所:東京都品川区北品川4-7-25
会期:12月24日(日)まで
開館時間:11:00~17:00
(祝日を除く水曜日は20:00まで。入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜(祝日にあたる9月18日、10月9日は会館)、
9月19日(火)、10月10日(火)
入館料:一般¥1,100、大学・高校生¥700、小中学生¥500
電話:03(3445)0651
公式サイト

【関連イベント】
田中泯 オドリ
第1回  9月30日(土) 予約受付開始 9月12日(火)11:00
第2回 11月18日(土)予約受付開始10月31日(火)11:00
第3回 12月23日(土)予約受付開始12月5日(火)11:00

会場:原美術館 中庭(晴雨にかかわらず実施)
開演:19:00
参加費:ひとり1回¥3,000
予約:原美術館ウェブサイトよりメールで、各回個別に申込み。
詳細は、こちらから

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