歌舞伎ワールドへようこそ。劇場の扉、時空の扉、そして心の扉を開いて、絢爛たる異世界へと誘う連載。第五回は『歌舞伎鑑賞教室』で“解説”と“初役”に挑む若手女方、坂東新悟さんが登場

BY MARI SHIMIZU

 国立劇場が学生を対象に「歌舞伎鑑賞教室」をスタートさせたのは1967年。近年は、社会人や外国人、18歳以下の子どもとその親を対象とした公演も日数限定で行っている。

 新悟さんの表情がパッと明るくなったのは「親子で楽しむ歌舞伎教室」の話題になった時だ。
「お子さんは本当に純粋に楽しんでくださるので、親子向け公演の時は解説が盛り上がります。小さい子どものほうが(歌舞伎に対する)ハードルが低いように感じます。また6月に外国人を対象とした『Discover KABUKI』を上演した際も、非常に客席の反応がよかったと聞きました。どんどんグローバル化している時代であるからこそ、たくさんの日本人に自国の文化である歌舞伎に感心をもっていただけたらと思います」

 新悟さんはこの公演で解説を担当する一方、『車引』では桜丸を演じている。「ずっと憧れていた役です。女方を演じることが多いので、隈取をするのは初めての経験。今の自分がさせていただける、最大限“強い役”だと思っています。といっても、三兄弟のなかで一番柔らかみのある役ですので、力強さのなかの柔らかみを自分なりにどう表現できるかが重要です」

 実は三兄弟にはそれぞれ複雑な心情があり、『車引』では描かれないが、桜丸の運命は悲劇へと向かっていく。「言葉ひとつひとつまでわからなくとも、どういう心情でそこにいるのかをお客様に伝えることができたらうれしいですね。頭で理解しようとせずに、感性を研ぎ澄まして何かを“感じて”いただければと思います」

画像: 『菅原伝授手習鑑―車引―』 (左から)舎人(とねり)桜丸=坂東新悟、舎人松王丸=尾上松緑、舎人梅王丸=坂東亀蔵 © 2019 NATIONAL THEATRE, TOKYO

『菅原伝授手習鑑―車引―』
(左から)舎人(とねり)桜丸=坂東新悟、舎人松王丸=尾上松緑、舎人梅王丸=坂東亀蔵 
© 2019 NATIONAL THEATRE, TOKYO

画像: 『菅原伝授手習鑑―車引―』舎人桜丸=坂東新悟 © 2019 NATIONAL THEATRE, TOKYO

『菅原伝授手習鑑―車引―』舎人桜丸=坂東新悟
© 2019 NATIONAL THEATRE, TOKYO

 演じるに当たっては、人間国宝の尾上菊五郎さんに指導を仰いだ。「先月、歌舞伎座で上演された新作歌舞伎『月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと)風雲児たち』で勤めさせていただいたのはロシア人女性の役だったのですが、そこからガラリと変わって今月は古典の大役。しかもそれを独特の緊張感のなかで大先輩に教えていただくという貴重な機会をいただきました。自分は歌舞伎界ではまだまだ若手、日々発見ばかりで未体験のことの連続です」

 役づくりに苦しむこともあるが、「苦しんだことは自分の糧になる」と信じているという。
「いつも目の前のことでいっぱいいっぱいですが、好きなことを仕事にさせてもらっているのですから幸せだと思います。そのありがたみというものを常に意識してこれからも取り組んでいくつもりです」

 歌舞伎に長く親しんでいくと、目の前の舞台そのものの鑑賞に加えて「俳優の成長を見守る」という楽しみが加わっていく。そして歌舞伎の世界に定年はない。その俳優が健康で精進を怠らない限り、その楽しみは末永く続くのである。

 新悟さんにとってファースト・トライとなる桜丸。またいつか新悟さんがこの役を演じる機会を得た時に、今回の舞台を観ておくことで将来的に広がる楽しみというものもあるのだ。

令和元年7月歌舞伎鑑賞教室
<演目>
『解説 歌舞伎のみかた』『菅原伝授手習鑑 ―車引―』『棒しばり』
※「歌舞伎鑑賞教室」、「社会人のための歌舞伎鑑賞教室」、
「親子で楽しむ歌舞伎教室」あり。日程・開演時間は公式サイト参照。
会期:~2019年7月24日(水)
会場:国立劇場(大劇場)
住所:東京都千代田区隼町4-1
料金:1等席¥4,000、2等席¥1,800、学生/全席¥1,500
※「親子で楽しむ歌舞伎教室」親/1等席¥2,000、2等席¥1,500、
子(18歳以下)/全席¥1,000
公式サイト

<チケットの購入は下記から>
国立劇場チケットセンター(10:00~18:00)
TEL. 0570(07)9900
TEL. 03(3230)3000 ※ 一部IP電話などはこちら
インターネット購入(パソコン・スマートフォン共通)

 

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