BY MASANOBU MATSUMOTO, PHOTOGRAPH BY MASAKI OGAWA, STYLED BY MASATO KAWAI
2021年に死去したデザイナー、ヴァージル・アブローが、亡くなる前に完成させたお気に入りのプロダクトがある。高級家具メーカー、カッシーナと共同開発した「モジュラー・イマジネーション」。45㎝四方の立方体と、横幅を78㎝に伸ばした直方体の2種類のブロックで、スペースに合わせて連結でき、ベンチやテーブルにもなる多目的な家具だ。
このアイデアは、建築家ル・コルビュジエが手がけた木箱型スツール「LC14 TABOURET」を連想させる。縦にも横にも使え、そしてブロックのように積み上げられるこのプロダクトは、「モジュール(規格化された寸法)」という考え方と人間工学的な発想を融合させたモダンデザインの名作である。「モジュラー・イマジネーション」を、この「LC14 TABOURET」を現代的に昇華したものだと見るのは、ヴァージルが建築学を学び、デザインに精通していたことからも的外れではないはずだ。
では、その現代性とは何か。ひとつは機能性。その表面は驚くほどソフトで、座面にもテーブルにも最適なフィット感がある。そして持続可能性。芯材は廃材を再利用し、表面には生物由来素材を含むポリウレタンを使用。底面には切り取りマークが記されており、そこに刃を入れれば素材を簡単に分別しリサイクルできる仕組みだ。ミニマルな黒いボックス。そこには近代デザインのDNAと現代の理想のビジョンがぎっしりと詰め込まれているのである。
<EVENT>
カッシーナ・イクスシー青山本店、名古屋店、大阪店、福岡店では、モジュラー・イマジネーションを使用したインスタレーションを展開中。12月25日まで。