注目の展覧会を厳選してお届けする本企画。今月は、『PARAVENTI: KEIICHI TANAAMI - パラヴェンティ:田名網 敬一』、『倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙』、『MOTアニュアル2023 シナジー、創造と生成のあいだ』の見どころを紹介する

BY MASANOBU MATSUMOTO, EDITED BY T JAPAN

『PARAVENTI: KEIICHI TANAAMI - パラヴェンティ:田名網 敬一』

 絵画であり立体作品、実用品であり装飾品、またアートであり調度品でもある。プラダ財団は、その両義的なメディウムである「屏風」にフォーカスした展覧会を、ミラノの〈フォンダシオン・プラダ〉、上海の〈プラダ・ロンヅァイ>、東京の〈プラダ 青山店〉の3箇所で開催中だ。

画像: 《赤い陰影》(2021) Photo: Tomoyuki Kusunose. Courtesy Prada

《赤い陰影》(2021)
Photo: Tomoyuki Kusunose. Courtesy Prada

 この『PARAVENTI: KEIICHI TANAAMI - パラヴェンティ:田名網 敬一』はそのうちのひとつ。みどころのひとつは、美術家・田名網敬一が新作として挑んだという屏風作品。ポップカルチャーや漫画に加え、浮世絵といった美術史的なモチーフを自由闊達にコラージュされた田名網らしいイメージ世界がそこに広がる。これまで複数のパネルで分割された田名網の作品はあったが、屏風というスタイルは本作が初めて。加えて、ビデオインスタレーションも見せる。

 なお会場には、式部輝忠の《梅竹叭々鳥図屏風》も並ぶ。式部は室町時代に活躍した画家。以前は他の作家と混同されていたが、この30年ほどで彼の研究が進み、いままさに再評価の渦中にある画家のひとりでもある。あわせてじっくり鑑賞したい。

『PARAVENTI: KEIICHI TANAAMI - パラヴェンティ:田名網 敬一』
@プラダ 青山
2024年1月29日(月)まで
公式サイトはこちら

『倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙』

 倉俣史朗は戦後デザイン界のスーパースターである。アクリルのなかにバラの造花を閉じ込めた《ミス・ブランチ》や、生き物のようにグニャグニャした「変形の家具」シリーズなどで世界的に知られ、2021年、香港の現代美術館〈M+〉が、倉俣が設計した新橋の寿司屋〈きよ友〉の内装をまるごと買い取り、コレクションしたことでも話題になった。

画像: 倉俣史朗《ミス・ブランチ》1988年 富山県美術館蔵 撮影:柳原良平 © Kuramata Design Office

倉俣史朗《ミス・ブランチ》1988年 富山県美術館蔵 撮影:柳原良平
© Kuramata Design Office

 本展は、約30年前に没した彼の創作人生をあらためて総覧するもの。先述の《ミス・ブランチ》や「変形の家具」シリーズ、光と空間の関係への関心がひらいた《光の椅子》、倉俣が好んだ素材のひとつエキスパンドメタルを用いた初めての椅子である《シング・シング・シング》と数々の名作が一堂に会する。面白いのは、これまで未公開だったスケッチや夢日記。特に夢日記の内容には、彼がつくり上げた作品との関連性も見られ、倉俣の豊かな創造性のひとつの発露が発見できる。

画像: 倉俣史朗 ショップ「スパイラル」 1990年 撮影:淺川敏 © Kuramata Design Office

倉俣史朗 ショップ「スパイラル」 1990年 撮影:淺川敏 
© Kuramata Design Office

『倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙』
@世田谷美術館
2024年1月28日(日)まで
公式サイトはこちら

『MOTアニュアル2023 シナジー、創造と生成のあいだ』

「MOTアニュアル」は1999年から東京都現代美術館が開催してきた若手作家のグループ展シリーズである。19回目を迎える本展のテーマは「創造と生成のあいだ」。美術家たちの想像力や手仕事が展開してきた「創造」と、いま注目を集めているAIなどによる「生成」。そのふたつを両睨みで捉えながら、活動を展開する11組の作家の多彩な試みを紹介する。

画像: やんツーの作品。《TEFCO vol.1 〜重力発電の夜明け〜》2023 photo: 萩原楽太郎

やんツーの作品。《TEFCO vol.1 〜重力発電の夜明け〜》2023 photo: 萩原楽太郎

 出展作家のひとり、やんツーは、自律型ドローイングマシーンや、パフォーマンスをChatGPTで言語化するような作品を展開してきたメディアアーティスト。最近では、テクノロジーの加速主義に抗うような《遅いミニ四駆》や重力発電装置なども発表し、テクノロジーの背後にある哲学や思想へ関心を開きながら作品を展開している。Zombie Zoo Keeperはなんと2012年生まれ。8歳のときに自由研究として母親とNFTアートプロジェクトを始動し注目を集めた、現在10歳のアーティストだ。ほか、原初的な映像メディアと現代のテクノロジーを往来し、フィジカルとデジタルの関係性に着目した作品群を発表する後藤映則など、注目作家の作品が一堂に会する。

画像: Zombie Zoo Keeperの作品。《Zombie Zoo #0082 / #0123 / #0011 / #0081 / #0007 / #0012 / #0059 / #0035》2021 ©Fictionera

Zombie Zoo Keeperの作品。《Zombie Zoo #0082 / #0123 / #0011 / #0081 / #0007 / #0012 / #0059 / #0035》2021
©Fictionera

『MOTアニュアル2023 シナジー、創造と生成のあいだ』
12月2日(土)~2024年3月3日(日)
@東京都現代美術館
公式サイトはこちら

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