生活の中にアートを気軽に取り入れる人が増え、従来よりも参加しやすいスタイルのオークションに注目が集まっている。魅力的な現代アート作品が豊富で話題の「NEW AUCTION」が開催するオークションがどのように行われるのか、活気あふれる会場からのルポをお届けする

TEXT & PHOTOGRAPH BY HIROYA ISHIKAWA

画像1: アートビギナーにも参加しやすい
新時代のオークションを展開する
「NEW AUCTION」が熱い!

 数年前から日本はアートブームだと言われ、実際、渋谷や原宿、下北沢など若者の街にもギャラリーが続々オープン。老舗画廊のような敷居の高そうな雰囲気ではなく、カジュアルな内装だったり、カフェやアパレルショップなどに併設されたギャラリーが増えたことで、以前に比べてアートがグッと身近なものになっている。それにともなうかのように作品を買う手段のひとつであるアートオークションの数も増え、徐々に盛り上がりを見せている。

画像: プレビューでの展示風景。長場雄や KYNEなど人気クリエイターの作品も毎回多数出品されている

プレビューでの展示風景。長場雄や KYNEなど人気クリエイターの作品も毎回多数出品されている

 中でもNEW AUCTIONは、アートビギナーにも参加しやすいオークションのひとつとして、回を重ねるごとに存在感を高めている。現代アートを中心に作品が出品され、長場雄や花井祐介、KYNEなど日本のサブカルチャーシーンを席巻し、日常的に目にする機会も多いクリエイターの作品も数多く登場。落札価格が1億円を超える作品がある一方、10万円以下でオークションが成立する作品もあると聞けば、思っていたよりもハードルが高くないと感じる人も多いだろう。

画像: 表参道からほど近いオークション会場

表参道からほど近いオークション会場

 オークションは原宿のBA-TSU ART GALLARYを会場に行われ、事前に出品作品を観られるプレビューは渋谷のMIYASHITA PARK内にあるアートギャラリー、SAIで開催。いずれも入場無料ということもあり、フラッと通りかかった人とアートとの接点を創出する役割も果たしている。

画像: アメリカの視覚芸術におけるミニマリズムの巨匠ドナルド・ジャッドのウッドブロック3連作は、NEW 004の目玉作品のひとつ

アメリカの視覚芸術におけるミニマリズムの巨匠ドナルド・ジャッドのウッドブロック3連作は、NEW 004の目玉作品のひとつ

 NEW AUCTIONが初めて開催されたのは2021年の秋。国内のオークション会社出身の木村俊介さんが「アートをより面白く、オークションをより身近に。」をビジョンに掲げて始まった。以来、年に2回のペースで行い、6月24日には4回目となるNEW 004が開催された。

画像: NEW 004では、花井祐介やニーナ・シャネル・アブニーなどによる立体作品の出品も多かった

NEW 004では、花井祐介やニーナ・シャネル・アブニーなどによる立体作品の出品も多かった

 これまでに出品された作品点数は、1回目のNEW 001が129点、002が143点、003が139点。それに対して今回は最も多い195点が出品された。点数を増やした理由について木村さんはこう話す。「取り扱うジャンルの幅を広げました。いろいろな作品が集まることで、オークションとしておもしろくなるだろうと思ったのです」

画像: プレビュー会場では出品作品を間近で観ることができる

プレビュー会場では出品作品を間近で観ることができる

 実際、ここ5〜6年でアートを購入する層が広がり、作品の選び方が多様化していると木村さんは話す。「以前は知名度が高かったり、みんなが持っている作家の作品を求める傾向が強かったのですが、最近では知名度にかかわらず、カタログやプレビューを見て自分がほしいと思う作品を買う人が増えてきました」

画像: 壁全体を使った展示は見応えたっぷり

壁全体を使った展示は見応えたっぷり

 プレビューでの作品の展示の仕方もこれまでとは方向性を変えている。「前回はプレビューを2回に分けて行い、一度に飾る点数を減らすことで、作品の周囲になるべく余白をつくっていました。今回は場所によっては壁を埋め尽くす勢いで一度にすべての作品を飾ってみましたが、結果としてさまざまな作品が入り交じる感じになり、観ていて楽しい展示になったと思います」

画像: 雑誌を読むように楽しめるオークションカタログ

雑誌を読むように楽しめるオークションカタログ

 さらに今回は出品作品を掲載したオークションカタログも刷新。背表紙のある図録のような無線綴じから雑誌のような雰囲気を醸す中綴じ仕様に変更された。「多くの人がオークションに抱いているであろう重厚なイメージを排除して、一般の人がより参加しやすく、作品を気軽に買いたくなるようなカジュアルな雰囲気に変えました」と木村さん。

 カタログのページ構成もアートの文脈を無視してこれまで以上に自由に編集したという。例えば、自然をモチーフに作品作りを行っている同年代の作家、砂澤ビッキとヘルマン・デ・フリースの作品を対抗にして見開きを作ってみたり。今回はプレビューでの展示もカタログのデザインも本来やりたかったことに近いものができたと話す木村さん。では、その成果とも言えるNEW 004のオークション結果はどうだったのだろうか?

画像: 草間彌生の「波」が、今回の最高落札金額を記録した

草間彌生の「波」が、今回の最高落札金額を記録した

 NEW 004の落札総額はおよそ2億7000万円。最も高額で落札された作品は草間彌生の「波」で、2350万円(手数料別・税抜)だった。5000万円以上の高額で落札された作品がなかったためか、総額では過去の回に劣るものの、10万円以下で落札された作品は001と002の6点、003の4点に対して、今回の004は14点もあり最も多かった。つまりは「アートをより面白く、オークションをより身近に。」というNEW AUCTIONのビジョンを最も体現した回だったと言えるだろう。

画像: 浅田政志の「唐人踊り」のオークションの様子

浅田政志の「唐人踊り」のオークションの様子

 ちなみに最もお手頃価格で落札された作品は、ニーナ・ローラ・バッハバーのUntitled,2003と浅田政志の「唐人踊り」の3万円(手数料別・税抜)だ。金額的には洋服やスニーカーを購入する感覚で、日常に彩りと新たなパッションをもたらしてくれる本物のアート作品が手に入るのである。

画像: 会場で入札に参加する様子。競り合った時の盛り上がりもオークションの醍醐味のひとつ

会場で入札に参加する様子。競り合った時の盛り上がりもオークションの醍醐味のひとつ

 オークションへの参加方法もハードルは高くない。無料の会員登録を行えば、基本的に誰でも参加が可能だ。入札方法は会場でパドルと呼ばれる番号札を手に直接参加する方法、ウェブサイトを通して参加する方法、電話で参加する方法、事前に委託入札する方法がある。

画像: 木村さんとともにオークショニアをつとめたNEW AUCTIONのユハノワ・オルガさん

木村さんとともにオークショニアをつとめたNEW AUCTIONのユハノワ・オルガさん

 さまざまな作品が登場するオークションは、自分のほしいものを見つけることができる場所であり、入札を行わずに見ているだけでも作品の相場を確認できのが良いと話す木村さん。

「ロバート・マンゴールドなど国内のギャラリーでは取扱いのない作家の作品を購入できるのもオークションの良いところ。エスティメイトと呼ばれる落札見積価格の範囲内で落札できれば、仮に10年後に手放すことになっても価格が大きく下落することはないはず。ただし、時々熱くなってエスティメイトの範囲を大きく超えた金額で落札されることもあるので、ライバルが現れても冷静さを保つことが重要です」

 NEW AUCTIONの次回の開催は11月4日。ぜひ気軽に参加して、アートの楽しみ方を広げてみたい。

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