注目の展覧会を厳選してお届けする本企画。今月は、『森美術館開館20周年記念展 私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために』、『パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展—美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ』、『アーツ前橋 開館10周年記念展 「ニューホライズン 歴史から未来へ」』の見どころを紹介する

BY MASANOBU MATSUMOTO, EDITED BY T JAPAN

『森美術館開館20周年記念展 私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために』

「エコロジー」は、現代社会の緊急課題であり、近年、多くの現代美術の国際展でも主題にされているアートシーンのビッグテーマでもある。本展は、このエコロジーという概念を、エネルギー問題やグローバルサウスの諸問題など、惑星規模の人間の循環的な営みまで広げながら、世界16カ国34名の作家の作品を通してその多様な考え方や視点を提示する。

画像: Emilija Škarnulytė Arrow of Time 2023 Video installation 16 min.

Emilija Škarnulytė
Arrow of Time 2023
Video installation
16 min.

 環境危機に対してストレートに反応したもの、素材選びや制作プロセスに問題意識やビジョンを反映させたものなど展示作品はさまざま。たとえば、ニナ・カネルは、ホタテの貝殻5トンを床に敷き詰めた大規模なインスタレーションを発表。ホタテの貝殻は粉砕され建材になる生物鉱物のひとつだが、鑑賞者はその上を歩くことができ、パリパリと割れる感触と音を体感しながら、それが建材となっていくそのプロセスに参加することになる。

画像: Nina Canell Muscle Memory (7 Tons) 2022 Hardscaping material from marine mollusc shells Dimensions variable Installation view: Tectonic Tender, Berlinische Galerie Museum of Modern Art, Berlin Photo: Nick Ash  * Referential image

Nina Canell
Muscle Memory (7 Tons) 2022
Hardscaping material from marine mollusc shells
Dimensions variable
Installation view: Tectonic Tender, Berlinische Galerie Museum of Modern Art, Berlin
Photo: Nick Ash  * Referential image

 なお本展では、美術館の運営や展覧会づくりにおいてもサステナブルな取り組みが試されている。作品空間を仕切る壁の一部は、過去の展覧会で使われたものを再利用。海外作家を招集し、現地でリサーチおよび制作を行わせることで、作品輸送によって排出されるCO2量にも配慮した。

『森美術館開館20周年記念展 私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために』
@森美術館
2024年3月31日(日)まで
公式サイトはこちら

『パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展—美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ』

 20世紀初頭、パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックにより提唱された「キュビスム」。さまざまな角度から見たモチーフを解体し、幾何学的な図形や立方体に還元しようとするこの新しい美術表現の試みは、これまでの“現実の再現”としての絵画のあり方を大きく変え、以降の芸術家、建築家にも大きな影響を与えた。

画像: ロベール・ドローネー《パリ市》 1910-1912年 Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne - Centre de création industrielle (Achat de l’ État, 1936. Attribution, 1937) © Centre Pompidou, MNAM-CCI/Georges Meguerditchian/Dist. RMN-GP

ロベール・ドローネー《パリ市》 1910-1912年
Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne - Centre de création industrielle (Achat de l’ État, 1936. Attribution, 1937) © Centre Pompidou, MNAM-CCI/Georges Meguerditchian/Dist. RMN-GP

 パリのポンピドゥーセンターと国立西洋美術館の共同企画によって実現した本展では、このキュビスムの源流にあるポール・セザンヌらの絵画やアフリカ彫刻の影響から、ピカソとブラックによる展開、そして、キュビスムを乗り越えようとしたル・コルビジェや合理主義を重視した機械美学の台頭までを追う。ピカソの作品は12点。ブラックは15点。またピカソとブラックとは異なるアプローチでキュビスム旋風を巻き起こした「サロン・キュビスト」たちの作品も多数紹介される。

画像: ポール・セザンヌ《ポントワーズの橋と堰》 1881年/国立西洋美術館 ※東京会場のみ

ポール・セザンヌ《ポントワーズの橋と堰》 1881年/国立西洋美術館 ※東京会場のみ

『パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展—美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ』
@国立西洋美術館
2024年1月28日(日)まで
公式サイトはこちら

『アーツ前橋 開館10周年記念展 「ニューホライズン 歴史から未来へ」』

 群馬県前橋市の公立美術館「アーツ前橋」の開館10周年記念展。メイン会場のアーツ前橋のほか、周辺の商店街やアートホテル「白井屋ホテル」などにも展示スペースを拡張させ、街を散策しながら作品を楽しめる。アーツ前橋では、井田幸昌、川内理香子、武田鉄平ら、近年注目を集める画家の作品、またメディアアーティスト、レフィーク・アナドールの自動生成される映像など、新しいテクノロジーを取り入れた作品も見られる。見どころのひとつはザドック・ベン=デイヴィッドのインスタレーション。街中の人々の姿を象った彫刻がいくつも並んだ作品で、この作品設置には前橋市民ボランティアも携わったという。

画像: レフィーク・アナドール 《Living Paintings Immersive Editions: Artificial Realities: Winds of LA / Pacific Ocean / California Landscapes.》 撮影:Joshua White Courtesy of Jeffrey Deitch, New York and Los Angeles.

レフィーク・アナドール
《Living Paintings Immersive Editions: Artificial Realities: Winds of LA / Pacific Ocean / California Landscapes.》
撮影:Joshua White Courtesy of Jeffrey Deitch, New York and Los Angeles.

 空ビルになったHOWZEビル(通称「グーチョキパービル」)では、蜷川実花やWOWのインスタレーションなどを展示。演劇集団マームとジプシーも、映像を中心とした作品を現地制作し、市内の「スズラン百貨店」の空きスペースを使って公開。会期中には作家によるワークショップや南條史生特別館長のツアープログラムを含む多様なイベントも開かれる。

画像: マームとジプシー《Light house》 撮影:岡本尚文

マームとジプシー《Light house》 撮影:岡本尚文

『アーツ前橋 開館10周年記念展 「ニューホライズン 歴史から未来へ」』
@アーツ前橋と前橋市中心市街地
2024年2月12日(月・祝)まで
公式サイトはこちら

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