これまで広く紹介されてこなかった日本の「前衛写真」の本質をつまびらかにするエキシビション、世界的に活躍する池田亮司の新作を交えた個展、「甲冑×現代アート」をテーマに甲冑の新たな魅力に迫る企画展。今週絶対に見るべき3つのエキシビションをピックアップ

BY MASANOBU MATSUMOTO

『アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真』|東京都写真美術館

画像: (写真左)平井輝七《月の夢想》1938年 東京都写真美術館蔵 (写真右)久野久《海のショーウインドウ》1938 年 福岡市美術館蔵

(写真左)平井輝七《月の夢想》1938年 東京都写真美術館蔵
(写真右)久野久《海のショーウインドウ》1938 年 福岡市美術館蔵

 1930年代から40年代にかけて隆盛した日本の前衛写真。その後、太平洋戦争が本格化したため全盛期が短かったこと、またアマチュア写真家を主体にしたものであり写真史的に軽視されてきたことから、あまり大体的に研究・紹介されてこなかったムーブメントでもある。東京都写真美術館で開かれる『アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真』は、歴史の闇に埋もれてきた前衛写真の本質をつまびらかにする企画展だ。出展作品は約170点。シュルリアリスムや抽象芸術といった海外の美術運動との関連、また大阪、名古屋、福岡、東京など地域で起こった実験的な写真家グループの活動の詳細、画家や詩人などとともに拓かれていったアヴァンギャルドな精神性にも光をあてる。

 この十数年の間に「もの派」や「具体」といった日本の前衛芸術、前衛工芸の再評価が進み、また近年、欧州を中心に日本の気鋭の若手写真家が高い評価を得ている。「前衛」「ジャパニーズフォトグラフィー」といったトレンドを鑑みても、日本の「前衛写真」は今後さらにマーケットや批評のシーンも掘り下げて注目されるだろうテーマであり、その意味でも、いま見るべき価値のある展覧会と言える。

『アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真』
会期:〜8月21日(日)
会場:東京都写真美術館
住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
開館時間:10:00~18:00(木・金曜は20:00まで)
※入館は閉館時間の30分前まで
休館日:月曜(月曜が祝休日の場合は開館し、翌平日休館)
料金:一般 ¥700、大学・専門学校生 ¥560、高校・中学生・65歳以上 ¥350
電話:03(3280)0099
公式サイトはこちら

『池田亮司展』|弘前れんが倉庫美術館

画像: 池田亮司《data-verse 3》 2020年 撮影:浅野豪 ©︎RYOJI IKEDA

池田亮司《data-verse 3》
2020年 撮影:浅野豪 
©︎RYOJI IKEDA

 池田亮司は、ダムタイプのメンバーとしても知られる現代美術家、作曲家。いち早くテクノロジーを駆使し、映像や音によって鑑賞者の感覚を揺さぶるような没入型の作品を数多く発表してきた。青森県・弘前れんが倉庫美術館で開かれている『池田亮司展』は、彼の2009年以来となる国内美術館での大規模な個展であり、近年の池田の活動を新作・近作を通じて紹介するものだ。

 レーザーを使った近作《exp》、美術館の空間的特性を活かしたプロジェクション作品なども池田の多様な作品を鑑賞できるが、みどころのひとつは、2019年、第58回ヴェネチア・ビエンナーレで初公開され話題を呼んだ「date verse」シリーズ。これはCERN(欧州原子核研究機構)やNASAなどによる膨大なオープンデータを取り入れた映像・音響インスタレーションで、鑑賞者を原子核の内部から宇宙まで、ミクロとマクロの視点を行き交う壮大なイメージ世界へと誘うような作品。近年、科学的データを作品に応用し、世界のあらたな認識の方法を模索してきた池田の集大成のひとつともいえるアートワークだ。

『池田亮司展』
会期:〜 8月28日(日)
会場:弘前れんが倉庫美術館
住所:青森県弘前市吉野町2-1
開館時間:9:00〜17:00
休館日:火曜
入場料:一般 ¥1,300、学生 ¥1,000
電話:0172-32-8950
公式サイトはこちら

『甲冑の解剖術―意匠とエンジニアリングの美学』|金沢21世紀美術館

画像: (写真左)《Scanned image for Kacchu》 © RHIZOMATIKS (写真右)《Doodle for Kacchu(type 3)》 © NILE KOETTING

(写真左)《Scanned image for Kacchu》
© RHIZOMATIKS
(写真右)《Doodle for Kacchu(type 3)》
© NILE KOETTING

 近年「刀剣」が静かなブームになっているが、じつは「甲冑」も興味深い。日本で戦国時代から江戸時代にかけて武士たちが着用した甲冑は、防具であると同時に、富や力を象徴する表現媒体でもあった。なかには、軽さや可動性など人間工学に通じた優れたデザインのもの、また蒔絵や金工などの工芸的な意匠を施した美的価値の高いものもある。本展は「甲冑×現代アート」をテーマに、甲冑の新たな魅力に迫る。

 会場では、特徴的な甲冑と同時にそれに着想を得たアーティストの作品やプロダクトを紹介。CTスキャニングで甲冑の細部や構造をデジタル解析した、ライゾマティクスの映像作品や、ファッションブランド「HATRA」とフットウエアブランド「MAGARIMONO」のコラボレーションによる“甲冑デザイン”のスニーカー。近年国際的に注目を集める若手作家ナイル・ケティングは、空間デザインも担当。甲冑を中心に、武士がかつて読んだ和歌や愉しんでいた茶、戦の際の死に備えた化粧道具など武士の生活様式に根ざした道具の数々を、現代性あるいは、時代を超越したアンビエンス(雰囲気)を備えるものとしてプレゼンテーションしている。

『甲冑の解剖術―意匠とエンジニアリングの美学』
会期:〜7月10日(日)
会場:金沢21世紀美術館
住所:石川県金沢市広坂1-2-1
時間:10:00~18:00(金・土曜は20:00まで)
休館日:月曜
料金:[当日窓口]一般 ¥750、大学生 ¥520、高校・中・小学生 ¥260、65歳以上 ¥600
[webチケット]一般 ¥600、大学生 ¥410、高校・中・小学生 ¥200、65歳以上 ¥600
※WEBチケットの詳細はこちらから
電話:076-220-2800
公式サイトはこちら

※新型コロナウイルス感染予防に関する来館時の注意、最新情報は各施設の公式サイトを確認ください

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