20世紀の芸術家マン・レイのオブジェにフォーカスした日本初の展覧会、16年ぶりとなる大竹伸朗の大回顧展、金沢の私設美術館「KAMU kanazawa」の新スペースで開かれているサイモン・フジワラの個展。今月見るべき3つのエキシビションをピックアップ

BY MASANOBU MATSUMOTO

『マン・レイのオブジェ 日々是好物|いとしきものたち』|DIC川村記念美術館

 ファッションにも影響を与えたシュルリアリスティックな写真作品や実験映画などで、日本でも広く知られるマン・レイ。じつは彼が生涯を通じて創作のエネルギーを注いだものに、オブジェ作品があったことをご存知だろうか? 本展は、国内では初となるマン・レイのオブジェをテーマにした展覧会。メトロノームに目の写真を貼り付けた《破壊されざるオブジェ》、アイロンの底面に鋲を配置した《贈り物》などおよそ50点のオブジェと関連作品、資料を合わせた約150点を紹介する。みどころのひとつは、彼が「我が愛しのオブジェ」と題して約30点を取り上げた、手書きのアルバム。本展では、本邦未公開だったそのアルバムをスライドショー形式で鑑賞できる。

画像: 《破壊されざるオブジェ》1923/75年 メトロノーム、写真 11.5×11.5×22.2 cm 東京富士美術館 © MAN RAY 2015 TRUST / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 G2928 ©︎東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

《破壊されざるオブジェ》1923/75年
メトロノーム、写真 11.5×11.5×22.2 cm 東京富士美術館
© MAN RAY 2015 TRUST / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 G2928 ©︎東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

 マン・レイはアメリカ生まれ。マルセル・デュシャンと知り合い創作世界を広げ、その後、パリに移住するとシュルリアリストの芸術家たちと交流し、名声を獲得していった。50歳の時にアメリカに戻った後は、過去に自身が手がけた絵画やオブジェの再制作にも精力を注いだ。

 本展の面白さは、アメリカ時代、パリ時代、戦中・戦後のアメリカとパリに戻った後の3つの時期で区分けし、オブジェや関連作品とともに、マン・レイの人生、芸術観を総覧できる点だろう。彼のアトリエは常にオブジェであふれていたという。マン・レイが純粋に制作を楽しみ、愛した作品たちーーそれは芸術家のどんな素顔を語り出してくれるのか。

画像: 《セルフ・ポートレイト/ソラリゼーション》 1932/77年 ゼラチン・シルバー・プリント 30.0×21.7cm 東京富士美術館 © MAN RAY 2015 TRUST / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 G2928 ©︎東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

《セルフ・ポートレイト/ソラリゼーション》
1932/77年 ゼラチン・シルバー・プリント 30.0×21.7cm 東京富士美術館
© MAN RAY 2015 TRUST / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 G2928 ©︎東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

『マン・レイのオブジェ 日々是好物|いとしきものたち』
会期:~2023年1月15日(日)
会場:DIC川村記念美術館
住所:千葉県佐倉市坂戸631
時間:9:30〜17:00(入館は閉館時間の30分前まで)
休館日:月曜(ただし2023年1月2日、1月9日は開館)、12月25日〜1月1日、1月5日、1月10日
料金:一般 ¥1,500、学生・65歳以上 ¥1,300、高校・中学・小学生 ¥600
電話:050-5541-8600(ハローダイヤル)
公式サイトはこちら

『大竹伸朗展』|東京国立近代美術館

 大竹伸朗は、海外でも評価されている現代日本を代表するアーティストのひとり。ニューペインティングのムーブメントが花開いた80年代初めに華々しくデビューし、その後、絵画、彫刻、インスタレーション、また絵本の制作やエッセイなど、おびただしい数の仕事を手がけてきた。2012年、13年にはそれぞれ現代アートの最も権威のあるふたつの芸術祭「ドクメンタ」と「ヴェネチア・ビエンナーレ」に招かれ、作品を発表している。

画像: 《残景 0》 2022年 212×161×16cm PHOTOGRAPH BY KEI OKANO

《残景 0》 2022年 212×161×16cm
PHOTOGRAPH BY KEI OKANO

 本展は、2006年に東京都現代美術館で開かれた『全景 1955-2006』以来、彼の16年ぶりとなる大回顧展。面白いのは、1964年、小学生の頃に制作したというコラージュから近作まで、約60年の間に大竹の手から生まれてきた作品が一度に見られることだ。展示作品数は約500点。みどころは、果てしなく多い。たとえば「ドクメンタ」で発表した作品《モンシェリー:スクラップ小屋としての自画像》の再現や、自身のライフワークだという「スクラップブック」シリーズ。後者はノートや既成の本に、さまざまな時代のポストカードや雑誌の切り抜きなどの印刷物を貼り込み、絵の具を塗り重ねたイメージと時間の集積体で、本展では、77年に制作した「#1」から、18年から21年にかけて制作した最新作「#71」までをすべて見せる。

 また大竹の真骨頂たる、印刷物や写真、他人から譲り受けたファウンド・オブジェなどをアッサンブラージュ(立体物のコラージュ)した作品も、多様な素材、方法のバリエーションが見られ、実に面白い。加えて言えば、「音」も大竹の重要なエッセンスである。本展では、捨てられていた楽器を自動で動かし、パフォーマンスさせる《ダブ平&ニューシャネル》など音にまつわる作品も紹介されている。

画像: 《モンシェリー:スクラップ小屋としての自画像》 2012年 Commissioned by dOCUMENTA(13) PHOTOGRAPH BY MASAHITO YAMAMOTO

《モンシェリー:スクラップ小屋としての自画像》 2012年 Commissioned by dOCUMENTA(13) 
PHOTOGRAPH BY MASAHITO YAMAMOTO

『大竹伸朗展』
会期:〜2023年2月5日(日)
会場:東京国立近代美術館
住所:東京都千代田区北の丸公園3-1
時間:10:00〜17:00(金・土曜は20:00まで) ※入館は閉館時間の30分前まで
休館日:月曜(ただし2023年1月2日、1月9日は開館)、年末年始(12月28日〜1月1日)、1月10日
料金:一般 ¥1,500、大学生 ¥1,000、高校生以下および18歳未満無料
電話:050-5541-8600(ハローダイヤル)
公式サイトはこちら

サイモン・フジワラ『Once Upon a who?』|KAMU SsRg

 金沢にある「KAMU kanazawa」はいわば増殖する美術館だ。2020年に、レアンドロ・エルリッヒの作品を常設する「KAMU Center」をオープン。その後、森山大道の唇の写真を室内全体に配置したインスタレーション作品で、夜間はバーにもなる「KAMU L」、町屋を改装した「KAMU tatami」など、金沢市内に次々と新しいスペースを開いてきた。すべて徒歩やバスなどで行き来できる距離にあり、各スペースをめぐりながら、金沢の街並みを楽しんでもらおうという試みでもある。

画像: 《Once Upon a Who?》の展示風景 © SIMON FUJIWARA, COURTESY KAMU KANAZAWA

《Once Upon a Who?》の展示風景
© SIMON FUJIWARA, COURTESY KAMU KANAZAWA

 この11月1日に誕生した「KAMU SsRg」はその8つめとなるスペースで、サイモン・フジワラの『Once Upon a Who?』を日本初公開。日本人の父とイギリス人の母を持つサイモン・フジワラは、異なる文化や社会の間で流動するアイデンティティや家族の物語、あるときはジェンダーにまつわる問いを出発点に、パフォーマンスやインスタレーション作品を発表してきた。

 本展は、コロナ禍のロックダウンの時期に創造したというキャラクター「Who」を主人公にした、ストップモーションアニメを中心とした空間作品で構成されている。「who」が自分自身は何者かを探すストーリーで、アイデンティティ形成のプロセスにおいて、ジェンダーや人種、ソーシャルメディア、デートアプリ、セレブリティ文化などが与える影響、さらに植民地主義や盗品など、近年美術シーンで論争が繰り広げられている事象も織り交ぜながら、現代人が世界共通で抱える問題を浮き彫りにする。愛らしくユーモラスながらも、クリティカルな視点をもった作品だ。

画像: 《Once Upon a Who?》 © SIMON FUJIWARA, COURTESY OF TARO NASU

《Once Upon a Who?》
© SIMON FUJIWARA, COURTESY OF TARO NASU

サイモン・フジワラ『Once Upon a who?』
会期:11月1日(火)〜半永久的に
会場:KAMU SsRg
住所:石川県金沢市広坂1-1-52(KAMU Center)
※KAMU SsRgを含むその他のスペースは、KAMU Centerにてチケットを購入後に案内
開館時間:11:00〜18:00
休館日:月曜(祝日の場合は開館) 
料金:¥1,500(全スペース共通1日券)、小学生以下無料
メール:info@ka-mu.com
公式インスタグラムはこちら

※新型コロナウイルス感染予防に関する来館時の注意、最新情報は各施設の公式サイトを確認ください

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