2021年にトニー賞の最優秀作品賞など10部門の受賞に輝いた『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』。待望の日本初公演でサティーン役に選ばれた平原綾香の新境地とは。

BY MICHINO OGURA, PHOTOGRAPH BY MAKOTO NAKAGAWA, STYLED BY TOMOKO IIJIMA, HAIR BY TAKUYA SUGAWARA, MAKEUP BY MASAYO TSUDA AT MOD’S HAIR

画像: 平原綾香(ひらはら・あやか) 東京都出身。2003年に「Jupiter」でシンガーソングライターとしてキャリアをスタート。サックス奏者でもある。2015年には「平原綾香 Jupiter 基金」を設立。ラグビーW杯2019開幕戦では国歌独唱を務めた。デビュー以来、シングル39枚、アルバム24枚を発表し、ツアーを重ねている。『オペラ座の怪人』の続編舞台『ラブ・ネバー・ダイ』やキャロル・キングの半生を綴った『ビューティフル』、『メリー・ポピンズ』といったミュージカルにも出演するなど幅広く活躍中。 コート¥875,600/トッズ・ジャパン(トッズ) TEL. 0120-102-578 首に巻いたコサージュ/スタイリスト私物

平原綾香(ひらはら・あやか)
東京都出身。2003年に「Jupiter」でシンガーソングライターとしてキャリアをスタート。サックス奏者でもある。2015年には「平原綾香 Jupiter 基金」を設立。ラグビーW杯2019開幕戦では国歌独唱を務めた。デビュー以来、シングル39枚、アルバム24枚を発表し、ツアーを重ねている。『オペラ座の怪人』の続編舞台『ラブ・ネバー・ダイ』やキャロル・キングの半生を綴った『ビューティフル』、『メリー・ポピンズ』といったミュージカルにも出演するなど幅広く活躍中。
コート¥875,600/トッズ・ジャパン(トッズ) TEL. 0120-102-578 
首に巻いたコサージュ/スタイリスト私物

私が歌っている意味は何か。それを教えてくれたのは傷ついた人たちでした

 バズ・ラーマン監督が手がけた映画『ムーラン・ルージュ』の公開から22年がたつ。絢爛豪華な美術に彩られたパリのナイトクラブを舞台に、俳優ユアン・マクレガーやニコール・キッドマンが歌とともに綴る恋物語。この夏、『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』でその世界が再現される。2018年のボストン公演を皮切りに、NYブロードウェイ、オーストラリア、ロンドン、韓国などを経てついに日本へ。世界基準のオーディションにより、ヒロインのサティーン役を射止めたのが平原綾香。シンガーソングライターやサックス奏者として活躍する一方、ミュージカル俳優としても経験を重ねてきた彼女の新しい挑戦となる。

「先日、衣装のフィッティングやクリエイティブチームに会うためオーストラリアに行ってきました。そこで言われたのは、〝綾香のサティーンをつくるから〟ということ。それまでは観客が思い描くサティーンになれるかどうかを心配していたのですが、少しラクになれた気がしました」

 アメリカ人作曲家のクリスチャンが恋焦がれるのは、ナイトクラブ〝ムーラン・ルージュ〟の花形スターであるサティーン。求愛の場面で歌われるのが「エレファント・ラブ・メドレー」だ。エルヴィス・プレスリー「好きにならずにいられない」、a-ha「テイク・オン・ミー」などヒットソングをマッシュアップ。世代を超えた数々の名曲を歌いこなしていく。

「オーストラリアのパースで行われていた公演を観てきました。誰もが知っている楽曲なので、観客は一緒に口ずさんだりして大盛り上がりでしたね。約70曲におよぶヒット曲を2〜4小節単位で歌っていくのは私もすごく楽しみです」

 オリジナルのサティーンをつくり上げることに向き合う平原。今回の役づくりに関しては秘めた思いがあるという。

「オーディションが実施されたのは、父が亡くなってまだそれほど月日がたっていない時期でした。劇中、サティーンは病と戦いながらも自分の夢を最後まで全うするという強さを見せますが、私はそこに父の姿を重ね合わせていました。彼はサックスプレーヤーでしたが、痛いとも苦しいとも言わずに、最後まで演奏していたからです。本当にかっこいい姿を家族に見せてくれていたのかもしれませんね。サティーンが息絶える間際、クリスチャンに私たちの物語を書いてほしいと頼むシーンがあります。ここには特に思い入れがあって、父と、闘病生活を支えた母、ふたりのことを考えながら、この経験を私も残したい、この作品に私も何かを捧げられたらいいなと思っています」

 もうひとりのサティーン役には望海風斗、クリスチャン役には井上芳雄と甲斐翔真のダブルキャストが発表されている。共演者たちとのハーモニーもこの作品の大きな魅力だ。

「小学校1年生から高校2年生までクラシックバレエを習っていたのですが、望海さんと同じバレエ団で一緒に踊っていたんです。先日、ラジオでご一緒した際にもその話で盛り上がりました。これから長い公演になるので、ダブルキャストってすごく大事。望海さんとでよかったなと思いました。芳雄くんとは初めて会った日から、芳雄とアーヤと呼び合うほど仲良しに。甲斐さんとは今回が初めてなので楽しみです」

 ミュージカル作品はコンサートとは違う緊張感があるという平原。独自の乗りきり方があると教えてくれた。

「舞台を降りたら、演じていた役を洋服を脱ぐように脱ぎ捨てるジェスチャーをしてから楽屋を出ることにしています。何カ月もその役を演じていると、没頭しすぎてしまい、気づかないうちに役を引きずってしまうことがあるので。以前に舞台でキャロル・キングを演じたときに友人から〝アーヤだってことを忘れて見ていた〟と言われたことがうれしかったので、サティーン役でもそうありたいと思いますが、終わったら毎回脱ごうと思っています(笑)」

 今年は平原にとってデビュー20周年でもある大切な年。2015年に自身が立ち上げた「平原綾香 Jupiter 基金」のためのチャリティコンサートはずっと継続している。

「団体をあえて決めずに、毎年いま必要としているところに寄付させていただく活動をしています。自分が歌っている意味とは何だろうと考えたときに、それを教えてくれたのは傷ついた人々だったんです。世界中で起こっている問題を解決するには、まず自分の手の届く範囲から。父も寄付活動をしていて、その姿を見ていたので、私も続けていきたいです」

画像: COURTESY OF TOHO

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『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』
1899年のパリが舞台。芸術家を志すボヘミアンや貴族、遊び人が夜な夜な集うナイトクラブ"ムーラン・ルージュ"。『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』は、その花形スターであるサティーンと、彼女と激しい恋に落ちたアメリカ人作曲家クリスチャンの物語。19世紀にオペレッタを創始したオッフェンバックからローリング・ストーンズ、レディー・ガガまで、人々に親しまれた楽曲の数々をちりばめたラグジュアリーなミュージカルに。贅を尽くした舞台美術や衣装も必見。

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