時を重ねるほどに複雑な色合いと豊かな香りを増す花のように、今が「人生の盛り」といわんばかりの輝きを放っている夏木マリ。つねに前を向き、挑戦しつづける「カッコいい女」が語る、仕事、人生、そして愛の話

MODEL BY MARI NATSUKI, PHOTOGRAPHS BY TAKAKO NOEL, STYLED BY RENA SEMBA, HAIR BY TAKU(EIGHT PEACE), MAKEUP BY SADA ITO(DONNA), TEXT BY HIROMI SATO

惹かれるのは安定よりも刺激のあるほう。だってそれが生きる醍醐味じゃない?

 個性豊かなハイブランドのドレスをまるで普段のワードローブのように軽々と手なずけ、着こなしてしまう。光の中でゆらゆらと舞い、服と自分のパワーを解放して、お互いに身をゆだねていく。マチュアな女性だから表現できる余白と余裕。夏木マリの“カッコよさ”がどの写真にもあふれた。「そう言っていただけるのはありがたいけれど、困っちゃうのよね。だって普段の私はドジだし、不器用だし。いつもバタバタしていて全然カッコよくないの。ファックスを送ったあとに『届いてる?』って電話しちゃうタイプで、“ザ・昭和”なのよ(笑)」。ユーモアあふれるざっくばらんな語り口も魅力だ。飾らない人柄と言うのはたやすいが、今の時代、そんな自分でいることができるのは、自らを守る鎧を捨てる勇気と気概のある人だけだ。颯爽とした美しい横顔にそんな生きざまが映し出されている。

 だが昔から夏木マリが今の夏木マリだったかといえばそうではない。20代、30代とずいぶん遠回りをしてきた。ジャニス・ジョプリンが大好きだった少女は、20代で歌手デビューを果たしたが、「歌謡曲の中に閉じ込められて、ジャニスのジャの字も言えないまま、ただ流されていた」。数年後には華やかな世界から一転、地方のキャバレー回りに明け暮れた。30代で誘われるままに演劇の世界へ。このとき、舞台に没頭する中で、身体を使った表現のおもしろさに目覚め、40代でコンセプチュアルアートシアター『印象派』をスタート。これが転機となった。出演するだけでなく、クリエーションも自ら手がけ、ついに自分の道にたどりついた。

画像: 花やアニマルのプリントを大胆に。身体の中から自然のパワーを呼び覚ます

花やアニマルのプリントを大胆に。身体の中から自然のパワーを呼び覚ます

「『印象派』という名前は、絵画の印象派にインスパイアされてつけました。かつてモネやルノアールは、保守的な宮廷画家に対抗して、イーゼルを持って外に出て、太陽の光の中で絵を描こうとムーブメントを起こした。そういう反抗心がとても素敵だと思ったんですね。私も『見たことのないものをつくってやろう!』という思いでいっぱいでした。気がつけば貯金もすっからかんになっていたけれど、クリエーションが楽しくて、熱狂的にのめり込みました」。以来、26年にわたり、心血を注いできたこのアートワークは、夏木マリにあらたな生命と情熱を吹き込んだ。「迷いがあっても『印象派』に戻れば、素の自分になれる。『印象派』という代表作ができたことで、そこからブレなくなりました」

 年齢を重ねても錆びることなく、つねに「人生の盛り」を生きているのは、トライ&エラーを繰り返しながらも、好奇心の赴くままにチャレンジしつづけてきたからだろう。「冒険せず、ルーティンワークのように仕事をしていたほうが楽だったかもしれません。でも私、安定していると居心地が悪くて。安定したら止まってしまうから嫌なんですよ。ボヘミアン体質だから、いつも旅していたいし、わくわくするほうへ、嗅覚が動いたほうへといつも惹かれていくの。だってそれが生きる醍醐味じゃない? だからいつも崖から飛び降りる覚悟で生きたいと思っています。もちろん失敗したらケガもするけれど、命がありゃいいやっていう(笑)。それが一番すがすがしいし、気持ちいいから、そういう生き方を選んでいると思う」

画像: トップス¥98,000、腰に巻いたロングコート ¥177,000、スカート ¥133,000、チュール アンダースカート ¥96,000、腰にさしたフェザーブローチ 各¥56,000、リング (右手、人さし指)¥44,000、(薬指)¥32,000、(左手、中指)¥44,000、ショートブーツ¥104,000/ドリス ヴァン ノッテン ドリス ヴァン ノッテン TEL. 03(6820)8104

トップス¥98,000、腰に巻いたロングコート ¥177,000、スカート ¥133,000、チュール アンダースカート ¥96,000、腰にさしたフェザーブローチ 各¥56,000、リング (右手、人さし指)¥44,000、(薬指)¥32,000、(左手、中指)¥44,000、ショートブーツ¥104,000/ドリス ヴァン ノッテン
ドリス ヴァン ノッテン
TEL. 03(6820)8104

 冒険こそが、私の存在理由である――そんなピカソの言葉を思い出した。ダイナミックに塗り重ねられたキャンバスのように、数々の冒険が人生に深く濃い色を刻んでいく。痛手も負うが、そのぶん華やぎは慈愛に満ちていく。長年続けているというチャリティの話を聞いてそう思った。パートナーで、パーカッショニストの斉藤ノヴとともに取り組んでいる『One of Love プロジェクト』。音楽とバラで、途上国の子どもたちの教育環境を整えたり、その母親たちの雇用整備を目指す支援活動だ。「もともとは私が途上国のチャイルドスポンサーをやっていたのがきっかけでした。エチオピア、エルサルバドル、バングラデシュ。私には子どもがいないから、そういう形でサポートできたらいいなと思い、始めたんですが、子どもたちと文通するうちに、直接会いたいと思うようになって。彼と話して、それなら“音楽を届ける旅”にしようということになったんです。その旅先のエチオピアで赤いバラと出会い、今度はこれで何かできないかと考えるようになりました」。そして帰国後、賛同してくれた仲間とともにプロジェクトを立ち上げた。「ちょうどみんな、人のために何かしたいという年齢になっていたんですね」

 スタートして今年で10年になるが、「いまだに自分が支援活動をしているなんて信じられない」と笑う。「支援なんて柄じゃないのよね。『印象派』ではいつも資金調達に苦労していて、本当は支援してもらいたいほうなので(笑)。だから本当にこれは出会い、縁。でも、やる以上は責任をもって、一生やり遂げたいと思っています」

 揺るぎない信念と、浮遊する情熱と。その双方がエネルギーとなって、夏木マリをこれからも走らせるだろう。では、そんな彼女が思う“カッコいい”とは?「愛情をもって行動しているか。やさしさをもって人と接しているか。結局は、“愛”だと思っています」

夏木マリ(MARI NATSUKI)
東京都生まれ。1973年、歌手デビュー。以降、舞台、映画、ドラマなど幅広く活躍。6月3日(水)〜7日(日)に世田谷パブリックシアターで上演される夏木マリ演出・出演の『印象派NÉO vol.4「The Last of Pinocchio ピノキオの終わり」』には、土屋太鳳が出演。ルーマニアで開催される世界的な演劇祭『シビウ国際演劇祭』にも招待が決定。京都、福岡、高崎でも上演予定

 

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