刈る、剃るだけではない。その人の新たな魅力を引き出し、格好よく仕上げる。「くつろぎながら、空間そのものも楽しんでもらいたい」。名実ともに日本のトップ・ヘアスタイリストASASHIが虎ノ門に開いた“バーバー”に託す思いを聞いた

BY OGOTO WATANABE

画像: ASASHI(アサシ)。ヘアスタイリスト。1998年に渡英し、モード誌や広告、ファッション・ショーなどでグローバルに活動。2015年に「ASASHI BARBER LONDON」をオープン。2019年帰国。トップ・クリエイターとして第一線で活躍しながら、2024年秋、「ASASHI BARBER TORANOMON 」を開く。店のロゴはロンドン時代のものと同じく、クリエイティブ集団「TOMATO」を率いるサイモン・テイラー作 PHOTOGRAPH BY OGOTO WATANABE

ASASHI(アサシ)。ヘアスタイリスト。1998年に渡英し、モード誌や広告、ファッション・ショーなどでグローバルに活動。2015年に「ASASHI BARBER LONDON」をオープン。2019年帰国。トップ・クリエイターとして第一線で活躍しながら、2024年秋、「ASASHI BARBER TORANOMON 」を開く。店のロゴはロンドン時代のものと同じく、クリエイティブ集団「TOMATO」を率いるサイモン・テイラー作

PHOTOGRAPH BY OGOTO WATANABE

 江戸の頃には武家屋敷、現在は官公庁はじめ国内外の大手企業のオフィスビルが立ち並ぶ、虎ノ門。昨年11月、そびえたつタワーのふもとの界隈に、ASASHIは念願の“バーバー”をオープンした。
 黒い鉄枠のドアを開けると、重厚な木製の梁とコンクリートの床を背景に、3台のバーバーチェアが整然と並ぶ。タカラベルモト社の「859」だ。白いホーローに黒のレザーが冴えるこの椅子は、1970年代の理容椅子の名品。昇降や傾斜調整のボタンがズラリと並び、右のアームの先端に灰皿も内蔵。当時の紳士たちに至れり尽くせりの設計だ。
「帰国して5年来、東京でも“バーバー”を開きたいと探し続け、ようやく出合ったのがこの場所。天井の木の梁を一目見て気に入りました。そこで理容椅子を求めたら奇しくもちょうど3台、「859」が見つかり、張替えてリペアしました。この椅子、たたずまいがいいだけでなく、お客様の座り心地もこちらの操作の機能性も良好なんです」

画像: 前面にシャンプー台を構える作り。シャンプーはサロン向けオーガニックブランドのOWAYを厳選。「お客様の目の前に置くものなので、品質も見た目も良いものを。香りも良いので、リラックスしていただける」 COURTESY OF ASASHI BARBER TORANOMON

前面にシャンプー台を構える作り。シャンプーはサロン向けオーガニックブランドのOWAYを厳選。「お客様の目の前に置くものなので、品質も見た目も良いものを。香りも良いので、リラックスしていただける」

COURTESY OF ASASHI BARBER TORANOMON

“バーバー”ではあるが、メニューはカットのみならず。「少し癖をつけて後ろに流れるようにしたら恰好よくなる」場合など、パーマの技も駆使する。その人に合うよう、洗練されたカラーも行う。もちろんシェービングも好評で、こちらは多忙な撮影スケジュールの合間を縫って国家試験を取得したという。

「お店に入っていらしたお客様のたたずまい、ふとした時の表情やインスピレーションを大事に、その人の良いところを引き出し、どうしたらさらに格好よくなるか考えます。押し付けたりはしませんが、どんな風に素敵にするかを提案します。本人も気づかなかった魅力が引き出され、喜んで帰っていただけたらとてもうれしい」とASASHIは言う。

画像: 店の壁には、ASASHIがロンドン時代に携わったi-Dでの作品やポートレート、マーケットで手に入れたヴィンテージの絵などが飾られている PHOTOGRAPH BY OGOTO WATANABE

店の壁には、ASASHIがロンドン時代に携わったi-Dでの作品やポートレート、マーケットで手に入れたヴィンテージの絵などが飾られている

PHOTOGRAPH BY OGOTO WATANABE

「ファッションの撮影のとき、僕はスタジオに入ってくる初対面のモデルや被写体をひと目みて、一瞬でその人の魅力をとらえます。ちょっとした感覚的なものだと思うけれど、それは数々の撮影現場で培われた経験知でもある」
 一筋の髪の流れと質感がその人のたたずまいに、そして一枚の写真の空気感にどれほどの効果を及ぼすか、ASASHIほど知り抜いているアーティストは類を見ない。奇をてらうわけではなく、抑えの効いたスタイルは繊細にして大胆、精緻なのにどこか無造作。ピシリとエッジが効いているのにほどよい抜け感もあり、とにもかくにも絶妙なのである。モデルやセレブリティの魅力を的確に引き出し、表現する確かな技と卓越したセンスに、本誌の撮影においてもスタッフの信頼は厚く、ASASHIがブッキングできるとエディターたちは安堵する。
「髪は、顔のフレーム。顔の形、目と眉のバランスなどを見て、どんなフレームをどうつけていくか、ピタっとハマるところを見つけます。髪で人の顔の印象は大きく変わります」

画像: ドライヤーやバリカンは米国の現行品、ケープは米国のバーバー用品店から。シェービングにはホットタオルのサービスも。棚にはASASHIがロンドンのヴィンテージ・マーケットで蒐集した雑貨、所蔵する本やレコートなどが並ぶ。「空間そのものも楽しんでもらえたら」 PHOTOGRAPH BY OGOTO WATANABE

ドライヤーやバリカンは米国の現行品、ケープは米国のバーバー用品店から。シェービングにはホットタオルのサービスも。棚にはASASHIがロンドンのヴィンテージ・マーケットで蒐集した雑貨、所蔵する本やレコートなどが並ぶ。「空間そのものも楽しんでもらえたら」

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 日本でのサロンワークを経て1998年に渡英。帰国後も第一線で活躍し続けるASASHIだが、その軌跡の原点は少年時代の床屋にあるそうだ。「床屋に通うのが大好きだったんです。ほかほかのタオル、シャボンのいい匂い、ハサミの音…。」この店には、彼が培ってきた技、感性、美意識すべてが凝縮され、いい塩梅に醸されている。

 それにしても、虎ノ門とは意外である。サロンといえば青山や表参道というイメージだが、と問うと、ASASHIは「ファッション業界だけではなく、ふだんあまり会うことのない業界の人たちをはじめ、いろいろな方と出合いたいと思ったんです。話を聞くのも面白くインプットになるし、僕からのアウトプットを受け容れて頂けるのも面白い。その人自身がまだ気づいていない格好いいところ、素敵さを引き出すことが楽しみです」 
 バーバーの起源は英国にあり。19世紀初頭、王室御用達の理髪師がロンドンにバーバーを立ち上げた。チャーチルほか歴代首相も激務の合間を縫って通ったそうだ。ホワイトハウスは中に大統領御用達のバーバーがあるとか。バーバーは、多忙な紳士がひとときのくつろぎのなか英気を養い、身だしなみを整え“格好よく”なって、また表へと出ていく場であった。ASASHI BARBER TORANOMONは老若男女歓迎、取材時も女性客が「859」にゆったりと座りヘアカット、サッパリした面持ちで颯爽と帰って行った。すでに海を越えて通うセレブもいるとのこと、まだ見ぬ自分の魅力に出会いたい人はぜひ予約を!

画像: バーバーポールは、ロンドン時代の友人のアーティストの「ヴィンテージのテーブルの脚に着色した」作品。タワーやオフィスビルの合間に老舗の印章店やベーカリー、食堂に居酒屋、書店などがひしめき、時代も業種も多層な街角。「平日の喧騒も、週末の静けさもそれぞれに趣がある。そんな街の表情も楽しんでもらいたい」 PHOTOGRAPH BY OGOTO WATANABE

バーバーポールは、ロンドン時代の友人のアーティストの「ヴィンテージのテーブルの脚に着色した」作品。タワーやオフィスビルの合間に老舗の印章店やベーカリー、食堂に居酒屋、書店などがひしめき、時代も業種も多層な街角。「平日の喧騒も、週末の静けさもそれぞれに趣がある。そんな街の表情も楽しんでもらいたい」

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ASASHI BARBER TORANOMON(アサシ バーバー トラノモン) 
住所:東京都港区虎ノ門1-12-13
営業時間:11:00~20:00
定休日:月曜
シャンプー・ヘアカット¥7,700~(ASASHI指名は¥11,000~)
シェービングは+¥1,100 ※シェービングのみは¥5,500
パーマ +¥9,900~
カラー +¥9,900~
公式インスタグラムはこちら
予約は公式ラインから

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