大人のヘアダメージ軽減策として注目が高まる「ヘナ」によるヘアカラー。「自分の髪を大切にしながら生きていきたい」とヘナによるヘアカラーを実践する毛髪診断士で美容エディターの伊熊奈美が、「ヘナ」のイロハを徹底解説!

TEXT AND PHOTOGRAPHS BY NAMI IKUMA

 大人の髪悩みといえば、真っ先に上がるのが白髪。白髪を一般的なヘアカラーで染めるという以外に、植物性染料の「ヘナ」という選択肢がある。髪や頭皮を健やかに保ち、持続可能で環境にもやさしいことから、最近注目が集まっている。まずはヘナの基礎知識とそのメリットとデメリットを理解していこう。

ヘナ染めとは、毛髪を草木染めにすること

 ヘナとはミソハギ科の樹木の固有名詞で、本来の発音は「ヘンナ(Hennna)」という。北アフリカから南アジアを原産とし、葉にオレンジ色の色素をもつことから、古来より装飾や薬草として用いられていた。古代エジプトでは高貴な女性の爪や髪の装飾用に、インドではお祝いや魔除けの意味を込めたヘナタトゥーというボディペイントに、さらに庭先に植えて火傷のときの湿布薬にと、常に人々の身近にあったという。日本で髪染め用として入手できるものは、インドやモロッコなどからの輸入が多いが、沖縄など高温の地域で栽培された国産のヘナもある。

画像: 沖縄で栽培されているヘナの木

沖縄で栽培されているヘナの木

パウダー状のヘナを湯溶きして塗ると髪が染まる

 この葉を乾燥させて粉末状にしたものが市販されているヘナパウダー。それを湯溶きしてペースト状にしたら、頭皮から髪に塗り、自然放置か加温しておくことで髪が染まるのだ。

画像: パウダー状のヘナを湯溶きする際は泡立て器を使って手早くかき混ぜるのがおすすめ

パウダー状のヘナを湯溶きする際は泡立て器を使って手早くかき混ぜるのがおすすめ

 鮮やかなオレンジ色に染まるのは白髪のみ。黒髪の上にはオレンジ色をのせても色はほとんど変わらない。全体的に黒髪に対して白髪の量が少なければ、白髪部分がオレンジ色に染まって、適度なハイライトが混ざっているような状態になるが、白髪が多いとオレンジ色の比率が増えるので、パッと見、やや派手な印象になる。

画像: 左は白髪率5%程度、右は白髪率20〜30%程度でヘナカラーを使用した際のイメージ。白髪率が高いと、ヘナカラーの特徴的な色であるオレンジが強い印象に

左は白髪率5%程度、右は白髪率20〜30%程度でヘナカラーを使用した際のイメージ。白髪率が高いと、ヘナカラーの特徴的な色であるオレンジが強い印象に

 そこで、白髪が多い場合は、インディゴ(ナンバンアイなど)とヘナをブレンドしたり、ヘナで染めた後に、インディゴで追い染めしたりすることで、オレンジ色を打ち消し、ナチュラルな「ダークブラウン」の髪を実現できる。 

画像: ヘナとインディゴなど、他のハーブをブレンドして染め上げたナチュラルなダークブラウンカラー

ヘナとインディゴなど、他のハーブをブレンドして染め上げたナチュラルなダークブラウンカラー

ケアか髪色か、自分は何を最優先にするか明確にする

 植物染料のヘナ染めにはメリットも多いが、デメリットもある。ヘナ染めを繰り返して色素が定着すると、深く染まって色が抜けにくくなり、普通のヘカアラーに戻すことが難しくなるケースがある。自分にとっての最優先事項は、髪や頭皮の健康なのか、実現したい髪色なのかをよく考えてから始めるとよい。

【ヘナ染めのメリット】

● 髪にハリコシ、ツヤが出る
ヘナに含まれるオレンジの色素であるローソニアは髪の主成分であるケラチンタンパクに吸着するため、髪が強度を増し、ハリコシ、ツヤが出る。年齢による薄毛やくせ毛との相性も抜群。

● 頭皮のディープクレンジング
ヘナペーストは過剰な皮脂を吸着する効果も。頭皮に塗布して流すだけで、べたつきやすい頭皮のすっきり感が味わえる。

● ヘアカラーアレルギーを起こしにくい
アトピーや花粉症など何らかのアレルギーをもっていても、ヘナ100%であれば、アレルギーが起こりづらい。

● 人だけでなく、環境にも優しい
植物原料の「ヘナ」は生分解性も100%。化学染料は不使用のため、海や川など環境にも負担をかけない。

【ヘナ染めのデメリット】

● 明るいカラーに戻すのは難しい
髪色を明るくするには、明るい色のヘアカラーをするか、ブリーチをするかだが、ヘナを続けた髪は色素がしっかり定着し、色が抜けづらくなる。特にインディゴを混ぜたヘナは色を抜くと予期せぬ色になることがある。

● 色の選択肢が少ない
ヘナ100%で染めるオレンジ色か、インディゴと掛け合わせたブラウン系がメイン。それ以外のハーブも使って色を表現する方法もあるが、あくまでも黒髪次第なので、いずれもニュアンス程度であり、ヘアカラーのように明るさと色のバリエーションがあるわけではない。

● 染まりにやや時間がかかる
ヘアカラー剤に比べて染まるまでに時間がかかる。

●品質にばらつきがある
農産物であるため、生産行程や収穫の時期、加工の方法など、製品によって染まりや質感に違いが出やすい。

伊熊奈美おすすめのホームケア用ヘナ

 ヘナ染めは、サロンでの施術も可能だが、難しいテクニックもいらず、自分でも比較的簡単に染められるのがヘナのいいところ。そこで、自宅で使うのにおすすめしたい、信頼できるヘナ製品を紹介しよう。

画像: 伊熊奈美おすすめのホームケア用ヘナ

みんなでみらいをの「THE HENNA 」

「みんなでみらいを THE HENNA ヘナカラーセット」(左)オレンジ ※国産100% 、(右)ダークブラウン ※輸入ハーブミックス <各30g×2袋 >各¥1,980/フロムファーイースト

 離島の耕作放棄地を活用して栽培された国産ヘナを使用。コーヒーカップの容器でヘナパウダーの湯溶きができるほか、手袋やヘアキャップなど必要なものが一式がセットに。

問い合わせ先
みんなでみらいを(フロムファーイースト)
公式サイトはこちら

JAPAN HENNAの「えびすハーブ」

オーガニックトリートメント「えびすハーブ 」(左)ブラウン 、(右)ダークブラウン<各100g>¥2,640/JAPAN HENNA(ジャパンヘナ)

 国内の老舗ヘナメーカーが選りすぐったプレミアム品質のヘナ。ヘナの本場であるインドのラジャスタン地方で栽培されたもので、エコサート、ハラール認証付き。

問い合わせ先
JAPAN HENNA(ジャパンヘナ)
公式サイトはこちら

画像: 伊熊奈美 美容エディター、ジャーナリスト。(公社)日本毛髪科学協会毛髪診断士認定指導講師、(社)国際毛髪皮膚科学研究所毛髪技能士。20年以上に渡り、女性誌を中心に美容分野の記事を編集、執筆、監修。美容関連企業のコンサルティングにも携わる。著書に『頭皮がしみる、かゆいは危険信号!いい白髪ケア、やばい白髪ケア』(小学館)、『脱白髪染めのはじめかた〜でもいきなりグレイヘアは無理』(グラフィック社)がある。 @namiikuma_hairista  COURTESY OF NAMI IKUMA

伊熊奈美
美容エディター、ジャーナリスト。(公社)日本毛髪科学協会毛髪診断士認定指導講師、(社)国際毛髪皮膚科学研究所毛髪技能士。20年以上に渡り、女性誌を中心に美容分野の記事を編集、執筆、監修。美容関連企業のコンサルティングにも携わる。著書に『頭皮がしみる、かゆいは危険信号!いい白髪ケア、やばい白髪ケア』(小学館)、『脱白髪染めのはじめかた〜でもいきなりグレイヘアは無理』(グラフィック社)がある。 @namiikuma_hairista

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